『ヒメアノ~ル』 塚本遺伝子の本気汁
今年の邦画ベスト1はこれでしょう。
テンポの上手さに心を掴まれてしまう人が多いかと思う。冒頭のムロツヨシの抑えすぎた演技(余計にコワイ)からして、ただならぬ雰囲気で掴みまくってヤバイ!こりゃ面白い!と膝を打つ冒頭。
濱田岳が素朴な顔して、素朴な疑問をムロツヨシに振るんです。「家に帰ったら何やってるの?趣味とか無いんだったら、暇な時間が多いでしょ?」と。これってさり気ない質問だけど、実は生きる上で意外に重い問いだと私は思っていたりする。『桐島〜』では学校内の見えざるヒエラルキーが描かれていたけれど、こちらでは社会人としても恋愛経験者としても“最下層”のムロツヨシの、無表情顔が凄い。そう、趣味に走るオタクは(自分も含め)、何かで心の中がいつもいっぱいなんです。だから見えざる社会のヒエラルキーなんか気にせずに居られる(時間が多い)。でもそうじゃない人は何やってるんだろう。この質問には、痛いところを突かれたように思う日本人が案外多いかもしれない。
するとムロツヨシの風貌からは全く想像の斜め上からの答えが。「今、恋愛しているんだ」。
で、ここからムロツヨシの心が冷えきる程の下手くそ恋愛術が展開し始める。これを見ているだけで、ああやめて冷笑が止まらない。アイ・キャント・ストップ!ザ・ロンリネス〜。誰か彼を止めてあげて。
さらにこの先に続く、“起承転結”の“転”の転びっぷりときたら、完全にウルトラCを決めている。
誰も止められなくなるあの感じが、凄まじく好きです(笑)。
吉田恵輔監督は塚本晋也監督の照明担当を長年やっていたという。そのキャリアについては遅らばせながら『馬車馬さんとビッグマウス』で初めて知った。私はこの作品で監督を見直すキッカケになった。『純喫茶磯辺』は割と高評価を得ていたけれど、私はケチョンケチョンだった。『さんかく』、『麦子さんと』、『銀の匙 シルバースプーン』、どれも結構好きだけれど、やはり『馬車馬さんとビッグマウス』は私には忘れられない傑作。
この作品はまるで、塚本遺伝子が急に牙を剥いたようだと思った。
わお、急に本気汁出して来たなと。
あとやっぱり誰もが思うことなんですけど、ジャニーズの森田剛に何させとんねん!っていう。
“森田君”という名前設定からして、監督のやる気ちょっと見え過ぎちゃってますよね。
もちろんそれに応える森田剛の、絶望を顔に映し出した冷えきった表情も素晴らしい。
今年の『テラフォーマーズ』の山下智久のサイコパス虫っぷりや、稲垣吾郎の『十三人の刺客』のサイコパス武士っぷりに匹敵するもの。
いや、今回の熱演によって、彼らは森田剛より下に位置することになりました(個人的に・笑)。
少し前のSMAPの謝罪会見に心底寒々しい思いのした一般人としては、
それらの胸に溜まったヘドロが、洗い流されるような清々しさを感じました(笑)←ホントか!
監督も森田剛も、ブラボーブラボー!
2016/07/17 | :ホラー・スプラッタ 日本映画
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とらねこさん☆
これは傑作だったよね~
今年はなかなかにこの手のいい作品が目白押しだと思わない?「アイアムアヒーロー」しかり。
とにかくキャスティングが最高!
話の持っていき方も最高!
森田くんという役の森田君も最高!ずっと忘れない1本です。
ノルウェーまだ〜むさんへ
私もこれ大好きでした!
超上手いよね!今後は吉田恵輔監督はチェックしてね〜!
そうそう、この作品といい、『アイアムアヒーロー』、『ディストラクション・ベイビーズ』、『日本で一番悪い奴ら』といい、割とエクストリーム・ムービーが喝采を浴びる昨今ですよね。
私はディストラクション〜はまだ見てないんですが。ノルさんもチェックされてます?