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『アイアムアヒーロー』 邦画ゾンビのイキのイイ傑作!

ogp「邦画にしては、珍しく出来の良いゾンビ映画」との呼び声の高かった今作。ほう〜それはそれは、と半身を乗り出しながらも、「でも、邦画“にしては”なんでしょ」とその“条件付き”案件ぶりに、懐疑的な思いになっていた。
ごめんなさい!やっぱり最高〜!
もはや出だしから二重丸、漫画家のアシ部屋のシーンから、すでに自分が好きになれそうな予感が十分だった。

テンポも良いし、アクションも十分面白い。“正統派”ゾンビ映画の雰囲気はバッチリ。
ただし、ロメロの『ゾンビ』ではなくて、フランク・ダラボン『ウォーキング・デッド』の影響がそこかしこに見える、“21世紀以降の”正統派ゾンビ。車の中のショットは『ミスト』を思い出させるものだったり。ダラボン色強し!

彼女が『物体X』状態になってしまうあの姿は、もはや何度も使い古されたよく見るアレだけれど、何度見ても楽しいもはや「水戸黄門の印籠」みたいなものになってしまっているし。事態の展開の速さを見せつける、出だしからのフルスロットル。
彼女の歯が抜ける瞬間の「歯が…」という一言は、「歯どころじゃねえだろ」と言いたくなるところだったけれど、その間抜けな一言がちゃんと効果的に回収されているので私は満足だ。

ゾンビを始めとしたホラーというジャンルの描く“終末感”、はっきり言えば私達は、これが見たくてゾンビ映画を見てしまう。真面目に生きて何かしらの“積み上げる物”を誇る者達も、そうでない負け犬である我々のクソみたいな人生も、全部グシャっとおじゃんになる心地よさ。中二病的といわれようとも、この終末感だけは一度なりともリアルに感じてみたい。
この映画の日本らしさ、日本ならではの“終末感”がどういうことになるかというと、「世界の終末が始まれば、ヒャッハ〜達が跋扈する」といったアゲアゲムードに一瞬で変わることが出来なくて、大人しく駄目人間で居続ける感覚こそ、不思議と“日本らしさ”を感じてしまうものだった。
たとえ未曾有の大混乱が起きようとも、「負け犬の人生は何一つ変わらない」という、大泉洋演じる主人公・鈴木英雄の地味な諦念。これが良かった。津波に地震の大混乱が訪れようとも、それでも大人しく列に並んだ日本人を思い出した。
「“英雄(えいゆう)”と書いてヒデオと読みます」という言葉が、ただの皮肉にしか聞こえない駄目男が、少しづつ変わっていく。とこう、テーマだってちゃんとあった。
アクションも面白いし、ゾンビ映画としても一級品だってことが言いたかったのです。

なんでテーマについて語っているかというと、実はこの作品について「中身が無い」とか言われがちだったからなんですよね。ホラー映画、特にゾンビ映画ともなると必ず社会諷刺を期待する人々が一定数居て、いつも私は心の内では若干面倒臭いと思っていたけれど、この作品だってちゃんとある!そう言いたかったのでした。

 

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コメント(10件)

  1. そう、邦画にしてはよくできたゾンビ映画でした(笑)
    過去の名作のいいとこ取りだっていいんです。面白ければ^^
    こういう映画を見ると、現実になればいいのにと常に思っていますよ。
    我々が抱えているいろんな悩みがすべて消えて人類みな同じ条件にリセットって楽しいだろうな~。

  2. 個人的には見てきた(ほんの少しだけですけど)日本のゾンビ映画の中でNo.2の傑作でした!
    生きの良いゾンビ映画ってまさにその通りで楽しめました。
    きゃわいい有村架純とカッチョイイ長澤ますみ。キャラ的に最高だっただけにもっと頑張ってくれたら、もっともっとポイント上がったと思います。

  3. itukaさんへ

    こんばんは〜♪コメントありがとうございました。
    つまらない日常から、スリップして映画的異世界へ変わっていく瞬間を、待ち焦がれてしまう部分てありますよね。
    あの瞬間て何度経験しても面白いなーって。
    だからって急にヒーローになれる訳でもない、ってとこにグッと来ました。

  4. imaponさんへ

    こんばんは〜♪コメントありがとうございました。
    オ!二番目でしたか、1番は何でしたでしょう?
    と思ったら、imaponさんの邦画ゾンビ一位は『レイプゾンビ』だったんですね!
    じゃあ、私も早速見てみなくちゃ。

    ああ、確かに最後の最後の活躍というと、英雄の銃ぶっ放しに頼りっきりで、女性軍の獅子奮迅の活躍、というのはあんまり見られなかったですよね。
    長澤まさみのカッコよさも、確かに見た目オンリーだったなあ。
    アクションボリューム的に言うと、敵方の陸上部ZQNがかなりイッてて良かったなあと思うのですが、反面、英雄側の活躍は物足りないかも。

  5. とらねこさん☆
    中身がない!?えーっそんな風に言われてたんだ??
    これ、面白いよね~~
    ちゃんと水戸黄門的ゾンビルールでありながら
    日本ならでは感も出し
    ゾンビ映画なのにジャパニーズホラー感でオリジナリティもあるし、
    人間の成長物語としてのヒューマンドラマもあるし!!

    ちなみに明日からリアルゾンビと戦ってきます。
    夜じゅう失禁→徘徊→飲食を2時間おきらしい…

  6. ノルウェーまだ〜むさんへ

    こんにちは〜♪コメントありがとうございました。
    そうなの。薄っぺらいとか浅いとか、テーマが無いとか言われてた。
    アクションの弾けっぷりが凄まじいものって、そう言われがちじゃない?
    アクション映画やサスペンスには言われないのだけれど、何故かゾンビ映画に関しては、そう言う人が居るんですよ。
    私から言わせれば、そんなこと言わなくていいやん、て思うんですけど、ゾンビとなるとロメロなんかが社会派でしたし、これが元祖なところあるから、そう言われがちなんだと思うんですよね。

    リアルゾンビにゾゾッ(笑)
    時々ブラックなジョークを言うところが、ノルさんもやっぱりホラー好きなんだな〜と思っちゃいます!クス(笑

  7. おもしろかったですねー!
    シッチェスで受賞と聞いて、駄作ではないとわかりましたし、ヒロインが有村・長澤とくれば、見たくなりました。(ほかはどうでもいい。笑)
    日本映画も、やれるじゃん!と安心?しましたよ。(あんまり邦画観てないから偉そうに言えないけど。)

    http://bojingles.blog3.fc2.com/blog-entry-3070.html

  8. ボーさんへ

    こんばんは〜♪コメントありがとうございました。

    シッチェスは毎年シアターNやヒュートラでやる特集にマメに通っていたのですが、あんまり当てにならないな〜なんてチェックしなくなってしまった私だったり…
    でも、こうした力のある邦画が海外でも認められるのは嬉しい限りですよね!

    >日本映画に安心
    その通りですよね!私も実はあんまりツボに入る邦画が多い方ではなかったり、二つに分かれた映画が大嫌いだったりしますが、
    この作品や『ヒメアノ~ル』には心から感激しました!

  9. テーマはちゃんとあるし、しっかり描かれいましたね。
    そもそもストーリー物でテーマがない作品なんて成立しないと思うのです。
    一見テーマが無きがごとくの作品でも、「無い」のと「無きがごとく」は違いますから。
    昔、石井克人監督が「party7」でテーマがないことがテーマと言ってましたが、これは既にテーマがあるって言ってるのと同義ですもんw

  10. ノラネコさんへ

    テーマはきちんとありましたよね。

    「テーマがない」と言われてしまう映画についてですが、時に、「起こったことを羅列しているが、一体これが何なのだろう」と思わせる時があって、
    そういう時に「大したテーマが無い」という意味で「テーマが無い」と言われてしまうのかな、と。
    映画を読む上で観客の知性も必要にはなりますが…。
    映画の物語に味わいをもたせるそうした装置は、ほんの数ショットで済むはずですね。




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