『エクス・マキナ』 古くて新しいSFと、ミニマリズムの閉塞的映像美
デジタルで映像がより鮮明になるに伴って、何処に一番美しさを感じますか。私は今iMacを使っていてこれが5Kまで映る代物であるおかげで、より鮮明にクリアに見えるようになった。細かな粒子までが見えるようになって一番気になるのが、小さな水の粒の一つ一つまでが見えたり、その素材のテクスチャー感、ヌメリや質感を感じることであったり。そういった意味では、この作品はスクリーン中にまるで“触り心地”を感じられるような映像美を、目の当たりにするイメージだった。言わば“テクスチャー感”を感じる、最新技術の映像美。
アレックス・ガーランドというと、ダニー・ボイルと一緒に仕事してきたイメージが強かった。片腕とすら思っていた時代もあったけれど、今回が監督作としては初だったのね。しかしこれまで彼が手掛けてきた作品の中で、今回作に最も近いものはというと、マーク・ロマネクとのコンビ作『わたしを離さないで』かもしれない。どこか透明度の高い、思索的なSF。
「人間とロボット(AI)とを分ける違い」というSFの古典的なテーマを、対話で証明するというミニマルなストーリー。舞台装置もワンシチュエーションで済んでしまう、私の特に好きなパターンではないですか。
この究極的なミニマリズムの中で息づくのが、先ほど言ったような映像の中に忍ばされたテクスチャー感だ。
美しく機能的でありながら、大胆な設計の近代的な建物は、見ているだけで楽しいけれど、非人間性を感じさせる“鉱物”の手触りの中に、ところどころに木や緑が見受けられる。メタリカルなマニュファクチュア感覚の中だからこそ、魅力が息づいているように思われる。“生きているもの”の温かみ。これは無論偶然ではないだろう。
画面設計がそのものズバリ、テーマ性と共振している。
これまで見たことが無いような、最新AIデザインの身体をまとったエヴァ(アリシア・ビキャンデル)は、息を呑むほど美しかった。身体の一部がスケルトン仕様になっていたり、陶器のような美しい肌質感に、精密機器を思わせる細かなメタリックシルバーの臓物感であったり。一部はスケルトン仕様になっていて、まさに彼女がこの建物の中で生まれたことを思わせる。“閉じ込められた空間”を思わせる。閉塞感、だからこその安心感、向こう側まで透けて見えるスケルトン仕様のガラス。一歩外へ出たら、バラバラに壊れてしまいそうな繊細な精密機械。繊細で脆い肉体に包まれた、壊れそうな輝きの一瞬の美…。
まるでなんとも言えないバランスが、この究極的なミニマリズムの中で完璧に呼吸しているかのよう。
ところで、気になる脇役。日本人役のソノヤ・ミズノ。彼女もとても美しかった…!
イギリス人とのハーフ、クラシックバレエ仕込みのスーパーモデルだそう(シャネル、イブ・サンローランその他)。
2016/06/20 | :SF・ファンタジー アメリカ映画
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同じじゃないですか!ワタシもキョウコ役の女優検索しちゃいましたよ(笑)
劇中、エヴァと密談するところの身長差から見て
エヴァが166センチなので可なり長身だろうなでしたがスーパーモデルですもんね^^
にしても、エヴァの造形の美しいこと!
スケルトンも斬新だったけど、機械音も未来的な音になっていて、これは手元に置いておきたい映画です。
そうだ、ワタシも『わたしを離さないで』が脳裏に浮かびました~(笑)
itukaさんへ
こちらにもどうもです♪
ミズノ・ソノヤさん、一言も発しないけれど素敵でしたね。あれは、社長の身の回りの世話兼エロ担当だったのでしょうね。
ところでアリシア・ヴィキャンデルについてですが、『リリーのすべて』の時は他の出演者、アンバー・ハード、エディ・レッドメイン、マティアス・スーナールツ、ベン・ウィショー等、美形が多すぎて主役の彼女の美しさは特に目立ってなかったんです。あと私はアンバー・ハードが容姿的に好みであるせいか、見劣りがするとさえ思ってしまいました。
アリシア・ヴィキャンデルちゃんは演技が素晴らしくて、それだけでグッと来るものがあって『リリーのすべて』で名前を覚えましたが、
ここでの彼女の美しさに相当ビックリしてしまいました!
これは、フツーな気分で観ていました。
あんまり、ピンとこないというか…。
この社長が、スター・ウォーズ新作のエースパイロットだとは思わない、変身ぶりですよね。
http://bojingles.blog3.fc2.com/blog-entry-3104.html
ボーさんへ
あら、こちらは駄目でしたか。
これは確かにハマる人とハマらない人とが居そうですね。
私は、映像の雰囲気がなんだか好きだったんですよね。
アリシア・ヴィキャンデルちゃん演じるエヴァの最新のAIの形状も気に入った、というところが大きいです。
テクスチャー感覚ね、なるほど。
舞台となる研究所とその周りの自然空間がテーマのメタファーになっていましたね。
私はこの映画結構ケイレブの気分で見てました。
アリシア・ヴィキャンデルは私的にもストライクなんで、もしもエヴァとのチューリングテストをやったら、ぶっちゃけ同じ行動をするような気がしますw
ノラネコさんへ
この作品は退屈する部分が無きにしもあらずなんですけど、自分には割とツボる部分がありました。
ケイレブ君の気持ちになるの、すごく分かりますよね。
ノラネコさんはSophiaやTayの話を引用してましたが、本当この映画が現実に起こってるんですよね。
にしてもそこまで才能ある技術者人が、大金かけてダッチワイフ作成かよ…
などと思ったりもしますが、この作品を皮切りに、こうした作品群は今後もまだまだ作られそうだなと思います。
閉鎖的空間での少人数による会話劇
と言うパターンは私も好きなので楽しめました。
何よりスケルトンのエヴァの造形が好み過ぎて
彼女が皮膚を纏うシーンでは思わず
皮膚いらんし!!って思ってしまいました(笑)
そしてキョウコ!
私も速攻で検索しましたよ(笑)
amiさんへ
こんにちは〜♪
ですよね!私もエヴァの造形が好きだったせいで気に入っちゃった、というのが大きいんです。
室内建築も見ているだけで楽しかったし。
そうそう、皮膚を纏うシーンは勿体無い気すらしちゃいましたよね、
一方で「でもこの方が安上がりだし、CG担当の人や撮影楽になりそう…」とつい考えたりもw
「ワンピースだけで女の子気分になれて嬉しい」、というのが健気だな、と(計算もあったと思いますが)。
「あ、この子も”魔法”を欲している女の子なんだな」と思ってキュンとしちゃいました。