『LOVE 【3D】』 問題作にして、センチメンタルな“愛の定義“
3D技術が出来た時に、映画監督なら誰しも思いつくようなアイディア。
いかにも飲みの席で冗談まじりに語られるようなアイディア。
…つまり、「男性の下半身♂が飛び出す!」
これを「全部本番で」やろうというところが、いかにもフランスらしいではありませんか!
本番の性行為が描かれた映画というと、必ず出てくるのが『愛のコリーダ』。
これも日本では作れず、フランス製作でした。私の一番好きな日本映画なのだから、フランスに恩義を感じざるを得ない。
そして最近だと、ラース・フォン・トリアーの『ニンフォマニアック』。これは“役者の顔”と“本番俳優/女優の性行為”を繋げたものとして、「その手があったか」と膝を打ったけれど、ご覧の通り後続作品があまり無い。
3Dついでに出しておきたい?と思ったかどうかは分かりません。
…アレです、「精液」!
ヤッタ〜!!!
飛び出す下半身♂、次に観客に向かって“梨汁ブシャー”!
まさかの観客顔射、ああこれがやりたかったことなのか!と
本国フランスでは爆笑だったらしいし、それを聞いて「さすが国民性」と、羨ましくなる私でした。
で、エロいのか?ゲージュツなんでしょ?
いやいや旦那ァ、めちゃめちゃエロいでっせ。
これまで『アレックス』『カルネ』『カノン』と、人を嫌がらせたら一級品のギャスパー・ノエ、
エロいのエロくないのって、ちゃんとAV流にエロいところが、私は大いに気に入った。
しかし、途中で気づくんです。
これ、すごく心のこもった「愛の物語」だって。
赤ちゃんの名がギャスパーで、元カレがノエ。途中エレクトラに向かって「ルシール…」と一度台詞もある。さらに主人公(カール・グルスマン)は映画監督を目指し映画学校に通う、まだ単なる馬鹿者状態の若造。(部屋の壁に『ソドムの市』と『悪魔のいけにえ』、Tシャツはファスビンダー(メタリカロゴの形←欲すぃ!))。
初めはアレっと居心地の悪い思いをした、台詞の陳腐さや主人公の青臭さも、
心のこもった「プライベートな愛のメモリー」であることに気づき出すと、俄然憎めなくなってくる。
この先、ネタバレ
彼の盛大な失恋話を、そして肉欲にまみれ来る日も来る日もエロ三昧だった思い出を、
時間軸を交差させて、センチメンタルたっぷりに描き出す。
「血と精液と涙の映画が作りたいんだ」なんて台詞と共に。
自分から壊してしまった、完璧な瞬間を思い出し膝を抱えるシーンを
失ったものの大きさと現在の自分の惨めさに打ちひしがれ、風呂場に閉じこもって一人泣くシーンを
もはや人事とは思えなくなってしまった人には、これは傑作。
にしても、せっかく飛び出す♂下半身!なのに、その肝心なシーンでモザイクがかかっているのはがっかりでござる。
だったら初めから2Dで公開して欲しかった。
「モザイクが飛び出す!」は技術的にやれなかったらしい。
眼鏡かけてポニーテール姿が可愛い、体を張りまくりのアオミ・ムヨック。
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