『ヘイトフル・エイト』 密室の曲者揃い踏み!!
エンニオ・モリコーネのオスカー、おめでとう。この作品で獲りましたね。
87歳、6度目のノミネートにして初の受賞、レオどころの騒ぎじゃない。
…というか、モリコーネがオスカーまだ獲っていなかった事を知らなかったw。
これまで、既成の“自分のお気に入り曲”をDJのようにミックスさせて使用するのがタランティーノだったのに、モリコーネにオリジナルスコアを書かせ、彼にオスカーを獲らせた!
さらにジェニファー・ジェイソン・リーを見事に起用して、今回の助演女優賞を彼女に与えてる!
タランティーノは相変わらずさすがだなー。
彼のおかげで復活した人、ブレイクした人も多いし、必ず作品に誰かしら目玉になるような魅力的なキャラクターがいる。これって、十分にタランティーノの手腕のおかげだと思うのです。
さて、今回はまたけったいな作品だ…!
正直、公開が少し不安だった。チラシの表にドーンと”密室劇”を謳っているし、タランティーノがそんなのやるの?派手なアクションは無しなわけ?なんて。
でも杞憂でした。 「一体これは何なんだ…!」と震える思いを抱えながら、小屋のドアを打ち付けた辺りから、腰がようやく落ち着いてくる。
役者が揃い、物語が始まり出してくる。
はっきり言って、これをどのような作品として位置づけたらいいのか分からないんですよ。私には。
原点回帰のシンプルな西部劇のように思えなくもない。 皆が口を揃えて言うように、『レザボア・ドッグズ』みたいだし。
表向きは、西部劇がこれまで描いてきた正義心に懐疑的な姿勢を見せながら、タランティーノらしく歴史考証に捻りを加えてくる。 「これが“法の正義”、こちらは“西部劇の正義”」なんて。
こうやってアクションをほとんど見せずに、5部構成で会話で作ってくる、それなのにどこから見てもタランティーノらしさ満載なのがほんとうに不思議。
「会話劇が退屈」何て言う人も結構多いし、それは分かるんだけれど、こういう良く分からないダラダラ感こそがタラらしさ、と愛せてしまうのがまたまた不思議!
どこかタランティーノっぽい作家性、これが癖になって見てしまう。一度目に見て当惑した人も、案外二度見たらこれ、大好きになっちゃうかもよ!?。
少なくとも、最後の最後まで誰が勝つかが分からず見れる、曲者揃いなのが楽しい!
私は何と言ってもジェニファー・ジェイソン・リーの怪演っぷりが好きだったし、マイケル・マドセンがニヤッと笑ったりするところも好き。
ティム・ロス、マイケル・マドセンを始め、サミュエル・L・ジャクソン、カート・ラッセル、それにゾーイ・ベルまで!!なんだか嬉しくなっちゃった。
ゾーイ・ベルやチャニング・テイタムのあっさりした死に方はご愛嬌!だって、『レザボア〜』でのタランティーノ自身の死に方を思い出してよ!(笑
ティム・ロスはなんだかクリストフ・ヴァルツにソックリで驚いたけど(実はここ、代替可能!?なんて)。
これまでのタランティーノ・ファミリーが集合しているところが本当に嬉しかったな。
何と言ってもこの作品は、ラストの多幸感でしょ!一体何だったんだろ、アレ…!
2016/03/04 | :サスペンス・ミステリ アメリカ映画
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コメント(14件)
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これ、私もチラシの「密室劇」という言葉に相当心配してたんですよね。
でも、流石タランティーノでした。
タランティーノ・ワールドに浸る3時間は至福・・・
ジェニファー・ジェイソン・リーの殴られっぷりが好き!
とらねこさん☆
絶賛ね~~♪
タラちゃんにしては珍しくミステリー仕立てと思ったけど、彼らしさはちゃんと出ていたよね。
自分はエンタメに徹して役者とか周りの人にオスカーを獲らせるなんて、ほんと凄いわ☆
あの長話にも無駄がないと踏んでるワタシです(笑)
おそらく映画用のセリフでなく、普段生活で何気なく話す会話っぽい感じが
逆に新鮮でして、これこそタランティーノ(笑)
大昔しブームを起こしたマカロニ・ウエスタンと合わせても
タランティーノ作品が上位ワンツー・フィニッシュかも。
ちなみに「ジャンゴ」がダントツ1位で(笑)
3位が「続・夕陽のガンマン」(←訊いてないって)^^;
imaponさんへ
おはようございます〜♪コメントありがとうございました。
“密室劇”と言われると、タラ印のアクション少なめなのかと心配してしまいますよね!
ジェニファー・ジェイソン・リー、これだけ殴られても全然へこたれないので、だんだん後半に向けて存在感を増していきますね〜!
DVDになったらまた見たいな。
多分2度目の方がもっと好きになれそうです!
ノルウェーまだ〜むさんへ
おはようございます〜♪コメントありがとうございました。
正直言うと、物語が始まり出すまでに時間がかかって、ダルいな〜と思う部分も無きにしもあらずでした。
タランティーノは賞レースにおいて、自分の作品やら監督としての自分自身が評価されていなくても、俳優たちやスタッフの成果を心から喜んでそうな気がしますよね★
itukaさんへ
こんにちは〜♪コメントありがとうございました。
タランティーノ印のダラダラした会話、どうも性に合わないという人は見なきゃいいのにね〜。
『続・夕陽のガンマン』、私も大好きです!これが一番好き。
次は『殺しが静かにやって来る』『続・荒野の用心棒』『ビリー・ザ・キッド』かな〜w。
ただし、本音を言うと一番好きなのは『マカロニ・ウェスタン 800発の銃弾』なんです!こちらは本当のマカロニ・ウェスタンとは違うんですけど(スペイン製作ですし)、負け犬・ウェスタン、つまり“西部劇の流行らない地域の人達のウェスタン”なんです!
もし見る機会がありましたら、お暇な時に是非見てみてくださいましね〜!
私もモリコーネが初受賞だったのに驚きました。
とっくに取ってるもんだと思い込んでた。
まあコレは西部劇版の「レザボア・ドッグス」であり「ジャンゴ」の続きかなあと思います。
なんとなくめちゃくちゃ熱かった「ジャンゴ」の余熱の中で思いついたんだろうなと。
ノラネコさんへ
こんにちは〜♪コメントありがとうございました。
モリコーネ、喜んでましたよね〜。レオなんて早過ぎるぐらいですよ!
あー確かに、ジャンゴの余熱という感じは否めませんよね…。
本人が「これは自分の最高傑作」なんて言ってる通り、“タランティーノ流”の行き着く到達点がこの作品、というのはある種の真実かも、と思います。
>ティム・ロスはなんだかクリストフ・ヴァルツにソックリ
大きな声では言えませんが、本編を観てその第一声を聞くまでクリストフ・ヴァルツだと思ってました^^;
>エンニオ・モリコーネのオスカー
私も初受賞と聞き、思わず「えーっ!!」と声をあげる程驚きました。
数年前にとったのは名誉賞だったのですね。
amiさんへ
こちらにもどうもです♪
本当!私も一瞬、「あれ?クリストフ・ヴァルツ出てるんだっけ?」なんて思ってしまいましたよ、いつも出演者あまり調べないものだから。
確かに前々から、ティム・ロスはクリストフ・ヴァルツに似ているとは思っていたんですが、こうして見ると本当に見分けがつかないなあとw。
モリコーネの名誉賞あったから余計、みんな驚きましたよね(笑)
名誉賞は2007年でしたから、あれれ?って。
こないだじゃん、なんてもう9年前でした…。
こんばんは でございます
タラちん作品は初期の頃のが好きなワタクシですが
3時間近くあったんですね・・・長いとはあまり感じなかったし
カート・ラッセル(J・カーペンター好きな私にはたまらない役者さん)が
出るなんてオープニング・ロールで知って、なかなか楽しめました
にしてもジェニファー・ジェイソン・リー、スゴかったです
キャリーのシシー・スペイセクばりのメイクアップ
日本の映画、ドラマ界にこういう点を見習って欲しいもんです。
役や物語の為なら、汚すリスクもいとわないという覚悟が、ね
彼女を見て、初めて見たのは「ヒッチャー」だから、もう
30年ぐらい経つよなぁ、なんて思ってました
サイ5150さんへ
こんにちは〜♪コメントありがとうございました。
ですよね〜!私も、初期や『デス・プルーフ』なんかのキレが良い作品の方が好きです!
これは面白かったんですが、私にはやはり3時間は長いな〜。
カート・ラッセルは嬉しくてたまりませんよね〜!
あと私は、マイケル・マドセンやティム・ロスがやっぱり嬉しいのね。
ティム・ロスはクリストフ・ヴァルツにご覧の通り良く似てますよね、昨今のタラ作品でクリストフ・ヴァルツが出てくる度に、何となく寂しい気持ちがしていたんです。正直、それが何故なのか分からなかったんですが、
ここに来てようやくその意味が分かりましたよ!(笑
>キャリーのシシー・スペイセクばり
こういう一文が出てくるところがサイさんの好きなところなんですよ〜♪
ジェニファー・ジェイソン・リーがすごい良かったですよね!
私は、『ヒッチャー』より『初体験リッチモンドハイ』のイメージで、つまり美人さんという印象がいつまでもあったんです。
もちろん、『ルームメイト』なんかも見ていたけれど、こんなに凄い人だったんだなあと、改めて驚きました。
ジェニファー・ジェイソンさん、凶悪犯のおばちゃんなのになんかかわいかったですね。自分はバーホーベンの中世アクション『グレートウォリアーズ』が印象に残ってます。そちらでもいろいろ痛々しい目にあっていたなあ
ラストがハッピーだったのは自称保安官のヘタレ君が男として成長したから、という理由もあるかも。成長したとたんに死んじゃうというのも皮肉で笑えますな…
SGA屋伍一さんへ
こんにちは〜♪コメントありがとうございました。
>ジェニファー・ジェイソンさん
あっ、これはきちんと最後まで「ジェニファー・ジェイソン・リー」と言って下さい
「ポール・トーマス・アンダーソン」をポール・トーマスとは言わないでしょ?
J・J・リーの怪演というと、やっぱり『ヒッチャー』と『ルームメイト』かな、特に後者はイメージ変わるので是非どうぞ。
ラストの多幸感は、タラ流に言うと「西部劇の正義感」が施行されたからで、法の正義ではないところですね、其れ即ち「映画の正義」。ここで多幸感を感じるのは現実ではなく、映画だからですよね。
言い換えれば、「西部劇に対するタラ流のポストモダニズムが、完成した瞬間」と言えるのかもしれません。