『オデッセイ』 ユーモアとポジティブさと理系男子
「宇宙で一人取り残される話」と聞いて、思い出す映画は何?
人によっては『ゼロ・グラビティ』でしょうし、中にはダンカン・ジョーンズの『月に囚われた男』も同じ話だ、という人も居るでしょう。いやいや、タルコフスキーの『ソラリス』だ、『WALL・E / ウォーリー』だ、トム・クルーズが孤独に戦う『オブリビオン』を思い浮かべる人も居るかも。もしくは、「この作品と比べるべきは『インターステラー』だ」、という人も居るかもしれない。
いずれにせよディストピア映画は「SFというジャンルの魅力をさらに推し進め、新たに再定義するような物語群」であることは間違いない。つまり映画作家達が、ここぞとばかり腕によりをかけて説くのが、この“ミニマルSF”であるディストピア映画という分野なのかもしれない。
リドリー・スコットはそもそもSFにはずっと携わってきた人であるのだから、彼がSFを作ることに何も不思議は無い。この“ミニマルさ”にはやはり新鮮な魅力を感じてしまう。この広い“宇宙”に対しての、たった1人の“個”。人間の孤独さやその人生を描くのにまさしくぴったりなのがこのテーマなのやも。
私には、クリストファー・ノーランの『インターステラー』に対するこの作品、という見解が否めない。何故なら、この『オデッセイ』の明快さ、理系男子のとことん合理的なポジティブネスに比較すると、かの作品がとことんまで文系的な(面倒臭い)ゴタクに聞こえるからだ。しかも、『インターステラー』の中で取り残されるのはマット・デイモンだ。符号もピタリと一致する。
「問題を解決するには、目の前にある問題を一つづつ片付けていくしか無い」というマーク・ワトニー(マット・デイモン)は、気持ちがいいほど陽気だ。一人で居ても落ち込んでいる暇など無い。すぐにまた別の問題が出てくる。そしたらその問題も片付ける。そうやって一つ一つ片付けていく。そこには合理性とポジティブな精神、そこにプラスすることのユーモアのセンス。ユーモアは自分を冷静に見るための、1つの装置でもあった。
理系男子バンザイ!と言わずには居られない。
2016/02/05 | :SF・ファンタジー アメリカ映画
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似てる作品としてワタシが思ったのが『ゼログラ』でした。
ただ、あちらの作品と比べると恐怖の度合いが全然違うんですね。
こちらは火星であっても地に足が付いているんで安心感があるんですね。
食料だって31日×他のメンバー分備えてるし
じっくり考える猶予があるってことが断然有利でした(笑)
こういうサバイバル映画ってほんと大好きです。
itukaさんへ
こんばんは〜♪コメントありがとうございました。
ゼログラ、思い出しましたよね〜!私も、アチラも大好きでした。
ゼログラの方が危機感はあるし、孤独感がより増して感じられる作品でしたよね。
仰るとおり、それに比べればこちらは危機感がまるで感じられないのだけれど、私はこっちはこっちで気に入っちゃいました。
テーマや方法論がまるで違うところがまたカッコいいなって^^
”マット・デイモン置き去りシリーズ”で、いろんな監督が手を変え品を変え、やってくれたら楽しいな〜!
>『インターステラー』の中で取り残されるのはマット・デイモン
ああ~そうでした!
あちらはマン博士がKIPPを見捨てた時点で
私の中で最低男の烙印が押されてしまったのですが(笑)
こちらはとことんポジティブなイイ男でしたね。
ちなみに私は『キャスト・アウェイ』を思い浮かべました。
(って宇宙じゃないし^^;)
amiさんへ
こんばんは〜♪コメントありがとうございました。
そうそう、マン博士の汚名返上映画でもありますもんね(笑)
私はこちらはもう”ノーランに対する中指映画”としか思えなくて!
ね、amiさんもそう思いません?
「ノーラン面倒くせえゴタク並べてるんじゃねーよ!」って声が聞こえてくるような映画じゃありませんでした?
『キャスト・アウェイ』もあの時代の”孤島漂着映画”として、斬新なものに思えましたよね!
構造的にはほとんどディストピア映画と同じですもんね。
キャスト・アウェイは、あれを見た後歯医者に駆け込んだ人が多数居ると思いますよ〜
歯、大事!
とらねこさん、こんばんは!
>クリストファー・ノーランの『インターステラー』に対するこの作品、という見解が否めない
う~ん、すごい、鋭い! おっしゃる通り。
私は「キャストがえらい被ってんな~」くらいにしか思わなかったけど、ほんまその通りやね。
理系男子、いいね~。
文系女子だけど、ユーモアは忘れないようにします!
真紅さんへ
こんばんは〜♪コメントありがとうございました。
おっ!真紅さんもアンチテーゼ的なものを感じます?
ですよねー、きっとわざとではないよね。
サム・メンデスが、『レボリューショナリー・ロード』でレオナルド・ディカプリオとケイト・ウィンスレットを起用して『タイタニック』を思い起こさせたように、
この作品もまたマット・デイモンとジェシカ・チャステインが起用されたことで、
ある種の効果が生まれたんだと思うの。
まっと・でいもんが、個人的にどうでもいいせいか、星4つはあげなかったんですが(そういう理由かよ!)、前向きさは快適な映画でした。希望は捨てちゃいけないですね。
「インターステラー」は、わけわかんないところがありますからねー。(ワタシ文系ですけど。)
http://bojingles.blog3.fc2.com/blog-entry-3035.html
とらねこさん☆
ようやっと一足早い「サクラが咲いて」私の映画鑑賞も再開できそうです。
また試写応募出しはじめたよ~
とらねこさんのレビューを見て、この映画楽しみにしていたの。
ほんと、理系男子バンザイ!だったね☆
期待以上に気持ちの良い映画だったわ~~
ボーさんへ
こんにちは〜♪コメントありがとうございました。
ふむ、ボーさんはそんな理由だったんですね。
作品の評価は個人的なものとは思うのですが、
俳優次第で作品の評価が変わってしまう気持ちが、正直私には分からなかったり〜
インターステラーは、理屈をこねつつ実は屁理屈、突っ込みどころが多いですよね。
上の人も書いてますけどわたしも『キャスト・アウェイ』を思い出したなあ。宇宙じゃないけどw
なんだかんだ言ってワトニーはそれなりに通信が可能だったからマン博士ほど追い込まれなかったというのはあるかもね…
あと唯一残された食べ物がジャガイモだったというのもラッキーでしたね。ジャガイモって比較的飽きが来ないし。というかポテチやポテトフライには依存症をひきおこす力がある…
ノルウェーまだ〜むさんへ
こんにちは〜♪コメントありがとうございました。
お!暗号トークですね?「サクラサク」(笑
良かったー!おめでとうございました。
じゃあ、ひとまずお母さんホッと出来ましたよね。
お疲れ様でしたー。
心理学で読んだことあるのですが、左脳は論理的思考、合理的、ロジカル、計算能力、言語能力等に長けている。
右脳は直感的閃き、映像記憶能力、音楽・芸術等なのですって。
さらに面白かったのが、左脳に長けている理系の人がポジティブなんですって。
旦那の友人に理系が多いのですが、人の「本音と建前」の区別がつかない、なんて言ってました。
人が正直に喋ることが前提で、つい「額面通り」受け取ってしまうのですって。
SGA屋伍一さんへ
こんにちは〜♪コメントありがとうございました。
マン博士が実際にどうやって生き延びたのかは、よく分からない描写ではなかった?
記号的に「マン博士は生き延びた」、みたいな。
ジャガイモは生命力が強くて、グイグイ芽が出てくるんですよね。
土に入れなくてもそのままの姿で、料理に使うのに少しほったらかしにしておくとすぐに芽が出てきちゃうぐらいで。
マット・デイモンもジャガイモ顔だし、似合う似合う!
でもケチャップをかけちゃう辺りが味の分からないアメリカ人らしいなって感じ。
塩やバターだけの方が美味しいのにー