『神様なんかくそくらえ』 ホームレスの女の子の痛すぎる日常
2014年の東京国際映画祭でグランプリになった作品(監督賞とのダブル受賞)。
ホームレスの19歳の女の子が主人公だが、なんと原作は彼女自身(アリエル・ホームズ)が書いたもの。
後から知ってとても驚いてしまった。
(“アリエル・ホームズ”という名は、“あり得る・ホームレス”と変換して一発で覚えてしまった…。)
リアルさもドキュメンタリーに肉薄するかのようで、ギリギリと痛い。
可愛くも見えるような個性的な顔立ちの女の子で、不思議な存在感とやり場のない表情が印象的だ。
作品中の8割がた登場人物がラリっているような物語。これを年末年始に見ようと言うんだから、何とも恐ろしいハナシだ。
冒頭、男のために死ぬだの生きるだのというやり取りが、いきなりキツイ。
「お前、俺のために死ぬ死ぬって、一度も死んだことないじゃねーかよ!」という、ツッコミたくなるような台詞を投げる馬鹿男イリヤ(ケイレブ・ランドリー・ジョーンズ)。
「死んでみろよ、オラ!」
追いかけても追いかけても自分に冷たい最低な奴。何故この男が好きなのだろう…と訝しむような気持ちで居ると、徐ろに手首を切って見せる女。
「救急車〜!」と泣き叫ぶ男。
うわあやだなあ、こういう依存関係…。
思わず眉根が曇る。これはなかなかキツイ映画体験になりそうだ、と覚悟を決める。
登場人物の誰一人として共感出来ない。毎日ドラッグを決めて盗みを働いたり、ホームレスの日常を延々と見せられる。
「ちゃんと働けよ!」と言われて、朝から晩までNYの街の片隅に小銭の恵みを求めて座り続ける。ゾッとする。
こんな“自由”は、一体何と引き換えに手に入れたものなのだろう。
ただひたすらに、音楽がキモチイイ。冨田勲の音楽が繰り返し流される。
彼女は酷い思いをさせられても、一緒に居なくても、ずっとイリヤの事を思っていた。少女ならではの苛烈な一途さで。
それだけが彼女にとって誇れるただ1つの真実、それ以外は本当に何も持っていない女の子だった。
絶望も、無理やり見出す希望もない。
ただそのたった1つの事実を、胸が張り裂けそうになるまで大声で叫ぶような、そんな作品だった。
アリエル・ホームズのサインと思われる「ILYA FOREVER」の文字。
…と、何故か「もののあわれ」「とてもありがとう 日本人」の文字。
こちらは、監督の二人組 ジョシュア&ベニー・サフディ のもの?
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