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『ストレイト・アウタ・コンプトン』 怒りをライムで叩きつけろ

soc_posこれは痺れる…!
『8mile』がHIPHOP好き以外の人にも届いたように、この作品もその良作ぶりが万人に伝わるといいな。素晴らしいマスターピース。

音楽映画としてよくある、ゲットーからの脱出、ドン底からのし上がった成功の美酒。とそれに続く挫折、メンバー同士の確執とその醜い争い。こうした要素は当然ある。
それに加え、青春映画としてのみずみずしさや、黒人差別がまだまだ残る当時の社会を色濃く反映した、ドス黒い怒りややるせなさも感じる。その印象は複雑かつ鮮烈だ。焚き付けられた怒りを燻らせながらも、音楽に昇華していく姿は本当に胸がすく。
アイスキューブのライムの凄さをまざまざと見せつけられながら、熱い思いが煮えたぎるのを感じた。アイスキューブが本当最高だった!これだけで私は満点を付けたくなっちゃったな。

何より感銘を受けたのは、メンバーの確執のその繊細な描写。
別の立場の者からすると誰かが自分にとって不利益をもたらす者であり、いつしかその人とは敵対していく。それは当然な流れに思える。しかし当人から見れば、正しい行動であり選択を取った結果だ。それぞれの立場からしてみれば、皆自分の利益を考え行動するのは当然のことだから。
角度を変えて見れば、それぞれがそれぞれの正義を有していて、それらが交わった時だけが上手く運んでいるように思える。これらがその複雑怪奇な争いの正体であると。
しかも凄いことに、こうした描写全てがそれぞれの人物に対して、愛があるやり方であり、正しいやり方だったことだ。ちゃんとリスペクトを感じるんです。素晴らしいよね。群像劇タッチになっていて、誰が主人公とも言い切れない、空前絶後のバランスにも唸る。

私は実は当時、ギャングスタ・ラップはあまり好きではなかったのね。いつも仲間内で喧嘩していて、とうとう殺し合いに発展したし。まあそれはブラックメタルも同じだけど。
ギャングスタよりPublic Enemy、Cypress Hillが当時好きでしたね。…とか言いつつ、リアルタイムでNWAも聞いたし、アイス・キューブの『ボーイズン・ザ・フッド』は大好きだった!映画も見たし。2パックもスヌープも出てきて嬉しくなっちゃったな。なんだかんだ言って一応聞いてはいましたね、世代なもので…。スヌープはあのデタラメっぽさが格好いいんだよね。本物の悪さが漂っていてクール。

アイス・キューブはソックリで驚いたら、なんと息子だった!まああれだけ似てれば血縁関係だろうとは思った。ラップもちゃんと上手いしいい声してたし。2パックとスヌープはチョイ役だったけれど、彼らの話で続編が出来たりして!?…と思っていたら案の定、2が出来るらしいね。

そうそう、バイクの前輪で立つ“ウィリー”のシーンは、『クリード チャンプを継ぐ男』に次いでこの作品でも見れて、嬉しかったな。

この作品が気に入った人には、『皆殺しのバラッド 麻薬戦争の光と闇』もお勧め。ラップ(ライム)に社会を反映させ、それを歌って一世代に届かせる映画という意味でも同じ。でも『ストレイト・アウタ・コンプトン』よりもっともっとエグいメキシコの裏社会を覗き見ることが出来る。こちらも素晴らしかったよ。

 

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