ライアン・クーグラー 『クリード チャンプを継ぐ男』ロッキー新章の始まり
リブート作品の価値がよく分からない。だって、オリジナルをこそ何度も楽しめばいいわけじゃないですか。シリーズ物で世界観がブレたりするのもさほど好きではない私は、3部作が限界だったりする。だから三部作にまとめることなく4まで出来上がってしまうと、その4は私にとってはさして価値が無いように感じてしまう。それを今回、『マッドマックス FR』がぶち破った訳ですが。
だから本作のように、オリジナルの価値を損ねることなく新たなる章を紡ぎ出すことには、諸手を挙げて大賛成したいのです!驚くべきことに、スタローンが描いた作品世界そのままに、新章の主人公が立ち上がる。
とある友人は「これはロッキー新章ではなくて、スピンオフ」と言ってました。うーむ、根強いロッキーファンにしてみたら、そうなのかもしれません。
ライアン・クーグラーは、『フロートベール駅で』というインディペンデント系の作品を作った監督だったが、ああした作家性を持つ人がハリウッド大作の新章を担うなど、正直驚いてしまった。
これが大正解!ライアン・クーグラーは作品への愛をそのままにスタローンに負わせ、その誇りも本作も彼に捧げるかのように感じる。しかしあくまでも目線はクリード。そんな眩いバトンタッチが本作なのだ。さらに、入念に描かれた演出によってロッキーシリーズへの愛が感じられるんですね。
クリードの息子が、日陰の存在であった愛人の息子であり、父親を一度も見たことがないという設定も面白い。ロッキー・バルボアが1で負け犬からの後の無い出発だったように、アドニス・ジョンソン(マイケル・B・ジョーダン)を追い立てていく。アポロ・クリードの息子であることを証明として見せなければならないのだった。
個人的には、ロッキー世界を置いておいて、アフリカ系アメリカ人を主人公にした物語であるところもツボだった。監督もブラック系であり、ブラックを主人公にした物語で、恋人もブラック。そして大事なのが、音楽もHiphop系が多いブラックスプロイテーション・ムービーになっているところが気に入った。一番好きだったのは、ロッキーと共に練習を始めた時に、シカゴブルースが流れてるんですよね。ところがスパークリングがボボンボボンと連続パンチをする辺りから、同じシカゴブルースをサンプリングしたヒップホップに変わっていくのです。基本のリズムはシカゴブルースだけれど、明らかにヒップホップ。しかもこれ映像と音がピッタリ!そこがすごく痺れた。
ちなみに、上記は以下の曲。
Nas Feat Olu Dara – Bridgin The Gap (Live Hip Hop Honors 2004)
これ、NASが自分の父親を冒頭に登場させてるんですね。まさにこの作品にピッタリの曲。
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コメント(6件)
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「フルートベール駅で」とはまるで違うタイプの作品なのに
どちらも自分の物にしているライアン・クーグラー監督。
これが長編2作目!おまけにまだ20代!
才能とチャンスの両方に恵まれた、これからが楽しみな監督ですね。
amiさんへ
こんにちは〜♪コメントありがとうございました。
本当、片やインディペンデント、片や王道の人気娯楽シリーズのスピンオフですもんね。
でも、“ブラック・センタード”なところに気概を感じました。
本当、まだまだ20代ですもん!驚きますよね。
この後はアレだな。
アポロの遠征地ごとに現地妻がいる事が発覚して、クリードは十人の兄弟と世界王座を奪い合うんだな。ロシアの現地息子(あ、ロシア行かんかったけ?)のトレーナーにはドラコが付いて因縁再発!・・・プロレスだ、それじゃ
ふじき78さんへ
こんばんは〜♪コメントありがとうございました。
ゲゲッw
そしたらその続編のタイトルは、『クリードvsクリード どいつがチャンプを継ぐ男!?』とか言うものになりそうですね…。
とらねこさん☆
音楽が本当にぴったりしっくりきて良かったよね~
主役のマイケル・B・ジョーダンもしなやかな筋肉がとーっても素敵♪
ロッキーの愛が満載だったね☆
ノルウェーまだ〜むさんへ
コメントありがとうございました!
音楽、安易にロッキーのテーマを掛けたりしないところが良かったですよね。
全体的に抑制が効いていて、逆に良い効果を生んでいました。
スタローン素晴らしかったです。
新シリーズが大ヒットした途端に、「奴隷商人」呼ばわりをする某御大とは大違い!