イジー・トルンカ『真夏の夜の夢』 陶酔!夏の夢まぼろし
イジー・トルンカの長編「真夏の夜の夢」 (1959年/73分)
今回初めてトルンカの『真夏の夜の夢』を見たのだけれど、ここまで美しい人形アニメがあるなんて、と驚いてしまいました。
さすが、トルンカの最高傑作と謳われている作品なだけある…!
私はシェイクスピアの戯曲はオリジナルが好きなので、正直シェイクスピア原作の映画や舞台劇は、それだけで避けてしまう傾向にあります。
おかげで今頃知ってしまったのだけれど、これはまさしく“人形アニメ最高の出来”を謳う傑作。
あまりの美しさに、目と心を奪われました。至福〜!
シェイクスピアの戯曲は、お喋りで喧しいコメディ。人間の世界と妖精たちの世界が、一時交錯するダイナミックさが楽しい。
トルンカアニメでは、まさしく「妖精たちの世界を垣間見た」と思えるような夢まぼろし。
時間がまるで止まったかのよう。
特に妖精の女王、タイターニアの登場の後ろ姿は、まるで奇跡!と息を呑みます。
妖精の手や足も、ポテッとした肉感的な作りになっているのも特徴でしたね。まるでディズニーの描いた曲線のような、ふくよかで魅惑的なものなのです。
腕や足も、すべての関節で少しづつ動かしているのでしょう。それにしても、あそこまで緩やかで“人間的な”柔らかさを持つカーブを、再現できるのか…。
特に走ったり動いたりするシーン、ふわっとした動きこそ、全ての神経を尖らせて作っているのかもしれません。
シェイクスピアの台詞を大幅に削り、独自のナレーションが付いているんですね。
特にパックのミステイクの部分では、それと分かるように工夫がされていました。
逆に悲劇の女性ヘレナの悲しみや、ハーミアとライサンダーの決闘の下り、パックが彼らを誘導する辺りは、初めて見る人にはもしかしたらちょっとよくわからないかも…まっいいか。
前日に見たのと同様、お客は若い女性ばかり。
皆出た後口々に「良かったね!」と言い合っているのも、とてもうれしくなっちゃったな。
「人は夢を見て、人生を輝かせる」
最後に出てくるこの台詞の説得力ときたら…!素晴らしいものがありました。
関連記事
-
-
『レッドタートル ある島の物語』 戻ってこないリアリティライン
心の繊細な部分にそっと触れるような、みずみずしさ。 この作品について語...
記事を読む
-
-
『君の名は。』 スレ違いと絆の深さとピュアピュア度合いについて。
今夏の目玉映画として期待されていた訳でもないだろうに、残暑の中、なんと...
記事を読む
-
-
『ファインディング・ドリー』 冒険も人生、帰ってくるも人生
『ファインディング・ニモ』は当時大好きな作品だったけれど、最近はピクサ...
記事を読む
-
-
『パディントン』 心優しき子ぐまの冒険
大人も童心に戻って楽しめるファミリームービーで大満足。めちゃめちゃ笑っ...
記事を読む
前の記事: 『ふしぎな庭』 ポヤル&シュチェパーネク
次の記事: ボネロの美学に震える 『サンローラン』
コメント