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『ヴァバンク』ポーランドの国民的娯楽作

12060118590844970_f0_0今年のポーランド映画祭でかかった81年の作品ですが、ポーランドでは誰もが知る有名な作品とのこと。見たかった他の作品が見れなかったためこちらを選んだのだけれど、これがなんと最高の一本だった!
『スティング』と比較される作品だろうけど、私はこちらの方が痺れちゃったな。
騙しのテクニックも面白くて詳細に渡っていて、銀行強盗のシーンもスリリング。ハードボイルドなタッチの映像処理が、ビシビシ決まってるのがカッコええわ。

全てを説明しすぎず、明かすところと明かさないところがあるので、娯楽作と言っても緊張感が持続するんです。冒頭辺りの車の中での会話が格好良くてね。刑務所から出たばかりの男が、銀行強盗の若者たちに悪そうな仕事を誘われる。だけど断るんです、「俺はミュージシャンで、重婚罪で捕まっただけだ」なんつって。それで「なるほど、あんたの公演は素晴らしいね。何年にどこどこ銀行。何年にどこどこ銀行。…“共演”したくなったら教えてくれよ」なんて言うんです。本当は足を洗いたいんですね。主人公クイント(ヤン・マフルスキ)は寡黙でコワモテなオジサンなんだけど、心底悪人という訳じゃないんです。だけど長年の恨みが積もりに積もって、どうしても銀行強盗をせざるを得なくなる。こういう理由づけが丁寧に描かれているのね。だから観客は彼を好きで居られる。
クラシックカー(ちっこくて可愛い)が走りだす瞬間に瀟洒なジャズがかかるんだけど、このおかげで「この作品は娯楽作なんだな」と安心して、その途端に映画が走り出すんです。

台詞より役者の眼力で語るところも好きだな。主人公も協力する男たちも、最大のライバルもその殺し屋も、全部コワモテで目ヂカラが凄いの。役者が顔で語る映画
銀行強盗の際にみんながガスマスクを被ってるシーンはワクワクしてしまう。殺し屋をレース越しに仕留める瞬間や、岡田奈々似の女優さん(Elzbieta Zajacówna)が誘惑するシーンも良いし。あとやっぱり耳を引っ張るあのショットの爽快感!

監督はユリウシュ・マフルスキ。主人公を演じたヤン・マフルスキの息子さん。26歳でこの作品のメガホンを撮ったのね。
ちなみにクイントの奥さん役の女優さん、エヴァ・マフルスカさんは監督の奥さんなんだってサ。

 

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