『エベレスト3D』 恐怖の山岳映画
いやあ、怖かった。
「怖い」という言葉が似合うのは、絶体絶命の恐怖感を映画全体で描いているところ。
日本に居ながらにして、エベレストをまるで登ったような気になれる映画だった。
そして、見終わって「エベレストに登りたい」という気持ちにまるでなれないのは、“山岳ディザスター映画”とでも名付けたくなるような作品だったから。
いやいや、秀逸でした。
これ、『ピラニア3D』のようにタイトルに3Dなんて付けられているけれど、その自信も分かるほど「3Dで見てこそ」、というショットがいくつかあるんですね。
この作品も、今年見るべき”映画館でこそ、体験出来る一本“。
「地球上にある7つの大陸中、6つの大陸の一番高い峰に自分は登った。
だから、7つ目も制覇したくなるのは当然だ」
と、日本人エベレスト登頂挑戦者(女性)が答えます。
これに答えて曰く、「そんなどうでもいいことじゃない。エベレストに登る本当の理由は何だ」
この掛け合いの台詞は秀逸でしたね。
おかげで、彼らが山に登る“本当の理由”を探しながら、観客も一緒に登る羽目になる。
彼らにとって一体、その魔力の正体は何だろうと。
この先、決定的なネタバレを喋ります(ので、必ず見てからどうぞ!)
事実を描いているせいもあるけれど、この作品の一番驚くべき展開は何と言っても
”主人公が死んでしまう”点!
これまで大抵の娯楽作品にある、”主人公不死身の法則”、これはよっぽどの事がない限り裏切られない訳で、
だからこそこれを裏切った『サイコ』のような作品が偉大になるのですが、
この作品では”事実である”ということを理由に、サラリとこれを裏切っちゃいます。
それも、観客は希望を持ちながら見ていて、最後の展開でこうなる訳だから、この裏切りはショッキングw。
まあでも、何度もフラグは立ってるんですよね。
優しい主人公に、「甘いよ、お前は!」と言ってやりたい気持ちになる。
面倒見のいい、正義感の強い人ではあるのだけれど…。
これはもう、「あなたが選んでしまった職業が悪かった」と言うしかなくなる。
だって、人の死を目の前にしてむざむざと「見捨てろ」なんて、出来ないのが人の情ですから。
だから、「お前は甘い、人を見捨てろ」ではないんですよ。
「お前の選んだ職業が悪かった!」ということになる…。ま、それを言ったらオシマイですが。
それから、日本人登頂者が死んでしまいますが、彼女が倒れていた地点はキャンプから300mしか離れていなかったらしい。
同じ地点に倒れていたベック(ジョシュ・ブローリン)は奇跡的に起き上がって、歩いてキャンプまで行くのですが
凍傷で鼻が取れてしまった姿がショッキング…。
うーむ、あの日本人はそんなに近い場所で死んでしまったのですね。
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一ヶ月前の鑑賞なのに、よくセリフを覚えてましたね。
もしかしたらメモ片手に鑑賞してます?(笑)
ワタシなんか登山と言えば歩け歩け運動散歩道てな感覚ですから
ピッケルやロープ使った登頂登山なんて絶対無理です(爆)
そういえば以前とらねこさん山に登ってませんでしたか?(笑)
登山経験の無い私なんかが言うことではないですが、
何故登るのか?と聞かれて
「そこに山があるから~!」と皆冗談めかして答えてましたが、
やはりこれ以上の答えはないのでしょうね。
山の魔力に魅せられてしまったら、もう逃れられない、
と言う事なのでしょうか。
ただダグの「あれほど美しいものが目の前にあるのに、登らないなんて罪だろ?」はちょっとかっこよすぎ(笑)
itukaさんへ
おはようございます〜♪コメントありがとうございました。
メモはしてませんよぉ。終わった後、メモしておくべきことはいっぱいあるはずなんですが、あまりそれもやらないなあ。
一応、Googleスプレッドシートに鑑賞記録をつけていて、そこにメモする時もありますが…
私のメモはこんなんです。
(例『白バラの祈り』 →死刑映画、ギロチン
『スガラムルディの魔女』 →魔女裁判の逆、耳切りシーン有り、人間の部品を食べる晩餐会
『鍵』 →電車の連結部分でセックスを表現
登山!ああ、夏に八方尾根で登山しましたが、その時結構キツかったですねえ。
間違えてキツイコース行っちゃって…。
amiさんへ
こちらにもありがとうございます♪
>「そこに山があるから~!」
そうそう、「登山者が皆言うジョーク」みたいに冗談めかしてましたけど、にしても、「エベレストの登山」となると命をかけるほどの登山になるのですよね。
当時ですら、毎回死人が出ていたんですもの。
やはりそれほどの覚悟というとね、何だろうと思いましたよ。
ダグの一言はカッコ良すぎましたね(笑)
いやー、私はもういいや。エベレストは。