『裁かれるは善人のみ』 ロシア発の必見!もう一本
『草原の実験』に続き、ロシアの重みをたっぷり感じることの出来る、今年のもう一本。
ズビャギンツェフってなかなか言いづらいけれど、呪文のように唱えていたらロシアっぽさを感じるのでいいかもしれない。「ズドゥラーフトビーチェ・ズブロッカ・ズビャギンツェフ」って早口言葉を考えました。どう?言えます?ズブズブ。
テーマは重く、タイトルが示すように決して救いは無い…。でも、見て良かった。この世界を堪能した。
現代ロシアの不条理さを、身を振り絞って訴えかけるような重厚さ。
まるで自分も、ロシアの片田舎にドッシリと生きているかのように感じられた。
ヨブの話が引用されます。「人生の不条理さに疑問ばかり呈していたヨブは、後に全てを受け入れることを選んだ。そして彼は幸せの境地を迎え、140歳まで生きた。」
本当の悪は暴かれることはなく、主人公は全てを失ってしまう。
彼が果たしてヨブのような境地に至ることが出来るのか?それは映画内では描かれていない。
恐竜の骨のような残骸が象徴される。レビヤタン、もしくはリヴァイアサンの骨を思い出させる。
寂寞を感じさせる荒涼とした景色。まるで、絶望の果てのような。
ともかくまあ、ロシア人はよくウォッカを飲むこと飲むこと…。登場人物達が良く酒を飲むけれど、出てくるシーン全てウォッカと見て間違いが無さそう。
ロシアに憧れて、自分の前世はロシア人だと信じていた私は、大学時代ひたすらウォッカばかり飲みました。でも酒は弱いので、大概一杯しか飲めませんでした。大学生には経済的で良かった。一杯で酔えちゃうんだから。
さっきズブロッカって言いましたけど、ズビャギンツェフの発音から思い出しただけで、映画内ではズブロッカは飲んでませんでしたよ。銘柄は出ていなかったけれど、うん、あれは違うな。
最近はワインかビールばっかりでしたけど、またウォッカ熱が上がりそう。
ちなみに、公式Facebookによると、このシーンでは本当にウォッカを全員が飲んでいたのだとか(笑)
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重い映画でしたね~
原案はアメリカですって?
でもロシアの風景と合っていて・・・・・。
先月ロシアに」行ってきたので、この雰囲気分かる気がします。10月なのにあの寒さ!ウォッカでも飲まなきゃやってられない・・・・正直者がバカをみそうな重苦しさ!
ロシア聖教の威厳・・・・
モスクワには長く滞在したくない感じでした~
cinema_61さんへ
こんにちは〜♪コメントありがとうございました。
重いです。でもガツンと来る物語でしたね。
西田美和監督は、ゆれるの撮影前にこの監督の『父、帰る』を見て衝撃を受け、『ゆれる』は撮らなくてもいいかも、なんて思ってしまったんですって。
私はまだだから、見てみなくちゃ。
アメリカの実際に起きた事件を元にしたらしいですね。
なんでも、無実の男が罪を着せられ土地を奪われてしまった物語に着想を得たとか。「ミヒャエル・コールハースの運命」というらしいですね。
その他『ヨブ記』、トマス・ホッブスの『リヴァイアサン』等も混じっているようです。
『リヴァイアサン』は自分、今『白鯨』を読んでいるので気になるなあ。
モスクワは長居はしたくない感じでしたか、ふむ。私はトランジットで数時間潰しただけだな〜
そうそう、以前世界の寿命を調べたことがあったのですが、ロシア人の男性が世界で一番寿命が短いのですって。なんと、平均50代で死に至る人が多いんですよ。
ロシア人の友人にその理由は何故だと思うかを尋ねてみたら、
「ロシア人の男は皆酒に強く深酒をする人が多い上に、血気盛んで喧嘩っ早いからしょっちゅう飲んだ上で喧嘩が多いんだ」
なんて言ってました。
確かに「草原の実験」と本作は傑作でありました。
打ちのめされるんだけど、もう最後はブラックコメディかと。
ここまでストレートにプーチンロシアの虚飾性を描いちゃって、ポロニウムで暗殺されなきゃいいけど。
とりあえずロシア人の消化器官は異常。
ノラネコさんへ
こちらにもありがとうございました。
ロシア映画って何故こう面白いものが多いんでしょうね!
先日もフィルメックスでカザフスタン映画を見ましたよ。
ロシア人によるロシア批判は、やはり伝統なのでしょうね。