『1001グラム ハカリしれない愛のこと』 ほのぼのノルウェー理系女子
『酔いどれ詩人になる前に』、『ホルテンさんのはじめての冒険』のベント・ハーメル監督作品。
ほのぼのとした不思議な空気感を醸し出し、ペイル・ブルーの色調やシンメトリーが心地よく思える映像が、どこか心地いい。
キログラム原器を持ってパリとノルウェーを往復する理系女子の物語。
入院中だった父親の最後の言葉が、「自分の人生を図りにかけてみるのにいい時期では」というものだった。マリエ(アーネ・ダール・トルプ)は若さはすでに過ぎ去っている。このままの人生が流れていくのか。そんなタイミングで、触れることすら厳禁のキログラム原器が割れた。…
ストーリーは在って無いようなもので、そこに映されたものを各々が拾い上げていくようなタイプの作品だった。口数のそれほど多くないヒロインの心情をどこか映し出しているような映像。それなのに、私はどこかしら気持ちよさを感じた。
作為的ですら無いのに、ヒロインに変化の時期が訪れたのが分かる。
シェイクスピアの『尺には尺を』の一文、「誰かを自分の尺度で測るな。同じ尺度でいつか必ず自分もしっぺ返しをくらう。」という台詞をはじめとして、いくつかの“測り”にまつわる文が触れられる。
父親の骨の重さを測ると、スッと軽くなっていく21gの分量。出てきた「1001グラム」、1000グラムに足されたところの”1グラム”は、まるで父親が彼女に与えられた”割り切れない”ためのものにすら思えた。まるで父親の冗談が通じたかのように、ヒロインはクスっと笑った。
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去年のTIFFで観てます。この世界観が結構好きだったな。
原器なんて言葉、普通に暮らしてたらまず使わないでしょ。そこに対してのこだわりと、自分の身に起こる出会いと。マリエ役の人もすっきりしてて好感持てたかな。
http://blog.goo.ne.jp/rose_chocolat/e/33b2b0f6eb913abf1b7c83077b8e17df
rose_chocolatさんへ
こちらにもありがとうございます♪
私はTIFFの時に公開が決まっていたので、これは先送りにしてました。
そしたら、一年もかかりましたね。
割り切れない部分をそれとして自分の人生に受け入れる時って、周りから見れば簡単そうに思えますが、本人には実は一大事だったりもしますよね。
この作品では、そういう瞬間が描けていたと思います。