『三人の結婚』 恋愛はいつだって修羅場ゲーム
恋愛の駆け引きはゲームに見せかけて、真剣勝負。
ドワイヨンの恋愛活劇はいつもエゲツなく本物で、決して嘘がない。
何しろ監督のジャック・ドワイヨンときたら、このオヤジ本気でガッシリ四つに組み付いてくるもんだから、見ているこっちも本気にならざるを得ない。
見終わった後にかえるさんが言っていたのだけれど、
「日本に生まれたことで、私達女子はなんて損をしているんでしょうね」と。
「本当にそうね」と私は思った。
日本人ときたら、いくつになっても男は大人にならず、処女信仰だったりアイドル好きだったり、ロリ趣味が一般的な成年男子の傾向として認められている体だ。
でもここに居る男達女達は、年若い者も中年も青年も、皆一様に恋愛模様に組み入れられてる。
若くして成熟し、中年まで悠々と恋愛遊戯に耽る。中年になったって精神年齢は変わらない、その欲望に素直になる限りは。皆同じ秤に入れられる。
少女から中年まで、恋愛のパートナーシップとして可能性に満ち満ちている。
フランス人にとっての大人の定義というものは、いつだって素敵だなと思うのだ。
頬を引っ叩くじゃれ合い、斜面でのもつれ合い。
白い乳房に噛み付いたかと思えば、尻にキスしたり。
ドワイヨンの性愛の扱い方は、まるで気取りがないのだ。頭で恋するわけでも、体だけで恋するわけでもない。その両方でぶつかっていく。
いくつになっても激しい情念で恋だ愛だと抜かす人間達を見て、「ああ、人間て面倒くさいな…」と思ってしまったら、もう手遅れなんですね。
そんな草食な人間は恋愛から身を引かざるを得なくなる。
実際、そんな蚊帳の外な人間もちゃんと描いていた。
だってそれが恋愛の苦しみであり楽しみなのだから。
始めから終わりまで、恋愛はもつれてこじれて絡まって…。
ああ、やっぱり面倒くさいような、でもそんな人が羨ましいような。
ここでは一つのこじれた愛の終焉と、その誕生が描かれている。
今まさに始まろうとする恋と、飛び込もうとする人生の変化。とてもワクワクする。
いつだって始めようとすれば始められるのだと。
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