『バクマン。』 ジャンプ王道指向プロ映画
よくある話なんですけど、小学校の時私も漫画書いてたんですよ。ストーリー漫画も書いてたんだけど、いかんせん私は少女漫画しか読んだことなかった。
我が家の斜め前に住んでいる一つ上のお兄ちゃんも、漫画を書いているということで、スケッチを見せてもらったことがあった。それが鳥山明ソックリで、タッチが全く違う。あまりの上手さに自信を喪失して、「私は漫画家は無理だな」と早々に諦めることになりました。そのお兄ちゃんはその後、漫画家のアシスタントになりました。その後何年もアシさんを続けていたけれど、漫画家として一本立ちは出来ず。今や夢を諦めて、会社員になったと聞きました。
本当に漫画家になれるのって、ごく僅かな一部なんですよね。
ジャンプについての暴露話の多い原作の『バクマン。』、これを映画化する際に、漫画の紙面を大胆に使ったりプロジェクションマッピングをしたり、VJ(ビデオ・ジョッキー)風の映像を見せるなど、斬新な映像が目新しい。作品の中で何か一つは必ず新鮮に見せる工夫をするところが、いかにも大根仁監督らしいんですね。物語そのものはむしろ、王道の娯楽エンタメなのに。
ジャンプの“アンケート至上主義”を議題に乗せながら、映画が終わってみれば決してそこへの反論は無いのです。結局アンケートで一位になることがライバルに勝つ方法であり、そこに至る中でジャンプ王道の「友情・努力・勝利」が最終的勝利を導く。
あくまでもジャンプの宣伝的(プロパガンダ)色合いが濃い。
そう考えると、恋愛パートのあの薄さにも納得がいきます。
亜豆ちゃん(小松菜奈)の存在は、主人公が夢に向けてギアを踏むだけの存在になっていて、恋愛はあくまでもアッサリ。
しかし、ジャンプの話がこれだけ多く出てくるのに、ジョジョについての引用が一個も無いんですね。
途中、『スラムダンク』の決め台詞でやり取りをするシーンがある。ライバル同士であった新人漫画家が集まるが、ジャンプ漫画で打ち解ける…というシーン。今ならむしろスラムダンクより、ジョジョの台詞で仲間同士盛り上がる方が、「ありそう」に思いません?でも、ジャンプの王道からかけ離れた荒木ピロピコ先生についての言及は一切無い。彼は私が読んでいた頃は、ずっとマイナーだったんですよ。気づいたらメジャーになった、彼こそ珍しいパターンなのに。
基本、ジャンプの王道路線からは最後まで反れないのがこの作品なんですね。だから、「漫画で博打を打とう」という言葉が、正直あまり効いては来ない。
でも、これこそ大根仁監督らしさなのかもしれません。映画のコア層に届けようとはまず思っていない。一般的観客をいかに取り込むかを考えた作品作りだからこそ、こうなるのでしょう。
大根仁監督は『モテキ』から、「素晴らしいのだけれど何となく自分のツボとは外れるな」というのがあるのですが、それこそがこの王道主義なのかも。
まあ私なんて、ワンピース嫌いの白泉社派ですから。
でも、神木君は光ってたし、るろ剣以来の佐藤健とのコンビもピッタリ。
新井浩文も染谷将太も相変わらず最高だし、それに最近はリリー・フランキーまで加わった感じがありますネ。
山田孝之も良かったし、クドカンの漫画家は水木先生以来二度目。これもよく似合ってた。
あ、神木君がジョジョのiPhoneケースを使ってました。
桐谷健太のiPhoneケースはメリケンサックで、こっちの方がかっこ良かったけど。
私が1番読みたいのはラッコ先生でした。
2015/10/17 | :青春・ロードムービー 日本映画
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コメント(6件)
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とらねこさん☆
判るわかる~~
ジョジョLOVEねえねは、やっぱりアンチワンピースだし、コアにジャンプを語るならジョジョねたでいってほしいよね。
スラダンも捨てがたいのは確かだけど。
神木くんはゴリゴリのヲタクらしいね☆
ノルウェーまだ〜むさんへ
こんばんは〜♪コメントありがとうございました。
ノルさん、自分が見ていない映画でも、レビュー読んでくれてるのね!嬉しいな、ありがとうございます。
あー、私と気の合うねえねちゃんは、ジョジョが好きで(コスプレまでお母さんに作らせてたっけ!)、かつワンピース嫌いなのね。
もう、ますますセンスが私と似てるっ!
そうなんですよそこの場面ね、「漫画の台詞をそれぞれが覚えこんでいて、台詞の応酬で切り返す」っていう気の利いたシーンだったの。それなら、絶対ジョジョじゃない?!
実際、私の友人同士なんかだと、ジョジョ台詞で盛り上がったりするのに。
「ジョジョ」こそは最強の邪道なんじゃないかなあ。
荒木飛呂彦の初期の「魔少年ビーティー」とか「バオー来訪者」とか好きで「バオー」とか自主映画にしようとしたくらいだけど、クセが強すぎて打ち切りの常連だったんですよね。
そんで遂に長期連載になったのが、「ジョジョ」なんだけど、やっぱ「バクマン」はキャラクターには邪道を目指すといわせつつ、これ自体は王道だから、やっぱ「ジョジョ」じゃないんでしょうね。
お久しぶりです!!
この映画、土曜の映画紹介コーナーで知って、久しぶりに観たい!!って思った映画だったんです。
(サカナクション好きなもんで、なおさら)
私は、ジャンプ全盛期に青春時代を過ごしたので、面白く見れました。(ジョジョよりも前、奇面組やらついでにとんちんかんやらキャッツアイやら北斗の拳…語るとキリナイです)なのでワンピースは苦手です。
神木君、良かったです。
で、監督も初めて知りました。
リリー・フランキーと山田孝之は凶悪で共演した気がしましたが。(日本映画チャンネルでCMやってましたが)
山田孝之って苦手だったんですが、やっぱり上手いんだなーと感心しました。
なんかとんちんかんな感想でごめんなさい
ノラネコさんへ
こちらにもどうもです♪
>「バクマン」はキャラクターには邪道を目指すといわせつつ、これ自体は王道だから、やっぱ「ジョジョ」じゃないんでしょうね。
そう、私もそのようにLINEでもお話しましたが、ジョジョを出せない理由はこれなんですよね。
私も魔少年ビーティーもバオー来訪者も好き。
ノラネコさん仰るように、ロジカルに作られているから安心して見に行けるんでしょうね。
まあ、私は大根仁テイストがどうもツボから外れてしまうタイプなだけですわ。
鉄犬子さんへ
こんにちは〜♪コメントありがとうございました。
わーい、お久しぶりです♪嬉しいな〜
神木君良かったですよね〜!
サカナクションもこの映画にバッチリハマってましたね。
キャッツアイは漫画は読んでないんですが、アニメは好きでした♪
北斗の拳とシティハンターは読みましたよ!
北斗の拳はめちゃ好きでしたね〜
山田孝之、結構イイですよね。
独特の空気を持ってるから、時々映画から彼だけ浮いて思える時ありますが、長所に変えることも出来そう。
私は『電車男』の時はそんなに好きじゃなかったんですが、『クローズゼロ』はとっても良かったので満足してます^^
『北区赤羽』がすごく良かったらしいんですが
これは私は見なかったんですよね〜