『ハッピーボイス・キラー』 ほんわかキュートな悪趣味ホラーコメディ
マルジャン・サトラピ監督の最新作(『ペルセポリス』、『チキンとプラム』)。
ピンク色の作業着を着せられて、工場で退屈な作業を毎日繰り返しさせられながらも、笑顔で頑張るジェリー(ライアン・レイノルズ)。同僚のフィオナ(ジェマ・アータートン)に思いをかけるが、どうも彼女の反応はあまり良くない。
彼は少々世間からズレているが、1番変わっているのはペットの犬・ボスコと猫のMr.ウィスカーズと会話出来ること。実は彼は元精神病患者だが、社会復帰しようと頑張っていた。薬を飲むと動物達の声が聞こえなくなってしまうので、出来れば薬は飲みたくないジェリーだった。
サイコキラーを彼目線で描いたら、悪趣味でグロ哀しい意外にも切ない物語。犬が天使で猫が悪魔かよ。ホラーとコメディを足した不思議なノリが、好き嫌いが分かれそう。
ゆるいコメディのノリで、悪趣味や悪意はところどころ面白く感じるものの、エロもグロも抑えめなので、ホラー好きには少し厳しい。
サイコキラー目線の物語という点で、『マニアック』同様に心惹かれる部分もある。
この先、ネタバレ
被害者の女たちの描写で、最初のフィオナのどこか憎らしい“女っぽさ”ー この描写はなかなか底意地悪くて良かった。でも、二人目の被害者であるアナ・ケンドリック(リサ)は本当に性格の良い子で、彼女を先に好きになっていればもっと違っていたはずだった。リサの方はジェリーに気がありそうだったのに、自分に冷たく、性格の悪いフィオナの方を好きだったのだから、ジェリーに見る目がなかった、ということになる。
また、ジェリーが“瀕死の状態を追った生き物を殺す”ことが正しいと思うキッカケに、母親の死があった。そのトラウマでジェリーはこうなってしまった、と説明づけている。つまり、彼の病理の原因はこれであるとハッキリと描写しているのだった。
私にはこうした様々な理屈づけが、かえって邪魔に思えてしまった。
しかし、ペット二匹や動物達の声は全部、これライアン・レイノルズがやっていたのね…!なんと。後から気づいた。ライアン・レイノルズのあまりの上手さに驚いた。
動物の声が本当に聞こえる訳ではなく、ボスコもMr.ウィスカーズもジェリー本人の別人格であったと裏付ける、説得力のある事実。恐れ入った。
2015/10/14 | :ホラー・スプラッタ アメリカ映画
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コメント(2件)
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こんばんは。
とらねこさん、評価今一つって感じですか?
私奴はいたく気に入ってしまって・・・
案外、こういうキャピキャピの色使いや可愛いい系のセンスが好きなんだなぁ、と自覚させられてしまいました。
ホラー観賞達人ではないので、本格なものより、超おバカか、可愛い系の方が嵌るみたいです。
とにかく、サトラピ監督の絵作りセンスがとても良いので以前とらねこさんが推していた「ペルセポリス」を早速借りてきちゃったほどです。結局忙しさから最後まで観ないうちに期限切れで返しちゃいましたけど。そのうちまた借りようと思ってます。
imaponさんへ
こんばんは〜♪コメントありがとうございました。
そうなんです、実は私は今ひとつでした…。でも、これすごく気に入っている人は気に入っていますよね。
ホラー好きにはちょっと中途半端に思えちゃうかも。
あ、そうそう『ペルセポリス』はすごく好きです〜!うん、確かに画的なセンスは感じます。
ペルセポリスはモノクロなおかげで余計好き。
あらら、期限切れで変えしちゃいましたか。残念!
でも、延滞するよりはマシです、偉い(笑)
延滞するなら、返してまた借りた方が安いですよね。