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『わたしに会うまでの1600キロ』 人生のリセット

wild-movie-2014ジャン=マルク・ヴァレの描く痛みは苛烈だ。情熱的な表現を得意としながら、繊細な統制がどこか効いている。同じような内容の作品は他にもあるのに、この人が手掛けるや新鮮に映る。それって、かなり底力のある実力と言えるのでは。
ダラス・カウボーイズ・クラブ』はわかりやすい感動物語に思えて、実は不思議な印象のカットがあった。『カフェ・ド・フロール』は思ったよりずっと実験的な作品だった。もともとこうした作家性の持ち主だと驚いた。こちらの作品でようやく3作目。今後も注目したい人になった。

ひたすら長距離を歩いて人生を見つめ直す物語としては、『サンジャックへの道』、『星の旅人たち』と同類の作品がある。
サンティアゴ・デ・コンポステーラ(エル・カミノ)は有名な巡礼路だけれど、パシフィック・クレスト・トレイルはそれよりもずっと過酷だった。
前者の2つは「一人で成し遂げるのは難しいために、誰かの力を必要とする」物語だった。人との出会いやぶつかり合い、助け合い。それは人生そのものでもある。
でもこちらの物語では、主人公のシェリル・ストレイド(リース・ウィザースプーン)は一人内省する時間を必要としていた。自分の人生をやり直すためのリセットの時間。

ローラ・ダーン演じる母親の回想シーンはどれもパワフルで、彼女が出る度に涙が溢れた。
大学時代に母親のことを、「彼女の知性は自分より劣る」と思った人は、全員がこの作品を見た方がいい。
人生の軌道修正が必要になるほど、ボロボロに傷ついたことのある人も。

冒頭のシーンが印象的だ。
靴が思わず転がってしまい、「Fxxk you bitch!」と大声で叫ぶ主人公。このシーンが後で重なってくる。思い出したくもないほど辛い思い出。

不思議だよね、一人で居る時間にはふと、記憶がどんどん蘇って自分を襲い掛かってくるように思える瞬間がある。
シェリルもそうだったけれど、良い思い出より、辛いことやどうしようもないこと、大切な人を傷つけてしまった瞬間ばかりが蘇ってくる。

彼女が見ず知らずの男と寝たり、自暴自棄にドラッグに耽ったりしてしまったのも、実は母親の喪失がスタートになっている。
弔い行動はその人それぞれであるけれど、時にその人の人生を壊してしまう。
ただし、破滅的な行動に向かってしまう主人公の気持ちは、その行動がビッチであるがために、真面目な人にはあまり分かってもらえないかもしれない。

 

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コメント(8件)

  1. おお~珍しくとらねこさんと時差がない!(笑)

    実を言うとあまり期待していなかったのですが、
    とても良かったです。

    私は真面目人間なので(笑)冒頭からシェリルの
    行き当たりばったりな計画には突っ込みっぱなしでしたし、
    過去の破滅的な行動にも決して共感は出来ませんが、理解は出来るかな。
    『カフェ・ド・フロール』は未見なのですが、
    これでますます観たくなりました。

  2. amiさんへ

    こんばんは〜♪コメントありがとうございました。

    そうなんです!ずっと前に公開なのに時差が無く、随分経ってから見ているのも
    この邦題が見たい気持ちを削ぐものだったからなんですよ〜

    シェリルは確かに計画性がイマイチ行き当たりばったりでしたね
    逆にそういう方が彼女らしいし、リアルだなあと思う面もありました
    私も実際いつも旅行は行き当たりばったりで、その時その時の偶然性を大事にすることが多かったなあと…w

    彼女の破滅的な行動、ドラッグの怖さでもありましたね。
    私はドラッグやったことなく、お酒程度で良かったな〜
    多分私も似たような目に合っていたと思います。

    『カフェ・ド・フロール』も是非是非見てみてくださいな
    こちらもふんわりとしたタイトルから想像するのとは違って、深くエグられるものがありました。

  3. とらねこさん☆
    破壊行動に突き進んでしまう人は、あまり多くは無いけど確実にいますよね。
    私はあまり深く共感することが出来ないですが、そういった人が再生していくためにもがく映画としては、なかなかに素晴らしいものでした。

  4. 先日ミア・ワシコウスカの「奇跡の2000マイル」があったばかりで、あれもなかなかの作品だったので、二番煎じっぽくてあんま期待してなかったのです。
    ところが、観ておどろきました。
    これほど繊細かつハードな人間ドラマだったとは。
    さすがジャン=マルク・ヴァレ。
    彼の撮る人間たちは、ダメダメだけど愛おしいです。

  5. ノルウェーまだ〜むさんへ

    こんばんは〜♪コメントありがとうございました。

    破壊行動については、“自ら“突き進むというより、ドラッグの副産物として“そうなってしまった”という面もあるかと思います。
    アメリカだと本当に普通に過ごしていても、学生時代に経験したりする人も多いドラッグですからね。

    人が一人“再生しなくてはならない”という心持ちに至るには、その前に死ぬほどの苦しみを味わっている…と私は思います。

  6. ノラネコさんへ

    こちらにもありがとうございます♪
    ああ、『奇跡の2000マイル』。
    こっちで満足してあちらは見なかったんですが、あちらも結構良かったみたいですね。
    私はこの方式で『スーパー!』を諦め『キック・アス』を見たんですが、スーパーが傑作で大失敗でしたが…

    繊細かつハードな人間ドラマ。まさにそうですよね。
    母親に対する彼女の思いを考えると、いつも思い出して泣いてしまいます…。

  7. とらねこさん、こんばんは。コメントありがとうございました。
    この映画私は好きですね。。リースとローラ・ダーン、初めていいと思いました。
    私も、知性についてではないのですが母を傷つけてしまったことがあり、、、、
    子どもの頃のことなのですが、母の悲しそうな顔が忘れられません。
    ちゃんと謝らないとね。。

    ところでとらねこさん、自転車運転気をつけてね!
    アソコもお大事に(笑)。

  8. 真紅さんへ

    こんばんは〜♪コメントありがとうございました。
    うん、私もこの映画大好きでした!
    ローラ・ダーンは本当、どうしてそこまで評価されてるんだろう…ってこれまで思ってたんですが、やはりさすがだなあと思いましたね。

    母とは何かしら衝突しますよね…。私にも似たような経験があるので、リースとローラ・ダーンのシーンは本当に痛くてたまりませんでした…。

    自転車は、毎日乗ってますよ〜
    今日も片道40分は乗ってましたね!
    ママチャリだと痛くないんですけど、最近クロスをデビューしたんです…。
    アソコが痛いんですけどね〜。




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