『キングスマン』 上品なオーダーメイドスーツに身を包んだ下品なアクション
古き良き007に影響された、伝統的英国スパイ活劇という極上スーツに身を包んだ、極悪アクション。
楽しめたのは、次世代の“ランスロット”(“ジェームズ・ボンド”的な呼称襲名制)のオーディション部分。まるで『ライト・スタッフ』!(『ライト・スタッフ』を知らない人には、そのパクリである『宇宙兄弟』と思えば良いかも)
ロンドンのサヴィル・ロウ通りにある、「キングスマン」という名のオーダーメイド紳士服屋さん。サヴィル・ロウは“背広”の語源にもなった、いかにもイギリスを代表する観光地の一つ。ロンドンに行くなら誰もがとりあえず行く場所だ♪(私も行ったよ!w)
この知られざる店で、スパイには欠かせない特注のスーツや傘を始めとした、全部のスパイグッズが揃っている(第三の部屋)。ここにワクワク。
「マナーが紳士を作る」(出自は関係ないのだ)、という名言を引っさげて、スーツを着るに相応しい男へと主人公が成長していくのが楽しい。「スーツは紳士のユニフォーム」という言葉が光る。ヘミングウェイの「過去の自身より優れた者が偉い」という台詞も引用していたね。(ウン、確かに『マイ・フェア・レディ』!って、ン?…『プリティ・ウーマン』はどうなんだ?w)
イギリスは雨が多いので、紳士はステッキのように傘を持ち歩くのが一般常識。そんな傘が銃弾すら防ぐ仕様になっているなんて!しかも先からはチュドーン!と威力のありそうな弾丸が発射されるし。
他にもお洒落な紳士グッズ、金のデュポン製ライターみたいなものが手榴弾になっているのも楽しい。
ただ、紳士に至るその道を描きながら、イギリス紳士である上流階級の男たちは、揃いも揃って嫌味な男ばかりで、正直ウンザリしたけれど。
“スノッブ”は“俗物”と訳されていたけど、正直“上流気取りの”という意味が強い言葉なのに、ただ単に“俗物”では意味が通じないのでは…と思ってしまった。
まあでもここに出てきた上流気取りの男たちのいけ好かなさで、何となく意味は通じるのかナ?
前半はそんな風にノリノリで進むけれど、正直ケンタッキー州での教会のシーン以降、自分は「あーあ…」と気持ちが萎んでしまった。
「あのシーンが最高!」と言っている人も居るので、人の感じ方は様々だなあと。
いかにも“英国の誇り”にこだわった作りであったのに、いきなりケンタッキー州になった途端、レイナード・スキナードの「フリー・バード」のソロがかかるのもちょっと。他にイギリスのバンドいくらでもあるのに、なんでアメリカの南部を代表するフォーク臭の強いロックを選んだのか?…「だって舞台設定がアメリカだもん」と言われたら、確かにその通りなのだけれど。
でも、私にはコリン・ファースの出てくるシーンが全て様になって見えたので、それ以降は意気消沈。あの教会の外での展開に納得が行かなかったし。
威風堂々で頭がポンポンと花火になって上がっちゃう悪ノリの下品さも、「これは娯楽なんですよ」と言われて鼻白む気分。
「ホラ、冗談なんだから笑えよ」なんて言っちゃうんだ、って。
途中までは褒める気満々で見ていたのですが、まあ私はこのアクション自体があんまり好きじゃないんですよね。
スローモーション&ストップモーションはいつもマシュー・ボーンがやる手で、正直「またか」という感じ。もう飽きちゃいました。『レイヤーケーキ』からやってるじゃん。
ただ、サミュエル・L・ジャクソンの悪役は良かった!「古き良き007は悪役が輝いている」の台詞の通り。
サミュエルはまるでスパイク・リーみたいな格好をしていて、いかにもアメリカ的な悪者。高級ディナーコースを思わせる銀の食器隠しに、マクドナルドのハンバーガーがずらり並べて喜んでいる悪役。マクドナルドに悪の帝国アメリカを象徴させるのは楽しかったな。ついでに、『パルプ・フィクション』の台詞を思い出させるしね(「フランス語でクオーター・パウンドバーガーを何ていうか知ってるか?“ロワイヤル・ウィズ・チーズ”だぜ)。タランティーノを思わせる悪ノリアクションに拍車がかかる。
ところで、チーズバーガーと言えば、ガラハッド(コリン・ファース)の功績を称えた新聞の一つに、「Brad Pitt ate my sandwich」なんて一文もあったよw
それから、何と言ってもガゼルが最高♪
あと酒好きとしては、酒知識が散りばめられているのが嬉しかったな。マーク・ハミル(アーノルド教授)の誘拐シーンでの62年のダルモア(スコッチウィスキー)を始めとして、「マクドナルドのチーズバーガーに、45年のシャトー・ラ・フェットが合うんだ」「スポンジケーキにシャトー・ケームが合うようなものかな」とか。すっかり紳士になったエグジー(タロン・エドガートン)が頼むのは、「ウェルモットは10秒、ステアのみで」との注文。最後にスカンジナビア王女に持って行ったシャンパンは、ヴーヴ・クリコだよね、確か。
さすがに二度見たので、余計なトコばかり見てるなぁワタシw。
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コメント(8件)
前の記事: 『彼は秘密の女友だち』 女性らしさとは
とらねこさん☆
やっぱりー?私も教会のシーンは、あまりにコリンっぽくないので、意外性を狙ったとしてもゲンナリしちゃった。
あそこだけ無理やり感があって、それだけ酷いビームだったと言いたいのかもだけど、いただけないよね。
英国の紳士はステッキのように傘を持ってるけど、スーツ着てない英国人はいっさい傘を持たず、いつも雨に平気で濡れて歩くの(笑)
イギリスの傘って重たいからねぇ。
>教会のシーン
私は最高~!とまでは思いませんでしたが
キリスト教原理主義を皆殺しにするシーンで
保守的で右翼的?なレイナード・スキナードって
あまりにぴったり過ぎて凄い皮肉!って思いました。
自由の国アメリカを象徴する様な「フリーバード」と
いかにもイギリス的な「威風堂々」の2曲で大虐殺!って
監督、キツいわぁ。。。^^;
ノルウェーまだ〜むさんへ
こんばんは〜♪コメントありがとうございました。
コリン・ファースが出ているシーンは全部決まってて、好きなんですけどね…
コリンが居なくなった後の物語は、精彩に欠けるものがありました。
ふむふむ、スーツ着ている紳士と着ていない労働者階級の違い。なるほどです。
そう言えば、ロンドン塔で買った折りたたみ傘、ロンドン塔の絵が付いてて可愛かったのに、日本で無くしちゃいました。悲しい…
amiさんへ
こんばんは〜♪コメントありがとうございました。
amiさんは、レイナード・スキナード、ピッタリに思えましたか。
それまで色々と、「英国の紳士が云々」と描いていて、アメリカに移動したと思ったら途端にレイナード・スキナードなんですもん。
悪者もアメリカ人だし、大虐殺もアメリカ人達…という辺りで、“英国人らしさ”と受け入れるしか無いのかなあ。
私は、どうせなら一貫して、ここは英国パンクで描いて欲しかった…。
レイナード・スキナードは日本公演も行ったり、この曲も元々大好きな曲ではあったんですよね。
私的には、クラッシュとかピストルズとかダムド等、何かしらのパンクバンドが良かったな〜
『アナーキーin the U.K.』の歌い出しなんて、「I am an antichrist」なんて始まるし、ピッタリじゃないですか?笑
「威風堂々」がかかりながら頭が花火になってポンポン上がっちゃうんですから、
分かりやすく「これは娯楽です」って説明してるんですよね。
「娯楽だよ、冗談なんだよ!ホラ、笑おうぜ」って。
なんかその辺りで逆に鼻白んでしまいました…。
この映画はコリンの出てるシーンが最高!(爆)
教会のシーン素晴らしい!今だ嘗て誰が想像したでしょうか。
長回し風ワンショットの一人鬼退治(違)
これをあの55歳のご老体でこなすんだからね(吹き替えか?)
最後のポンポン人間花火は小気味いいけど、「へえ~」ただそれだけでしたよ^^;
そろそろ殺戮英才教育された少女が出てくる映画を誰か作ってくれないかな(爆)
itukaさんへ
こんばんは〜♪コメントありがとうございました。
コリン最高ですよね!
でもitukaさんてば、彼の退場シーンを見逃しちゃうなんてぇぇぇ
教会シーンのあの後ですよ。
寝てしまったって、教会シーンの途中で寝てしまったのでは?
twitterのフォロワーさん曰く
「人間の頭花火も人間の半分パッカリも、すでに三池映画でもうやっているから、三池監督は偉大」
とのことです。そうなんですよ!もうやってるんです!
うーん、だから微妙に思えたのかもなあ。
初めてだったら、「スゲ〜!」って思ったかも。
>殺戮英才少女が出てくる映画
『チョコレート・ファイター』見てませんか?ジージャーちゃんすごいですよ!
なんたってタイはガチアクションの国ですから。
『ハンナ』も案外私好きだったりしました♪
>正直ケンタッキー州での教会のシーン以降、自分は「あーあ…」と気持ちが萎んでしまった。
英国紳士(スーツが似合う渋いおっさん)の見本のようなコリン・ファースが、いつもは綺麗に整っている髪を振り乱して暴れる姿が見られた、という意味であのシーンは楽しかったです。
逆に、彼が出てこないシーンは・・・
もう1人の渋い英国紳士、マーク・ストロングがいてくれて、本当に救われました(笑)
哀生龍さんへ
こんばんは〜♪コメントありがとうございました。
そうですね!コリン・ファースが髪を振り乱して、あんなにアクション頑張っちゃって…
それを見れただけでも、「ごちそうさま♪」という気持ちになりました。
マーク・ストロングは美味しい役でしたね〜♪なんだか安定感があって、とても良かったです!
彼はいつ見ても素敵ですね…♪