rss twitter fb hatena gplus

*

『アタラント号』 夫婦は何かを乗り越えるべし


「映画史上の傑作」特集にて、ようやく鑑賞が叶った作品。何故見たかったかというと、この映画をブログタイトルにした方の影響で。品のある彼のイメージ同様の、優しくて深い作品でした。
思い出すと、うっすら涙が浮かんでしまう。心の深い部分をサラリと撫でるような優しい詩情性があって、しっかりと心に残ると同時に、深い感触を与える素晴らしい映画なのでした。

冒頭、「こちらはほぼオリジナルに近い形で修復された作品です」と断り書きが付く。34年製作のこの作品、90年に修復されてようやく見ることが出来るようになったのね。

物語は…
結婚したばかりの男と女。アタラント号の船長である男所帯に住み始め、航海の日々。慣れない女にとっては少し飽きてしまう。憧れのパリに停泊した時も、パリをゆっくり見ることも叶わない。男のつまらない嫉妬からスレ違い、二人は喧嘩してしまう。

年取った猫好きの水兵さん、“ジュール父さん”(ミシェル・シモン)が人に迷惑をかける酔っぱらいかと思いきや、意外な活躍を見せる。このオジサンがコミカルで映画がより楽しく思えるのだった。部屋のお皿を割られても文句一つ言わないし、漫画っぽいタトゥーを見せたりして、若い夫婦を描く中、一際異彩を放っている。ラストではなんと重要な役割を果たし、見事円環をもたらしていた。

結婚したから、男と女がいきなり一つ部屋に住み始めたからといって、すぐに上手くいく訳でもない。誰もが経験するような、相手とのスレ違いや、現実とのギャップ。自分のつまらないエゴから来る嫉妬心。誰もが何かを乗り越えて、ようやく相手と向き合う覚悟が出来るのかも。
相手を許すこと。これが一つのポイントであり、唯一の相手と上手くやっていく方法なのだよなあ。
でもこれがなかなか難物なのだ。だから余計、ディタ・パルロのふわっとした笑顔や表情に癒やされる。
きっと彼女なら許してくれるだろうと思える、この包容感。
女にはこれが大事なのだよ、ガールズたちよ…。

水の中でディタ・パルロの柔らかな笑顔を見るシーンが美しくて、涙が流れた。
再び出会った時の無言の抱擁。わずかな余韻を残したのみで、サッと映画が終わるのもいい。

 

関連記事

『キャロル』 女性の心理はファッションに表れる

行間こそ映像力!…と、最近思う。 物語の合間に立ち昇ってくる何か。 こ...
記事を読む

『三人の結婚』 恋愛はいつだって修羅場ゲーム

恋愛の駆け引きはゲームに見せかけて、真剣勝負。 ドワイヨンの恋愛活劇は...
記事を読む

『コシュ・バ・コシュ 恋はロープウェイに乗って』 ロープウェイ映画の傑作

バフティヤル・フドイナザーロフの、『少年、機関車に乗る』に続いての長編...
記事を読む

『ラブバトル』 男と女はいつも泥沼

齢70歳にして、これですか〜… いやあ、フランス人はさすがだな!
私の...
記事を読む

2,009

コメント




管理人にのみ公開されます

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)


スパム対策をしています。コメント出来ない方は、こちらよりお知らせください。
Google
WWW を検索
このブログ内を検索
『沈黙』 日本人の沼的心性とは相容れないロジカルさ

結論から言うと、あまりのめり込める作品ではなかった。 『沈黙』をアメリ...

【シリーズ秘湯】乳頭温泉郷 鶴の湯温泉に泊まってきた【混浴】

数ある名湯の中でも、特別エロい名前の温泉と言えばこれでしょう。 乳頭温...

2016年12月の評価別INDEX

年始に久しぶりに実家に帰ったんですが、やはり自分の家族は気を使わなくて...

とらねこのオレアカデミー賞 2016

10執念…ならぬ10周年を迎えて、さすがに息切れしてきました。 まあ今...

2016年11月の評価別INDEX & 【石巻ラプラスレポート】

仕事が忙しくなったためもあり、ブログを書く気力が若干減ってきたせいもあ...

→もっと見る

【あ行】【か行】【さ行】【た行】 【な行】
【は行】【ま行】【や行】 【ら行】【わ行】
【英数字】


  • ピエル(P)・パオロ(P)・パゾリーニ(P)ってどんだけPやねん

PAGE TOP ↑