『八仙飯店之人肉饅頭』 アンソニー・ウォンの顔力
アンソニー・ウォン!もうとにかく、アンソニー・ウォン!
アンソニー・ウォンの怪演光るグロ作品。
ようやく見れました。実を言うと、こちらの作品の存在を知ったのは『美しい夜、残酷な朝』(オムニバス)の中の一編、フルーツ・チャンの『餃子』で私がいたく感激していたところ、そんなの二番煎じだと言うんですね。「こんなんあるよ」と教えていただいたのがこちらの作品だったのでした。
早9年!その頃から“生涯見るべきリスト”に入っていたので、「ついに!」と感慨ひとしおでございますよ。
だがしかし!先に『エボラ・シンドローム 悪魔の殺人ウィルス』を見てしまったのはいけなかったなあ。順番的には、人肉饅頭が93年、→エボラが96年であるし、この2つはほとんど同じ。
人肉饅頭を見た人が「こんなもの食べた人、体は大丈夫なんだろうか?パンデミックしたらもっと面白いのに…」なんて思いついてしまったのがエボラ・シンドローム。
物語は…
とある日に腐敗した人の手足が海辺に打ち上げられ、八仙飯店を経営しているウォンを調べて欲しいとの手紙(元店主の弟)が警察に届く。調べたところ、元の店主一家は全員失踪しており、全く違う人物のウォンが現在は経営をしていることが分かり、警察は調査を始める。
実際に85年に香港で起きた「八仙飯店殺人事件」を元にしている。ウォンが収監された後、ゴミの空き缶で手首を切ったり、空き缶のプルトップで死んだりと細部は結構忠実。
ただし、冒頭で警察達がノビノビとボケをかましたり、女たらしの上司に恋焦がれる色気のない女警察官を仲間内でからかったり、「どうしてそこで無理やりギャグを入れるのか」と不思議に思うような、香港テイストではある。おかげで、その後の猟奇的シーンとのギャップが凄いことになっているのも本作の特徴!?
何より、主人公演じるアンソニー・ウォンの鬼気迫る怪演が光って素晴らしい! この人、普通に考えればイケメンなのだろうけれど、余りある何かがギラギラとあるんですよね。この人肉饅頭と同じ年に作られた『タクシーハンター』では真面目な役をやっているのに、どうも役の間から滲み出るオーラがあるw。 私はアンソニー・ウォンは脇役でしか見たことなかったのだけれど、『頭文字D』を見た時に、はっきりと「この人はすごいオーラを持っている」と思ったことがあり、「これは覚えるべき俳優」として心に刻んだんですね。で、その後に調べたら八仙飯店の主人公だったと知って、うわあ〜と驚きましたw そうか、とっくに私がチェックしておかなくてはいけない人物だった!なんて。
ただ本音を言うと、少数派なのかもしれないけれど私は『エボラ・シンドローム』の方が好きでした。
こちらの方も、主人公の設定がほぼ人肉饅頭と同じで、凄惨な殺人事件を犯した過去を持つ主人公が、ボートで別の国に不法入国し、そこでレストラン一家を惨殺し乗っ取る話なんですよね。エボラの方は先にも言ったけれど、そこからパンデミックしていし、其処此処に挟まれたギミックが何より楽しい。
エボラはテンポ・コントロールが完璧で、見ている内に次第次第にハイテンションになり、殺人鬼目線で追いかけることが出来るので、より楽しさが増すんですよね。
人肉饅頭の方は、テンポ関係なく顔だけで乗り切っていて、後半では精神的に病んだ殺人鬼がリンチされたりするので、殺人鬼無双っぷりを楽しむことは出来ないですからね。
そうそう、レストランからのパンデミックというと、『人類滅亡計画』の中のイム・ピルソンの『素晴らしい世界』がこれまた不潔な食事→感染していく、という話でした。出来の悪いホラーだったけど、もっと真面目にハーマン・ヤオの上手さを勉強して欲しい。
ただし、やはり当時のインパクトは絶大だったのだろうなあ。
しかし、中国では時々人肉食の噂話が流布されるらしく、さすが何でも調理する中国圏だなあと思ったりも。怖いよ〜。
あと、ちょっとこの映画の内容からは話がズレるのだけれど、「これ画格合ってました?」と翌日に問い合わせしてしまった。
見ている間、画格が合っているのかどうか不安でたまらず、あまり集中出来なかった。
しゃべっている人の頭が切れた状態でちょくちょく会話をしているシーンが多過ぎるんですよね。
1.85:1の画格で間違ってはいない、ということなのだけれど、人の顔が鼻まで切れた状態で喋ったりするので、どうもこれが適切なサイズとは思えない。
「元々の画格の上下を、少し切っているというのはあります」ときちんと説明してくれたので納得出来たけれど、もう一度どこか別の機会でちゃんと見てみたいなあ。
こうやって画像を見ても、上下に黒い部分があるでしょ。これを無理やり、大きめに切ったように思えるんですよねえ…。
2015/09/04 | :ホラー・スプラッタ 香港映画
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コメント(2件)
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こんばわんッス
ようやく見ましたよ
アンソニー・ウォンの独壇場って感じでしたね~。
刑事達のコテコテっぷりにはちょっと辟易してしまいました(笑)
これをポストに入れると数日後にはエボラ・シンドロームが届くようになっています
楽しみでごわす
サイ5150さんへ
こんばんは〜♪コメントありがとうございました。
あ、これ年末ぐらいにDVD発売になってましたよね。
レンタルでご覧になれたんですね!良かった良かった
本当、アンソニー・ウォンの顔だけで全てを表現し尽くしてましたよネ
確かに刑事同士のコテコテぶりに、膝カックンな感じはありましたけど、
これもまた香港ジョーク!そのまま乗り切っちゃって下さい♪
なかなかバランスが悪くて、良い作品だったと思います。
さて、サイさんはエボラは気に入るかしら?
私はこっちよりエボラ派だったんですよね〜!