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『激動の昭和史 沖縄決戦』 町山オススメの実録戦争映画


今年も終戦記念日に文芸坐の戦争映画特集に行ってきた。文芸坐ではこちらと『軍旗はためく下に』の二本立て。(キネカ大森では『ゆきゆきて、神軍』と『日本のいちばん長い日』(監督/岡本喜八)、この2本は録画で持ってるので。)『軍旗はためく下に』は去年記事を書いたので省略。新藤兼人の2本立てでした。

岡本喜八『激動の昭和史 沖縄決戦』は、町山の三大オススメ戦争映画に入っているらしい。他は、アンジェイ・ワイダ『地下水道』とベルンハルト・ヴィッキの『橋』。『橋』はまだ見ていないので見てみよう。

岡本喜八らしいテンポの良さを想像していたら、少し違うものだった。でも事実を追求することを目指した“ルポもの”にも関わらず、長時間を退屈せず(途中休憩を挟むんですね)、一瞬も寝ることなく見ることが出来た。戦争中のグダグダした動きを事実通り追ったルポもので、見ていて辛いシーンが多いにも関わらず、腸が煮えくり返りながらも最後まで見てしまった。

兵士死亡 10万人、沖縄県民(一般人) 15万人。一体これがどれだけの数字なのか、いかに有り得ない惨劇であったのかがよく分かる。
「沖縄は本土のためにある」という台詞があった。この考え方は、いかにも沖縄を軽視しがちな軍本部の考え方であり、正直に言うなら、現在の政府の考え方もこうしたものを少なからず受け継いでいるように思えてしまった。基地問題を考えれば納得がいくはず。

沖縄へ派遣された軍幹部達もまた、筆舌に尽くしがたい無念の気持ちを何度も味わわされる。日本の軍の上層部がいかに無能であるか、目を覆いたくなるような無策っぷりは見ていて絶望的な気持ちになる。沖縄県民たちも決まって集団自決だ。このシーンが幾度も繰り返される。改めて日本人の人命の軽さはハンパないなと震え上がる。

悲惨極まりない状況の中、岸田森の怪演ぷりは見ていて楽しかった。彼は何を考えているのか分からない。仕事には熱心に従事するも、どこか諦念と厭世観の支配する医師で、今起こっている俗世間の出来事から精神的に距離を置いたような人物だった。こんな人物と、岸ゆり子のコメディエンヌっぷりの掛け合いは爆笑の連続でありがたかった。

こうした先の戦争を見れば、いかに日本人が戦争をするための技術もなければ才能もないことがよく分かるはず。
今の日本人がなかなか骨太な戦争映画を作れないのなら、昔の日本人が作った戦争映画をもっと真面目に見るべき!

 

2015/08/27 | :戦争

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