『コシュ・バ・コシュ 恋はロープウェイに乗って』 ロープウェイ映画の傑作
バフティヤル・フドイナザーロフの、『少年、機関車に乗る』に続いての長編2作目。
タジキスタン内戦の真っ只中に撮られたということだけれど、物語は政治の匂いの全くしない、まるで正反対の爽やか青春ラブストーリー。こういうのって、逆に断固とした意思によって、通常の人間の姿を描こうということなのか?と思ったら、どうやらちょうど撮影中に内戦が始まってしまった、ということらしい。
どんな状況下においても案外人間はしたたかなもので、何でもない理由をつけて出会いを求めたり、
戦時下であろうがなかろうが、賭け事に熱中する阿呆な男たちはいるものだ…てか?
こちら、ボーイ・ミーツ・ガールと言えど、その出会いの形が特殊。自分の全財産を賭けでスッてしまった男が、借金の取り立てに娘を差し出せと言われる。
娘はまだ嫁入り前(で、多分処女)。彼女を守り、一緒に逃げようと声をかける若い男(コイツもやはり賭博好き)。
夜に押し入ってきたものだから、なんとか誤魔化し逃げ出す。行った先は男が時々使う連れ込み宿みたいな場所だ。
普通に考えれば女の子は可哀想だし、不安だろうと思うところだけれど、描き方に悲惨さが無くカラっとしているので楽しい。
娘・ミラもどこか気丈そうだし、男の方もちょっと間抜けで憎めない。内戦でバンバン少榴弾が上がるが「花火?」なんて言ってたりする。若い二人にはロマンチックな花火。それで良いよね!
ロープウェイを操作する仕事をしていて、ここに自分の部屋まである。それだけで妙に楽しいし、うわあ、なんかいいなあ!って無条件で嬉しくなってしまう。
ロープウェイが行ったり来たりするシーンが多いのだけれど、人間よりこちらが主役か、と思ってしまうぐらい。
高低差の描写は恋のドキドキ感を表しているのかもしれない。そうした技術的表現なんかはどうでも良くて、もう画が最高だし、なんたって楽しい。
ロープウェイでキスをして、ワイン片手にディナーもする。
ロープウェイで親子喧嘩もするし、痴話喧嘩を夫婦も居た。とにかくロープウェイ映画決定版!
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