傑作報道ドラマの最終シーズン 『ニュースルーム3』
終わってしまった!アメリカ最高のドラマが終わってしまった!
第3シーズン、最終シーズンの今作でアーロン・ソーキン脚本のこのドラマはおしまいだというのに、たったの6話のみ。短すぎるけれど、アーロン・ソーキンの多忙が理由だというので、もう仕方がない。
このシリーズは大好きだったけれど、ソーキン脚本の映画を見るからいいもん。ああ、ジョブスが本当に楽しみ!待ちきれなくなる前に、過去のドラマ『ザ・ホワイトハウス』も借りてしまおうかな?なんて目論んでいるところ。
さて、第一話。これがまた初っ端からやってくれる!驚くことに、カメラワークが映画のそれになっている。よくある人物の喋る姿を次々に捉えたフィックスの切り替えショットばかりでなく、カメラが縦横無尽に局内を舐めまわす。明らかに長回しであると分かる部分は、何ともスムーズにカメラが動く。ジブのような大掛かりの仕掛けが、曲内を走らせているのだろう。舞台の中に入り込んだような気分になる。
ソーキン台詞はただでさえ長い。台詞を間違わずにワンカット長めの撮影は、おそらく俳優には大変なことだっただろう(ただでさえ台詞が難しくて早口なのに!)ドラマでこんなに新鮮なカメラワークを見る事ができるなんて、興奮するしかない!
考えても見て欲しい。『ソーシャル・ネットワーク』のような早口なポンポン飛び出す台詞の応酬を、『バードマン、あるいは(以下略)』のようなカメラで収めることを。クレイジーでしょ?(このカメラは最初の一話だけ。それでも、ワクワクが止まらなかった。)
ボストンマラソン爆弾テロ事件(実際に起こった事件)が起こる中、ニール・サンパット(デーヴ・パテル)にスパイ疑惑がかかる。特定の情報源が機密情報を漏らし、それにニールが加担してしまった形になるためだ。機密情報を漏らした情報源は国家反逆罪に当たると、FBIが介入してくる。ウィル(ジェフ・ダニエルズ)はニールを逃し、ニールは逃亡。ウィルは情報源の名前を明かせと強要されるがそれに応じず、法廷侮辱罪としてなんと刑務所入りに…!
さらに心憎くも盛り上げてくる。ウィルは刑務所入りする前に、マック(エミリー・モーティマー)と急遽結婚することに。刑務所に入る直前に無理やりの結婚式。華やかさは無いが、何ともドラマチック…!
そして、結婚式の最中に妊娠したことを告げるマック。人の子の親になり感慨深いウィルだが、ニールの居場所も情報源も明かさない決心は、ますます固いものに。立派過ぎるアンカーの鏡。
しかしその最中に、局は酷いことに。売却により、レオナ(ジェーン・フォンダ)より引き継いだプルイット(B.J.ノヴァク)の出現。そして何と、みんなを牽引してきたチャーリー(サム・ウォーターストン)が死んでしまう。ああ、愛すべきチャーリーが…。結婚式と葬式がシリーズ内で立て続けに行われるなんて。
プルイットはそのまま報道局長に。ウィルの収監されている間の出来事。未来はドブ色。
今回は、twitter等のSNSが入り込んだことにより、世界のニュースがよりスピーディになり、真偽を確かめる暇すら無く、各局が競い合ってしまう有り様が描かれていた。これまでのネットワークとは違い、情報を与えられる側の個人が、インタラクティブに情報を発信する側になるようなアプリの出現。世界は加速化している。
APN情報局が“真実の報道を”目指してきたシーズン1からの試みは、さらに危うくなっていく。視聴率がどんどん低下せざるを得なくなり、ついには売却になってしまう悲劇。
だが、世界が加速されようとも、メディアの在り方は変わらない。むしろ、難しくなるからこそ余計、守らなければならないものがあるということ。このドラマ、日本の報道関係者には是が非でも見て欲しい、と思う。いや本当、メディアの在り方について、日本はもう少し目を覚ますべき。「マスコミ懲らしめろ」とか言われてる場合でもないし、犬になってる場合ではないんだよ?
キャスト面では、1や2では嫌なやつだったドン(トーマス・サドスキー)とスローン(オリヴィエ・マン)のカップルが1番の主役になっていた。心の通わせ具合が何とも嬉しい。二人を見るのが楽しかったなあ。スローンはとても綺麗。初めは固いイメージだったのに、すっかり彼女が映るのが嬉しい。
マギー(アリソン・ピル)の電車内で出会った科学技術者との会話がまた面白かった。そしてようやく、ジム(ジョン・ギャラガーJr)と付き合い始めることになった飛行機の中。
6話の「ドン・キホーテの遺志」では、みんながニュースナイトに登場した時の姿が語られる。キャストそれぞれが顔を合わせ会話したその瞬間。ウィルは、ニールの顔すら覚えていなかったのだ。チャーリーがマックを抜擢した時のボウリングレーン。そして、「アメリカは何故偉大な国なのでしょうか?」という疑問をウィルに投げかけた大学生の女性に、マックがさり気なく1番前に陣取るコツを教えること。ああ、1シーズンの1話を思い出しますねえ!
マックが答えとなるべきカードを持って、一番後ろに立っていたことを思い出す。いい終わり方だ…!
あまりにも酷いプルイットのような人物が現れて、希望の見えない展望になろうとも、メディアは真実の報道を諦めるべきではないのだ。最後の一言が沁みる。「穴の空いたボートがあったらどうするか?溺れる前に、櫂で水を掬い出すのさ」。いやはや、絶望的な仕事だ。だからこその、“ドン・キホーテの遺志”。呑気な終わり方や、明るい終わり方でないが故に、メディアの厳しさがひしひしと感じられる。
制約のある短い時間でまとめようと走っているように思えることもあった第3シーズンだったけれど、こうやって振り落とされずにちゃんと完走出来る。さすがのアーロン・ソーキン。
今後もずっと応援しなきゃ…!
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コメント(2件)
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こんばんは^^
私もこのドラマ大好きでした。
・・・って、これで終わりだったんですかーー!?( ̄▽ ̄;)!!ガーン
そうか、だからラストがクリフハンガーじゃなかったのか(気付くの遅すぎ^^;)
でも、本当に第一話は鳥肌ものでしたね。
TVドラマでこれやる!?って興奮しまくりでした。
スローンとドンのカップル(笑)も大好きでしたし、
チャーリーのお葬式での「That’s how i got to Memphis」も凄く良かったですね。
ところでファスベンダー版ジョブスはソーキン脚本でしたか。
ますます楽しみになりました^^
amiさんへ
こんにちは〜♪コメントありがとうございました。
あらまー、終わったことに気づかずにいらっしゃったんですねw
確かに、普通のドラマのような構造にはなっていないから、ちょっと分かりづらいかもです。
その、普通とかけ離れたところが、さすがのアーロン・ソーキン^^
本当、第一話びっくりしましたよね!あのカメラ!
このシリーズで、今までやっていなかったカメラだから、驚くんですよね。
ドラマであんなの初めて見ましたもん。
私もスローンとドンのカップルが大好きになりました。
1stシーズンでのあの感じの悪い二人を、ここまで愛を持って描くなんて。
チャーリーのお葬式での、まさかのジェフ・ダニエルズの弾き語り!
一度見ただけじゃ足りなくて、iPadでWOWOWオンラインで数回見ちゃいました。
そうなんです!次はジョブズが楽しみでたまらなーいっ