舞台版『幕が上がる』 活き活きと熱が伝わる身体性
映画『幕が上がる』に続いて行って来ました、舞台版。
映画版とは全く異なるものになっていて、満足満足。素晴らしい出来でした!
「平田オリザ脚本」と一番最初に書いてあったので、あわてんぼうな私はてっきり平田オリザ演出かと思って気合が入っていたのですが、友人から「本広克行演出」と聞いてしぼむことしぼむこと。
人気があるためチケットはあっという間に売り切れ(販売当日で完売?)半ば諦めていたのですが、私よりもっと行きたかった相棒さんが何とかチケットを入手。
当日券の1番・2番(3人までしか当日券を買う権利がなかった)を手に入れてきた。
六本木Zeppブルーシアターは初めて。ここ、900人も入る大箱なんですね。
六本木EXシアターと同じくらいか。
私は最後尾だったのですが、最後尾で見てもこのサイズ↓。結構大きく見えるでしょ?
まさに「幕が上がるの幕が上がる前」。
(ドキュメンタリー『幕が上がる、その前に』は未見です。)
こちらの舞台版では、映画の中であまり描かれなかった、『銀河鉄道の夜』の舞台稽古に焦点を合わせ、まるで『ガラスの仮面』のように劇中劇を大胆に使用してきた。
『幕が上がる』の映画を舞台にした、というよりも、あの映画で足りなかった部分だけを絞って一つの作品にしているのです。ここが大いに気に入った!
劇中劇であった『銀河鉄道の夜』をそのままトレースして、世界観はこちらに負っている。こうした使い方はまさしくガラかめの王道パターンなんですね。
毎回毎回、何でもガラかめに見えるんじゃないかって?(笑)…いやいや、これは絶対誰かの入れ知恵ですよ。「ガラかめやっちゃえ!」ていう。
彼女たちが演じる『銀河鉄道の夜』が素晴らしいんです。この作品を選んだことに、大いに意味がある。
それは、主に“中西さんの苦悩”に焦点を当てていたのですね。
中西さんの苦悩はそのまま、311以降の私達が経験してきた“生きる苦悩”、と言い換えてもいい。
だから一人ひとりが宇宙の端っこで孤独であることに震える、この寂しさに共鳴してしまう。星たちが「ここに居るよ!」って精一杯輝くことに、より一層の深みをもたらしているんです。
『銀河鉄道の夜』、この作品は私は大好きでした。が、正直あまり意味が分かってませんでした。
子供の頃に読んだっきりだし、映画を見ても正直何となくしか意味が分かっていなかった。
でも依然として好きだった。不思議ですよね。好きであることと意味が分かることには関係が無いんですね。
時々、思い出して「カンパネルラ!」って叫んだりもしてました(笑)当時の彼氏に「それどういう意味?」って何度聞かれても答えないんです。
そんな、よく分からないままにしていた『銀河鉄道の夜』が、この作品でより一層内容を理解出来た気がした。
これぞまさに、演劇の醍醐味ですね!私は一体いくつの作品を、ガラかめによって理解してきたことか(笑)。
“身体性”を感じました。演技者の熱い血潮が、まるで流れてくるように感じること。演じる者は、それを演じることによって身に付けることの出来るし、見る方もその熱が伝導して伝わってくる。“身体性”。
こちらの舞台劇も、まさに貴重な“体験”になりました。舞台の良さは、この身体性にあるんですよね。自ら進んでその一部になる。
映画より舞台にハマるタイプの人は、この感覚に堪らなくなってしまうのだと思う。
ところでこちら、先日ライブビューイングで、全国の映画館でも上映していました。
てことは、DVDに当然なるよね。
興味がある人は、是非舞台版の方も見てみて!映画とは違った意味で、実のある一本になってましたよ。
2015/05/29 | 舞台・演劇
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コメント(2件)
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これはホント素晴らしかった。
観に行っていただけてうれしいです。
ライブビューイングのDVDは買いですね。
映画版のブルーレイ豪華版には、劇中劇の「銀河鉄道の夜」と「肖像画」がそのまま入るらしいので予約しちゃいました。
しかしこれ観て思ったのは、本広監督は映像を封じて舞台やった方が良いって事でした。
本人的には余計なお世話だろうけど(笑
ノラネコさんへ
こちらにもありがとうございます。
ノラネコさんすっかりモノノフ状態ですね(笑)
舞台版のDVDまで買われるんですか!すごい。
あの映画を見ちゃうと、どうしても舞台が見たくなりますよね。
それにしても、良い裏切り方をしてくれてそれがまた良かった!
本広監督は、あのナレーションが入らないだけで大分違うんですよね。
もっと映像で語ることを考えて欲しいなー。
平田オリザ脚本がやっぱり良かったのかもしれません。