『間奏曲はパリで』 小粋でキュート
正直この作品は、タイトルやイメージから、本来私が見たいと思うようなタイプのものとはちょっと違うんですよね。ただ、イザベル・ユペールとジャン=ピエール・ダルッサンが出ているというそれだけで見たことを決めた作品。
本当は、こちらより『ラブバトル』を先に見たかったのだけれど、サービスデイの曜日の都合でこれを先に見る羽目になった。キツいタイプのフランス映画が好きな私が、こちらを優先してしまうのかぁ…などと思いながら、何となく気乗りがしない気持ちで居たのだけれど。
これが開けてみたら、ピリッと小粋な気持ちのいい快作で、大満足!
まさに、『カフェ・ド・フロール』や『ラブバトル』のようなキツイフランス映画の間に見るべき、可愛らしい間奏曲のような作品だったのですよ。
まず初めに言っておきたいのは、イザベル・ユペールはお洒落フランス人女優だから好きなのではなくて、“変わった役どころばかりやる、変なフランス人の役が似合う人”だから好きなんですよね。美人というより、変人ぽい風体もいい感じ。
それなのにこの作品では、優しくて物腰の柔らかい、可愛らしい大人を演じていて。田舎の主婦でありながら、どこか筋の通った素敵な等身大の女性。
“少女”のようなイメージをずっと保ち続ける女性っているじゃないですか。“大人の女性”である時期がなくて、それをふっ飛ばして“可愛らしいお婆ちゃん”になりそうな人。
私もそれが理想で、昔からそんな風になりたかった。
ところが実際の私はそうはなれず、普通に“大人の女性”になり、今じゃ立派な“オバサン“だけど…。
イザベル・ユペールはそうじゃない。いい加減いい年なのに、いつまでもどこか少女のようなイメージがあるんですね。
だから、20代の若者と恋愛に落ちそうな雰囲気になるけれど、それに全く無理がない。
この先、ネタバレ
彼女は、頑固な旦那(牧場経営)を放ったらかして、パリまで気まぐれな旅に出てしまう。ただし、ちょっぴり日常から離れて、ちょっとした冒険がしたかっただけなんですよね。決して恋のチャンスを探そうとか、何か相手を見つけて「よーし、浮気をしよう!」という気持ちではなく。
結果的には、そんな風に見えてしまうけれど。
たった3日間のアバンチュールをして、もう一度“いつもの自分”に戻ってくる彼女。ちょっとした浮気には違いないけれど、こんなつまらないことが、人生を豊かにすることもあるんですよね。すごく気持ちが分かる。謙虚で可愛らしいなとさえ思ってしまった。
旦那(ジャン=ピエール・ダルッサン)の方は、心配して追ってくるけれど、彼がまたすごくキュート。「浮気を発見ー!」などと怒り狂ったり口論をけしかけることはなく、ショックを受けて、ただ息子にだけ会って自宅に帰ってくる。息子は、彼は彼で好きなことをしていて、親の牧場を継ぐ訳でもなく、パリでサーカスのような大道芸人をしている。本当は時々文句を言いたくなる気持ちもあるのに、ただ一言「もっと家に帰ってこいよ」なんて言うだけ。
妻が帰って来た後、どう接していいか分からず夜ふけに、雌の牛の話になぞらえて自分の話をするシーンなんて、すごく気が利いてて好き。ジャン=ピエール・ダルッサンは、見た目が可愛いオジサンなので得をしているのだけど、結局この夫婦は、どちらも本当に可愛らしくて、何よりずっと仲が良くて、愛し合っていて素敵なんですよね。
どんな夫婦にも、多かれ少なかれ、こうした危機は訪れるはず。でもそれを、こんなふうに上手に乗り越えていきたいな。こんなチャーミーグリーンな二人になりたいなあ…とつくづく胸が温かくなる、とっても良い映画でした。
関連記事
-
-
『キャロル』 女性の心理はファッションに表れる
行間こそ映像力!…と、最近思う。 物語の合間に立ち昇ってくる何か。 こ...
記事を読む
-
-
『三人の結婚』 恋愛はいつだって修羅場ゲーム
恋愛の駆け引きはゲームに見せかけて、真剣勝負。 ドワイヨンの恋愛活劇は...
記事を読む
-
-
『アタラント号』 夫婦は何かを乗り越えるべし
「映画史上の傑作」特集にて、ようやく鑑賞が叶った作品。何故見たかったか...
記事を読む
-
-
『コシュ・バ・コシュ 恋はロープウェイに乗って』 ロープウェイ映画の傑作
バフティヤル・フドイナザーロフの、『少年、機関車に乗る』に続いての長編...
記事を読む
-
-
『ラブバトル』 男と女はいつも泥沼
齢70歳にして、これですか〜… いやあ、フランス人はさすがだな! 私の...
記事を読む
こんばんは。
私も観てきました~
題名から想像できる映画ですが、ユペールが演ずるからこそ味のある「大人の寄り道」なストーリーでしたね。
あの「ピアニスト」を演じた彼女ももうアラシックス(?)
でも、可愛いおば様になって・・・・・。
先日観たDlifeの「裏切りの二重奏」と比較しながら、友人と米仏の不倫のタイプの違いを語り合いました。
私にとってはセーヌ川やオルセー美術館などパリの街並みが素敵で~
鑑賞後のウェスティンホテル・ビクターズのランチも美味でした!
cinema_61さんへ
こんばんは〜♪コメントありがとうございました!
本当、素敵な作品でしたよね。こんなに愛らしいユペール様なんて、なかなかご覧になれない姿でした!
私、今後はもっとこの手の作品見て行こうと思います。
こんなにハッピーな気持ちになれるなんて!
>アラシックス
確かに…。いつも素敵なんですけど、彼女の雰囲気が何とも言えないんですよね。
ソフィー・マルソーみたいな化け物じみた美しさを保つ人も大好きですし、本当フランス映画の女優さんたち、すごくたくましい!
>裏切りの二重奏
こちらは、アメリカのドラマですか。不倫モノはやっぱり楽しいですね〜、ご友人とあれこれ話が出来るなんて何倍も楽しめそうです!
ビクターズのランチ、豪華で羨ましいです!
ああいいなあ、私もフランス料理のランチした〜い♪