『セッション』 Fxxking Tempo!
「人間離れしたドラムテクって、一体どうやれば出来るようになるんだろう。」と常々思っていた。
私は高校時代からバンドをやっていて、ドラムをやっていた経験もあるけれど、せいぜい8ビート〜16ビートぐらいしか叩けない。
実は私の親友は、ジャズドラムを習っていた。彼女は、中学時代からドラムスクールに通い、シンコペーションから始めたという子で、普通に叩き上げで自力で覚えた私なんかとは違い、難しいフィルインなんかを大学一年から叩けたので、これは逃してはいけない才能!と、『生物学』の授業の時にナンパして、そのまま自分のバンドに引き入れ、自分はドラムをあっさりやめた。
という話はさておき。
普通の練習をいくら重ねたところで、ミツバチみたいな素早さのドラミングテクって、どうやっても出来るようになれるとは思えない。それこそ、天才が死にそうなほどしごかれて、なんかの瞬間に急に降りてくるみたいに出来るようになるのかと。
この作品は、その国でも最も優秀な音楽大学の、選り抜きの天才だけが集められる学校のバンドで、そこで超絶ドラムテクを身に付ける…という話だった。
芸術的感性が必要なその他の楽器と違って、ことドラムに関しては、体育会系的な要素が必要になるのは、音楽をやったことがある人なら十分理解出来ることだ。もちろん一番大事なのは、生まれ持った才能であるにしても。
この作品は、天才と言われるような才能の有り余るほどある人物に対して、それを最大限に引き出す教育力…というものを題材にしている。そうしたものが、直接的に才能を潰す可能性についても。
だから、「常人には考えられないようなストレスを与える教育方法のおかげで、生徒が病気になりました」。そんな話だったらつまらないし、それを暴くのが物語のオチだったら、全く面白くないんですけど…と後半には思った私。
しかし、まさかこんなラストを迎えるとは!
よくある娯楽的な物語から逸脱して、人間対人間のワンオンワンの戦い、それこそ殺し合いだった。生徒vs教師、一対一の人間の戦いを描いたシンプルさに驚かされる。
凡百から抜け出ようと這い上がっていく不屈の精神と、最悪の人間性を露悪的に見せつける教育者。
執念でもって、ラストが見えない殺し合いになっていくところも面白い。
ただし、ジャズの“自由な精神”と、“実験性”。そして何よりジャズの“豊穣さ”。
こうしたものは全く感じない今作で、少し寂しい気持ちにもなった。
しかし特筆すべきは、いかにも精神世界を描いたような、暗闇の中でぼうっと浮かび上がるような、照明の使い方。
これらは決して忘れがたく、今後の映画にも大きな影響を与えそうだ、と思った。
2015/04/18 | :音楽・ミュージカル・ダンス アメリカ映画
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コメント(4件)
前の記事: 『カフェ・ド・フロール』 意外な結末
あのTOHOシネマ新宿で観てきました~
見応えありましたね。登場人物も少なく、場所も限られているので低予算・短期間映画だったことがよくわかります。
でも、あの迫力!音楽家(?)として大成するには「才能」「努力」そして「根性」が必要であることを思い知らされました。生まれつきの才能(音感やリズム感)をどうやって伸ばしていくのか・・・・・これはone of themですね。
究極のイジメ・・・目には目を歯には歯を・・・そして乗り越えたところに成功あり!
ラストの「キャラバン」は最高でしたね。
cinema_61さんへ
こんばんは〜♪コメントありがとうございました。
TOHO新宿、早速行かれましたか!
最新のシネコンがド真ん中にできようが、歌舞伎町は相変わらず汚らしい町ですねw!
これ、すごく混んでませんでした?
私もTOHO新宿行ったのですが、すごく混んでて。。でも、一番はドラゴンボールで混んでたのかもしれませんが(笑。
低予算にして研ぎ澄まされた作家性を感じる、実験的精神溢れる作品でしたよね。
>生まれつきの才能(音感やリズム感)をどうやって伸ばしていくのか・・・・・これはone of themですね。
いや本当にその通り。優秀であるとか、精一杯やるとか、過程が大事だとか…本当に、その中で残っていく一握りの才能って大変なことですね。
見てて疲れちゃった私にはダメそうです(爆
ラストの、殺し合いのバトルがかろうじてアンサンブルに変わっていく、あの絶妙さがいいですよね。
おぉ~!とらねこさんはバンドをやられてたんですね!
しかも、ドラムだなんて、なんて男前なんでしょう(笑)
で、その彼女をドラムメンバーにしてご自身はボーカルに転向したのですか?^^
ワタシは楽器が何もできないので尊敬します。
あと、大型バイクも載っていそうな雰囲気ですよね。とらねこさん。
ちなみに、ニーマン君、あの舞台で恥かかされて
“夢破れる”ってことだけは絶対に許せなかったんでしょうね。
あのスパルタ教授に一方的に「合図する!」イッキに立場逆転ですごく爽快でしたよ(笑)
itukaさんへ
こんばんは〜♪コメントありがとうございました。
そうなんです、私は元々高校の頃にドラムから始めたんですが、その後ボーカルが居なくなってしまったので、ボーカスに転向しました。
その後ずっとボーカルだったんですよ。
大型バイクは全然乗ったことないんですよ〜。人の後ろぐらいかな。
ヤンキーの子なんかは、バイクに結構ハマりますよね。
でも私は元ヤンじゃないですからw
ニーマン君、あそこは絶対に負ける訳には行かなかった、という感じですよね!
自分が支配してやる!という。
ラストのあの火花散らすやりとり、あまり見たことないものでしたよね!