『プリデスティネーション』 All you Zombies
SFは楽しい。
あるいは、「SFは楽しい」と感じさせてくれるものこそ、大事にしたいSFだ。
でも、この作品を“SF”の範疇だけで語ることすら、勿体無いことかもしれない。
普通に“プロットの面白さ”だけで勝負出来る作品だと思うから。
“あり得ない物語”について語って、その複雑さをそのままに堪能させ、
最後には分かりやすくストンと腑に落ちるような出来!
つまり、「どんな話だったのか」と誰もが納得出来る、そんな語り口になってるんですね。
これって、ものすごい稀有なことなんじゃないか。
「卵が先か、にわとりが先か」というよくある“一般的なアジェンダ”。これについての物語なんです。
もう、何のこと言ってるんだかサッパリ分からないですね。
私達、“にわとりが先か、卵が先か”問題については、考えるのを放棄してるじゃないですか。
で、これを物語にしたら、SFにしたら、どんな効果が得られるだろうか、って思いついたら、
こんな話になった…っていうもの。
楽しそうでしょ!
今年の暫定No.1。映画好きは絶対見るべし!!
あと、映画好きとしては、好きな映画の要素がたくさん入っているところも面白かったな。
『ライトスタッフ』…かと思えば、『セックスチェック 二度目の性』!なんと!と思ったら『バック・トゥ・ザ・フューチャー』、『ターミネーター』が!?いやいや、『LOOPER』だ!
一番近いのは『LOOPER』ですが、これや『オール・ユー・ニード・イズ・キル』や『オブリビオン』、『エリジウム』みたいに、割と小さな世界で展開するSFなんですが、そういうものが好きな人には多分たまらないと思うな。
もしくは、『ユージュアル・サスペクツ』や『メメント』みたいな、ラストまで来ると全体像が見通せるタイプの、“裏切り”映画とも言えるし。
正直、クライマックス部分のとっくに前からオチが分かってしまうので、中には評価が落ちる人も居るかもしれない。でも私にはそれは全くないですね。
世界観がキッチリしていて、台詞で深みを与えているので、この世界を堪能することが出来るから。
だからオチが分かったところで、面白さが半減したりはしなかったな。
むしろ、分かりやすく作っているからこそ、万人にキッチリ分かるようになっているのだろうし。
何より、サラ・スヌークの怪演ですよ!彼女は本当に凄かったな。
サラ・スヌークは本当にこの役にピッタリで、彼女の容貌を十二分に活かせる役は他には無いかもしれない…というぐらい。この作品で、サラ・スヌークを覚えずに帰る人は居ないだろうな。私は、『ジェサベル』で先に見ていたのに、ファーストシーンはむしろ「デイン・デハーンにそっくりだけど、コイツ誰だろう!?」と思ったぐらいで、あとから“女性“が出てきてサラ・スヌークと判明して、驚いてしまった。(特殊メイクをしています)「ああ〜、ジェサベル!」と驚くので、ここであのオチの半分に気づいてしまったけれど、サラ・スヌークを知らない人はそのまま騙されてしまうよね。
この先、ネタバレ
いやあ、「卵が先か、にわとりが先か」に絡め取られていた。これはむしろミスディレクションで、まさか「めんどり=おんどり=卵」とは!
そうそう、冒頭の“バーテンダー”と“男”の会話で、「にわとりが先か、卵が先か」の問いに、「めんどり!」って答えてましたね。
いやはや、見事な“ウロボロス”映画。
これ、原作の原題は『All you Zombies』なんですね。“Zombies”は、時空の捻れで生じた彼の存在を指している訳で。確かに、時空の捻れがなければ存在出来なかった存在ですもんね。
原作の邦題は『輪廻の蛇』。これだと若干ネタバレになってしまい、ただでさえ読めるオチが余計読めてしまう。『プリデスティネーション』の方が好きだな。ウン。
2015/04/11 | :SF・ファンタジー オーストラリア映画
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まさに「SFは楽しい」と思わせる作品。
自分の中でちょっと今年はSFの当たり年かもしれない。例年はあまり観てないってのもあるかもしれないけど。
暫定1位に同調いたします。
ただ、頭悪いんで1回だけの観賞では堪能しきれなかった部分も・・・
終わってみて「あ!」の気づきをもう一度確かめたくってしょうがない。
imaponさんへ
こんばんは〜♪コメントありがとうございました。
おお!暫定一位に同調ですか!やったあ。
お、SFブームですか。
何故かimaponさん、最近エイリアンシリーズ再見されてますよね♪
ここの挙げた去年の『ルーパー』や、『オール・ユー・ニード・イズ・キル』、その前の年の『オブリビオン』なんかは、私もとっても好きでしたよ。
確かにこれ、一度だけじゃなく何度も楽しめる作品ですよね。
台詞や世界観がしっかりしているところが、たまらないんですよね〜♪
こんばんは。
丁寧な返信をありがとうございます。
早速お言葉に甘え、こちらにもお邪魔いたします(笑)
この作品、本当に面白かったですね。
私はSFに疎いもので「これってありなの!?」と言う新鮮な驚きと共に
“にわとりが先か、卵が先か”については仏教の循環的時間の概念を感じて
妙にしっくりと納得することが出来ました。
オチについては早々に予測出来たものの、
だからと言って面白さが全く損なわれないのが凄いところですね。
スピエリッグ監督は『デイブレイカー』でも独特の世界観に魅了されましたが、
これからの活躍がますます楽しみになりました。
amiさんへ
おはようございます〜♪コメントありがとうございました。
この作品、本当面白かったですよね〜。amiさんもこの作品気に入られたなんて、嬉しいです!
>“にわとりが先か、卵が先か”については仏教の循環的時間の概念を感じて妙にしっくりと納得することが出来ました。
ほお〜、なるほど。そんな考え方があるんですね!
私には全く思いつかない考え方でしたよ^^;
本当、オチがあらかた読めてしまっても、全く面白さを損なわないって素晴らしい。
デイブレイカーは、実は全然覚えてない私です><
も、もう一度見た方がいいんだろか。。。w
『アンデッド』は次に見てみようと思います!
連日、暑すぎですね
バテバテです
DVDにて鑑賞。スクリーンで観たかったんですけど
ご近所シネコンではすぐに終わっちゃって
救済なお話なのかと思いきや、いやはやラストで何をもって
正義なのかと突きつけてきましたね
「きっと、この後、何かが起こってあーなるのかな。だとすると、どんな出来事で変貌するのだろうか?」と
自分勝手に想像、妄想・・・パート2のアイデアを練っています(笑)
確かにオチはなんとなく分かりつつも最後まで楽しめました。
自分も「アンデッド」を探して見てみようっと♪
デイブレイカー・・・覚えてないんすか? ぷぷ
自分も詳細は覚えてないけど、独特の世界観があって
吸血鬼の時代ってところがニヤリとしちゃいます
サイ5150さんへ
こんばんは〜♪コメントありがとうございました。
わーい、見てくれたのね。きっとサイさんは好きだと思ったんですよね。
オチは読めましたかー。おおう!さすがだなあ。
私はかなりラスト近くになるまで分かりませんでしたよ。
デイブレイカーは正直、「世界観はまあまあ悪くないけど、さして…」と思った記憶が。
それほど突出しているように思えなかったんだけど…
アンデッド、まだ見てません。見なくっちゃ。
自分の尻尾を食べ続ける蛇っつうか、尻尾を吐き続ける蛇っつうか、考えれば考えるほど心地の良い混乱を味わえる作品でしたねぇ。
時空の歪みに翻弄される物語でもありながらも、上司がその設計図を全て把握してるっぽい不条理さも好みで。
たおさんへ
こんばんは〜♪コメントありがとうございました。
そう、ウロボロス=自分の尻尾を食べ続ける蛇なんですけど、
「時空の歪み」を気持ちよく図式的に描いた、良いSFでした
変に世界観が大きくなりすぎたものより、PKディックやスタニスワフ・レム的なこんな世界の方が自分は好きで、のめりこんでしまいます。
All you Zombiesー
時空の捻れで生じた彼の存在を指しているという説、なるほどと思いました。この映画を見る前に原作の日本語訳「輪廻の蛇」を穴のあくほど読み込んでからこの映画を見ましたが原作に忠実な部分と映画化するにあたって変更せざるを得なかった点、おもしろさを増すために加えた点などいろいろな観点で楽しませてもらいました。原作自体が短いので書かれていない裏側を頭の中で巡らす時間がとても楽しかったです。それで結局自分なりのAll you Zombiesー
の世界を作り上げてみました。
ご一読頂ければ幸いです。
http://ameblo.jp/1017-zz/entry-12075864257.html
1017zさんへ
こんにちは、初めまして!とらねこです。
コメントありがとうございました。
1017zさんは、この作品の原作に随分ハマられたんですね!
私は映画の方はだいぶ気に入って、2015年のベストにまで入れたのですが、原作は読んでませんでした。
http://www.rezavoircats.com/2015/12/18601
P.K.ディックの『記憶装置』のように、原作が短いと聞いたせいもありますが、やはり原作は面白いですか?
私も読んでみようかなあ。
ブログには早速、後ほどお邪魔させていただきますね。
1017zさん、ブログに遊びに行ったのですが、コメントは書けないようになっているんですね。
(上記のURLは、アメーバの方のみからしか受け付けないという設定になっていました。)
ですので、こちらで失礼させていただきます。
冒頭の始まり出しの部分、この世界にグイと引き込むようでカッコイイですね。思わず映画を思い出しました。
私もますます本が読みたくなりましたよ。