『神々のたそがれ』 泥土と汚物と臓物と
ぐおお!!
グチャグチャの泥土&飛び出る臓物&臭そうな臭気にまみれた映像。
とにかく問答無用に迫力たっぷりで、『フルスタリョフ、車を!』を思い出すような作り。
スコセッシが「とりあえず、何がなんだか分からないが迫力は凄い」と言ったのは、確かにその通りで、
こちらも全く同じ“良く分からないパワー”に満ちている。
今回はさらに広い範囲の現場を、自由にカメラマンが動き、しかも寄りで撮っている。
なんだろう、このド迫力は。鬼気せまる迫力に気圧されるばかり。
絶賛する声が多いけれど、中には批判の声も。
お下劣な部分もあり、グロい部分もあるせいだろうか。
もしくは、神の野蛮さについて行けないせいか…?
いづれにせよ、人を選ぶ作り。
とりあえず、臭そう。
途中で、「いい匂いにしておかないと」みたいな台詞と共に、香水が振りかけられるシーンがいくつかあるのだけれど、
そうしたところで相変わらず臭そう。臭いものに香水ふりかけたら、変な科学式になりそうだ(笑)。
しかし、長回し好きの人は必見!かも。
カメラを意識しすぎて、少々疲れる部分もあるけれど。
この体験は、劇中に入り込んだ感覚を与え、身近に思えるような身体感覚を覚えさせる。
手持ちカメラで劇中世界に入りこんだ感覚、というとすぐ“ドキュメンタリータッチ”という語を使いたくなるけれど、こうしたものからはかけ離れている。
むしろ正反対。
舞台劇に自ら迷い込んだような、ロシアの土臭さを肌で感じるような、五感に近づく“身体感覚”そのもの。
神の泥土と臓物にまみれた憤死の戦いを、自ら体験するかのようである。
神から生まれた人間ということで産み落とされるが、人間のため十字架にかけられたり、救世主として崇められたりはしないドン。
事態を掌握し、問題解決に踏み切ろうとすればするほど、人間の醜悪さが露見する。
一人の独裁者が去ってもまた別の独裁者が現れる、その餌食になる人々も。
泥んこレスリングのような現実との戦い。
うんざりするような戦いは終わらずに、観客も神同様にすり減っているような疲労感に襲われる。
尺が長いため、ずっと続く寄りのカメラが辛い。
神様もつらいけど、観客もつらいよ(笑)
そうそう、「神様はつらい」が原作なのだけれど、実際「神様はつらい」という台詞も3度ほど繰り返されることだし、
イメージフォーラム・フェスティバルで上映された時の元のタイトル『神様はつらい』の方が良かった気がする。
『神々のたそがれ』などという余裕しゃくしゃくの感じからは程遠いし、まるで寅さんみたいで親近感が湧くし(笑)
2015/04/04 | :文芸・歴史・時代物 ロシア映画
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コメント(2件)
前の記事: 『ジェサベル』 本気で怖いホラーは久しぶり
衝撃度半端ありませんでした。
映像体験としては今年暫定1位。近年稀にみる衝撃。
『フルスタリョフ、車を!』も見なきゃいけませんね。
遺作公開を期にどっかでアレクセイ・ゲルマン、特集組むべき。
imaponさんへ
こちらにもありがとうございます♪
こちらも別部門の今年暫定一位だったのですね!
こういう作品が今年の新作というのが、本当に不思議だし、
映画ってすげーなー!と思います。
ロシアって本当に半端ないというか、大地の匂いまでしそうな、大胆さがたまりません。
クラシック音楽も、小説も、映画も、ロシアは本当に凄い!
そうそう、私はアレクセイ・ゲルマンはお恥ずかしながら、ゲルマンと言う名前に騙されて、ずっとドイツ人だと思っておりました(恥)
去年になって初めて見たんですが、特集上映は組まれていないにしろ、あれこれ追いかけたら、意外といろいろ見れたんですよ、去年。