『シェフ 三ツ星フードトラック始めました』キュートでハッピーな飯テロ映画
元気でノリのいい音楽と美味しそうなご飯があるだけで、本能的にググっと惹かれてしまう!冒頭のモンタージュからして、すごくグルーヴィーで勢いがあって、とってもいい感じ。
監督自らの人生を彷彿とさせる
自分にちょっとした転機が訪れ、現在の仕事を辞めざるを得なくなり再出発。そんな物語なのだけれど、これをアイアンマンシリーズのジョン・ファヴローが自ら主演・監督。おかげで、つい彼に重ね合わせて見てしまう。
クラシカルな老舗有名フレンチ店ではやりたいことがやれず、自分の屋台カーを始めちゃう。「ネットの評論家は、とにかく文句ばかりの”hater”」…こんな台詞には、案外本気のシニカルな風刺精神を感じたり。オーナーが自分の料理に口を出し、「誰もが喜ぶ、人気のメニュー」しか出せないとなると、料理人としての腕を一切振るうことが出来ず、個性もその魅力も封印され、手も足も出ない状態になってしまう…。
“料理人”になぞらえてはあるけれども、創造性のある仕事をしつつ、「大衆に媚びなければいけない」映画業界そのものを表現した、まさにジョン・ファヴロー本気の一撃。
いつだって私は、思い切り自分の個性を出して表現する人が好き。この作品はまさに、「娯楽」でありながら、きちんと自分らしい作家性の垣間見える作品にもなっていた。すごく理想的に思える。自分の好きなものが、大衆だって大好きになることはあり得るもの。
下手を打てば大炎上するSNSの世界
twitterに慣れていない状態で発信してしまったおかげで、図らずも大炎上してしまう、カール・キャスパー(ジョン・ファヴロー)。これが最高に面白い。「ネットで大炎上」なんて、しょっちゅう起きているし、twitterは馬鹿発見器、「バカッター」などとも言われているSNSだからこそ、その炎上率も高かったり。そうなのよ、ついつい脊髄反射してしまうのよね、twitterってやつは。私も自慢じゃないけど、意識的にか無意識的にか、いろんな人に喧嘩を売ってしまったこともあったわ…。
リアルに炎上していく様や、「ネット初心者が絶対やっちゃいけないこと」を、次々やらかしていく様がホント〜に可笑しい!ネットの動画なんて言ったら、それこそ一生残っちゃう。
「主人公が人生に失敗し、再出発する一歩を踏み出す」というよくある描写ですら、twitterを始めVINE等が活躍するのも、極めて今ドキ。確かに、炎上している時ってそれこそがチャンスだったりもするよね。つまり、人生の再出発すら上手にSNSが使われている訳で。この辺りが、無理なく描けているのも楽しい。
キャストが豪華
トニー・スターク(『アイアンマン』)が元旦那として出演(笑)!ロバート・ダウニーJr.は大好きなので、あのトンチンカンな役柄がまた嬉しい。ビヨンセ似のソフィア・ベルガラさんが元妻、スカちゃん(ブラック・ウィドウ)が現在の恋人だなんて、憎いモテモテ男。
ダスティン・ホフマンは嫌な上司で、オリバー・プラットが敵の評論家。困ったときに助けてくれる二番手がジョン・レグイザモと、心得た感じのキャスティング。
さらに、ラストのスッパリした終わり方も気持ちよくて、ハッピー感満載だった。そう、ラストでダラダラと長くやられるのって、退屈しかしないんですよね。ハリウッドのアクションなんて、近年どんどん長くしつこくなってるでしょ。綺麗に締めることが出来ず、長々とやってしまうのは下手な料理人!?この仕上げの見事さこそ、私は「いよっ、一流!」と思ってしまったのでした。
おまけ CUBANOS(キューバ式サンドイッチ)のレシピ
チラシに載ってたキューバ式サンドイッチの作り方です。
材料(2個分)
約15cmのバゲット またはドッグパン 2個
ローストポーク(作りやすい分量)
豚肩ロースブロック肉 1本(約400g) にんにくの薄切り 一片
ローズマリー、タイム 各2〜3本 スライスチーズ 2枚
塩、粗挽き胡椒 各小さじ1 ロースハム 4枚
オリーブオイル 大2 きゅうりのピクルスの薄切り 4枚
バター、フレンチマスタード 各適量
作り方
1)ローストポークを作る。豚肉はナイフで数箇所を開け、半分に切ったローズマリーとタイム、にんにくを刺して、塩、胡椒、オリーブオイルを順にからめる。オーブン用シートを敷いた天板に載せ、180度のオーブンで30〜40分焼く。粗熱を取り、5mmほどの薄切りにする。
2)パンは厚みを半分にして切り口にマスタードソースを薄く塗り、それぞれにロースハム2枚、1のローストポーク2枚、チーズ1枚、ピクルス2枚づつを順にはさむ。
3)フライパンにバターを熱して溶かし、2を並べてフライ返しや鍋のふたで軽く押さえながらこんがりと焼く。
焼き色がついたら裏返して同様に焼く。
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とらねこさん、こんばんは。
この映画面白かった~。サンドも美味しそうだったし♪
ジョン・ファブローっていいキャラしてるよね。
ところで『~グレイ』はいまいちなんですね?
私も観るならR-18、ボカシなしでと思っているんだけど、
ボカシてなくてもイマイチなのね、なんじゃそりゃ(笑)。
『ナインハーフ』は私も名作だと思うな~。
あのレベルには全然達してないわけですね? なるほど、観るか迷うな。。
真紅さんへ
こんばんは〜♪コメントありがとうございました。
私もこれ大好きでしたよ〜!飯が美味そうで、音楽がいい映画って最高!
そうそう、グレイはイマイチでした。中途半端で、欲求不満が溜まって終わり。
『ナインハーフ』好きと聞いて嬉しいです!(爆)私、あれめっちゃ興奮しましたよ…子供の頃見て!(爆)
>アイアンマンシリーズのジョン・ファヴローが自ら主演・監督。
哀生龍にとってジョン・ファヴローは、まず俳優、次に「エルフ ~サンタの国からやってきた~」「ザスーラ」の監督。
だから、この作品のほうが「アイアンマン」よりもしっくり来ているように感じてしまいました。
>創造性のある仕事をしつつ、「大衆に媚びなければいけない」映画業界そのものを表現した、まさにジョン・ファヴロー本気の一撃。
俳優も監督もやり業界の裏も表も知る彼だからこそ、分かること描けることですよね。
皮肉に満ちた辛口な部分も、刺々しくなくソフトで楽しく見られるのは、彼ならではでしょうか?
哀生龍さんへ
こんばんは〜♪コメントありがとうございました。
>哀生龍にとってジョン・ファヴローは、まず俳優、次に「エルフ ~サンタの国からやってきた~」「ザスーラ」の監督
おお、こういう意見がさすがの哀生龍さんですね!私もザスーラは好きですが、エルフも見なくちゃ。
アイアンマンよりしっくり来る、との意見なるほどです。
>皮肉に満ちた辛口な部分も、刺々しくなくソフトで楽しく見られるのは、彼ならではでしょうか?
本当に!面白いし、爽やかな良い作品ですね。ちょっとモテ過ぎだし、上手く行き過ぎるんですけど、それも含めて気持よく見れましたし。
『バードマン』との比較は、特にアメコミから一歩離れた立場での作品であるということ、そこで自分の意見の主張の仕方、SNSの用い方から、さらに派生して評論家気取りの連中に消費される点、評論家に物申したい点など、
随分共通点を感じてしまいました。
ただし、この作品がこうした気持ちの良い佳作である一方で、バードマンのイニャリトゥの方は上手くやっていて、オスカーの作品賞から何から賞を争奪していったこと…
総合して考えると、ファブローがちょっぴり不憫にも思ってしまいました。