『FORMA』 女同士の心の奥に潜む不穏さ
初監督作品にして、ベルリン国際映画祭にて国際批評家連盟賞を受賞し、現在目下国際映画祭で引っ張りだこの坂本あゆみ監督。
固定カメラの長回しによる、ドキュメンタリーテイストなリアルさがじわじわ心に侵食する。
誰の目線であるのかに従って、現実に“揺らぎ”が出るところなど、現代の『羅生門』(もしくは太宰治の『藪の中』)的でもある。
女同士の友情における、表面状綺麗に取り繕いながら、どこか奇妙にスレ違っていく感情の渦や、
心地の悪い緊張感を、いい意味で気持ち悪く描けていて、天晴。
女性同士であれば、誰もが経験したことのある、相手を信頼しないままの友情。
悪意を押し殺したが故の“友情”、相手より優位に立ったが故の親切心…。
不気味だけれど力作。ラスト近くまで引っ張った緊張感はなかなかのもの。
女同士の視線の違いを描いたかと思えば、突如登場する「この人誰!?」的存在と、その彼の視線の巻き戻し再生。
ただ、彼が要なくても成立するような気がしないでもないのだけれど(笑)。ストーカー的彼の存在が、余計不穏さを増していて、あのラストまで一気に見れることが出来た、とも言えるか。
まあ、彼の存在は「あれを発見する」ためだけにあったかと思うのだけれど…。
しかし、あのシーンで一気に映画が“安く”なってしまった印象。
その後の予想通りな展開も、個人的にはあまり評価出来ず。
ラストの20分長回しに驚きがあれば、結構評価出来たのにナ…。
’13年、日本
監督・原案:坂本あゆみ
プロデューサー:谷中史幸
脚本:仁志原了
撮影:山田真也
キャスト:松岡恵望子(保坂由香里)、梅野渚(金城綾子)、ノゾエ征爾(長田修)、光石研(金城利隆)他
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コメント(1件)
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『FORMA』をユーロスペース2で観て、物凄く良く出来てるけど好き嫌いは別だふじき★★★
五つ星評価で【★★★観客に対する見切り】
長回しとロング映像を多用。
これが痛いくらい効いている。
映画が分かっている。上手い。
やはり、この長回しとロングが嫌いな …