消費文明に喝!北欧の一人テロ 『365日のシンプルライフ』
気づけば私の周りには、いつもモノでいっぱい囲まれている。
これらのモノ全てが必要かと言えば、全くそんなことは無いのに。
主人公ペトリ(=監督)のお祖母ちゃんが言うように、モノが私たちを表す訳じゃないのに。
死ぬ時に私たちは、モノを持って行けないのに。
“お金”と全く同じように。
私たちは“モノ”の概念に縛られすぎていて、モノが無ければ行きていけない、と思ってる。
「こんなにいいモノを持っている俺はイケてる」。
こんま自分が嫌だと、フラれた男が一発奮起したのは、4つのルール。
1. 全てのモノを倉庫に預ける
2. 一日に1個だけ持っていく
3. 一年間続ける
4. 一年間、何も買わない
こんなシンプルな生活、私もちょっとやってみたくなった。
このモノに溢れかえった文明の中で、こんなルールを思いついただけで凄いと思った。
でも、別の観点から見れば、モノで溢れかえる物質天国(=原題)に疑問を抱かない我々にとっては、まるで一人テロみたいなもんだ。
アキ・カウリスマキにどこか通じる、フィンランド人らしいシンプルさ。
こんな視点。なんか憧れちゃうな。
途中で彼女候補とデート。やったね、ペトリ!
その後も彼女に何度も会ってデートを重ねるのに、彼女の顔は秘密のまま生活続行。
ラストの倉庫のシーンでようやく彼女に逢える。
この生活を続けた彼の唯一のご褒美。
この映画を見続けた我ら観客の唯一のご褒美も、“彼女の顔を拝むこと”だった。
一風変わった映画だけれど、画の切り取り方も相当好き。
思い切りが良くて、テンポも良くて。
北欧映画は良いものばかりでホクホクだね。
(おっ、上手いこと言っちゃったか☆)
’13年、フィンランド
原題:Tavarataivas
監督・脚本・主演:ペトリ・ルーッカイネン
製作:アンッシ・ペルッタラ
撮影:イエッセ・ヨキネン
編集:アルッティ・ショーグレーン
音楽:ティモ・ラッシー
2014/10/04 | :ドキュメンタリー・実在人物 フィンランド映画
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とらねこさん☆うまいこと言うねぇ~(笑)
実際、北欧人だからこその発想とも言える作品ね。
そして、実際は日本や欧米の人に比べると、ずっとずっとシンプルで簡素で合理的な生活を、もう普段からしている北欧の人がやるというのが、また面白い。
日本人の私から見たら、ほぼ何もないからねー
北欧の人の生活って。
それは「世界で最も幸福と感じる人が多い北欧」ではどんな生活をしているのかということに通じると思うの。
2か月もある夏休みに彼らはただ家か別荘のベランダでお日様を浴びながら読書するだけ。
それが幸せなんだから、人間の本来あるべき姿、本当の価値とは何か、を考えさせられるよね☆
ノルウェーまだ〜むさんへ
こんにちは〜♪コメントありがとうございました。
台風で雨凄いですね!うちの方、この後11時ぐらいがもっとすごいみたいですけど…。
なるほど。北欧での暮らしを経験したことがあるノルさんだからこそ、この監督の視点に深く共感し、納得が行くのでしょうね!
ノルさんが仰るように、日本人よりもシンプルな暮らしをしている人達だからこそ、「こんなにたくさんの物が無くても大丈夫だ」ということを知っている。“だからこそ思いつくことが出来たアイディア”、ということなのかな…。
ふと思ったのは、北欧って家具が有名だったりもして、それこそ世界的に見ても人気だったりしますよね。一方、家具は古いものを使うという、単なる“消費”に終わらないという一面もありますよね。そんな辺りからも消費行動について考えるヒントになったりするのでしょうか。
夏休みに読書だけしている、って素敵ですね!それ以前に、何より“2ヶ月も夏休みがある”ということの方が羨ましかったりもするけれど…♪
それこそ、自殺率の高い国日本は見習うべきなのでは。なんちゃって。
こんばんは。
相性の悪いオーディトリウムでポスターを見て、凄く興味をそそられたんだけどパスしてました。
とらねこさんのを読んで、やっぱり見たくなり、UPLINKでやっていたので観てきました。面白かった~。
焦らされての顔出し。アウトドア好きな彼女、可愛かったですね。主人公の大好きなお婆ちゃんに心無しか似ているように思えて、やられた感強かったです。
やっぱり北欧映画は面白い。
imaponさんへ
こんばんは〜♪コメントありがとうございました!
おや、imaponさんはオーディトリウムはイマイチの相性だったのですか。
そっか、じゃあimaponさんはこの作品がオーディ最後かな。
私はちなみに、すぐ次に挙げた『FORMA』が最後のオーディでした。
オーディ、改装後はお笑いの劇場になっちゃうんだとか…行かなくなりそうです。
こちら、imaponさんもご覧になったんですね!なんか嬉しいな。
不思議なテイストの作品ですけど、全然退屈せず最後まで見入ってしまいますよね。
なるほど!主人公が選んだ最愛の彼女、お祖母ちゃんに似てたのですね。
確かに言われてみればそうかも。
ふんわかした、ナチュラル系の優しそうな人でしたね!
この作品が公開されたのは昨年の秋ごろなんですね。
北欧のひとって元がシンプル路線なので
そこからさらにペトリくんのような発想が生まれることに
実際、ワタシの部屋を今見渡したら無駄なものばかり^^;
最低限の暮らしをするための100個を選べと言われたら
布団とPCだけは真っ先に必要だな。
ちなみにこの作品の女性バージョンが観てみたいです(笑)
itukaさんへ
こんばんは〜♪コメントありがとうございました。
我が家も、相棒さんがガジェット好きで、モノ、モノ、モノだらけ…。
正直、モノをあまり持つのが好きでない私には、次々買う気持ちが分かりません。
こういうのって元々の親のしつけで生活習慣が違うんでしょうね。
昔、自分が持っているモノはと言うと、本やCDぐらいでした。
結婚した際に、本はほとんど処分しちゃった。
そして離婚した時に、CDも全部データ化して捨てました。
今持ってるモノはほとんど相棒さんのモノばかりです。
と言っても、服は人より多いかな…。
捨てればサッパリしそうだな〜(笑)
女の人バージョンと言っても、私の場合だと他とちょっと違うかも…。
こんばんは。コメントをありがとうございました^^
おばあちゃんの「人生はモノでできていない。」と言う言葉。
本当にその通りなのに、人って所有物で
幸福度を測ろうとするところってありますよね。
“断捨離”や”片付け”がブームの様に扱われている
昨今の風潮に違和感を覚えていたのですが、
これはとても気持ちのいい作品でした。
最後に映ったペトリくんのシンプルな部屋には、
これから可愛い彼女の為のモノが徐々に増えて行くのでしょうが、
それはそれで凄く幸せなことですよね^^
amiさんへ
こんにちは〜♪コメントありがとうございました。
監督のおばあちゃん、本当に素敵な人で可愛らしい人でしたよね。
大事なことを彼女から教わったのだろう、このおばあちゃんに影響されたおかげでこの人はこの映画のアイディアを思いついたのだろうなあ、と思いました。
ペトリ君のお部屋、彼女の物がだんだん増えていくのかな。
本当にその通りですね。
本当に素直なドキュメンタリーで、自分に起きたことや気持ちまで等身大に描いていて、アッパレでした。