ウッディ・アレン出演のロマンチックコメディ『ジゴロ・イン・ニューヨーク』
ウッディ・アレン出演&ジョン・タトゥーロ監督&脚本の、大人のロマンチックコメディ。アレン作とつい較べてしまうと、諷刺やブラックジョークが足りず、テンポも遅い。何より足りないのは知的さ。面白い部分もあれど、物足りなさを感じてしまう。いや、途中のジゴロのくだりなんかは結構面白かったのだけれど。
“最も古い職業”である娼婦の“男版”。つまりジゴロとして、ジョン・タトゥーロ演じるフィオラヴァンテを金持ちの友人に引き合わせることから、ポン引き稼業をスタートさせるマレー(ウッディ・アレン)。セックス相手に不足している奥様方は結構ニューヨークには居るもので、なかなかに繁盛する。フィオラヴァンテには、相手が求めているものがセックスではないと見て取ると、孤独な女にそっと優しくマッサージをする、紳士な側面もある。むしろ、こうした女の心の機微がよく分かる年齢の彼だからこそ、ジゴロとして繁盛したのだと納得がゆく、良いエピソードだ。
もう男は要らないと長年頑なに生きてきた、女の孤独。心の底では「誰かに触れられたかった」、その気持ちは分かる気がする。男ならいくつになっても年齢が関係ない部分もあるから、その点羨ましいけれど、女だとどうすることも出来ず放って置かれたまま。フィオラヴァンテも、アヴィガル(ヴァネッサ・パラディ)の身体ではなく心に触れたことで彼女に惹かれる。その気持ちも伝わる。
ユダヤ教信者達のくだりは、ユーモアが行き過ぎる気がして、正直あまりノレなかったけれど、後から、『フィル・ザ・ヴォイド』を見て考えが変わった。どっぷりとユダヤ教社会について描いた作品を見て、逆にこの映画の描いたユダヤ社会はそのままだったのだと知る。コメディっぽい訳でも大げさな訳でもなかったのね…。
ところで、「最も古い職業は娼婦」という台詞は、『ガープの世界』に出てくるのだけれど、これって良くあるフレーズなのかな。
’13年、アメリカ
原題:Fading Gigolo
監督・脚本:ジョン・タトゥーロ
撮影:マルコ・ボテコルボ
キャスト:ジョン・タトゥーロ(フィオラヴァンテ)、ウッディ・アレン(マレー)、バネッサ・パラディ(アヴィガル)、リーヴ・シュレイバー(ドヴィ)、シャロン・ストーン(Dr.パーカー)、ソフィア・ベルガラ(セリマ)、ボブ・バラバン(弁護士ソル)
2014/08/25 | :コメディ・ラブコメ等 アメリカ映画
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