スコットランド発のミュージカル『サンシャイン 歌声が響く街』
“スコットランド発のミュージカル”とそれだけ聞いて、「きっと自分の好みだろう」と思う程度に単純な私は、その程度に単純に楽しめた。
何より音楽が全体的にとても良くて、まるでインド映画のように5分~10分毎には音楽がかかる。ロックではなくポップス寄りの耳障りの良い音楽なのだけれど、メロディラインの見事さによって、音楽好きにはたまらない上質なもの。ダンスというより、“動き”に演出を置いていて、映画の1シーンの中で自然に見える様に置かれている。たとえば冒頭、弾むようなリズムに合わせて、兵士達が上下に揺れることで“戦場での緊張感”を表していたり、歩きながら右に左に動いたり、スレ違う人を交わしていく…といったもの。喫茶店で喧嘩をしていた、カップルになりそうな二人が、その危機を乗り超えて付き合い始めたり。こうしたことも、台詞と一連のシークエンスで描かれるより、音楽を通した方がずっとテンポが早い。そしてラストの大団円における、群舞のモブが見事。
ただストーリーはと言えば、もっとパワフルにグイグイと牽引していく、ハリウッドのミュージカルに慣れている人には、ここで描かれたような身の回りで普通に起こりそうな物語に、物足りなさを感じるかも。普遍的で、普通に生きている普通の人々が、誰しも出会うような小さな恋と挫折であったり、長い結婚を誇るオシドリ夫婦に起こった不倫の物語、等々。当たり前の人々の当たり前を描いた、日常を重ねた群像劇。きっとハリウッドであれば、こうした物語をミュージカルの題材に選ばないだろうな…と思った。逆にこうしたところが、スコットランドならではの味わいであるとも思えたので、私には満足出来たけれど。
P.S.…ラストの歌、『天使の分け前』と同じ歌でしたねえ。
それから、『思秋期』のピーター・ミュランに、久しぶりに見たジェイソン・フレミング!前者は歌はそれほどでも…だけれど、後者の歌には楽しめた♪個性的な歌い方するのね(笑)
ただ、父親の病気で夫婦間の危機を乗り越える…というよくあるやり方には、ちょっとガッカリ。正直この二流っぽさのせいで、ミュージカルに甘めな私も、この作品の評価がグ~ンと下がってしまった。
…ところで、スコットランドがそろそろ独立する、という噂を聞いたのだけれど、どうなんだろう?
’13年、イギリス
原題:Sunshine on Leith
監督:デクスター・フレッチャー
製作:アラベラ・ペイジ・クロフト、キアラン・パーカー他
製作総指揮:ナイジェル・グリーン、トレバー・グリーン
脚本:スティーブン・グリーンホーン
撮影:ジョージ・リッチモンド
音楽:ポール・イングリッシュビー
キャスト:ピーター・ミュラン(ロブ)、ジェーン・ホロックス(ジーン)、ジョージ・マッケイ(デイヴィー)、アントニア・トーマス(イヴォンヌ)、フレイア・メーバー(リズ)、ケビン・ガスリー(アリー)、ジェイソン・フレミング(ハリー)、ポール・ブラニガン
2014/08/01 | :音楽・ミュージカル・ダンス イギリス映画
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コメント(5件)
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とらねこさん☆
意外な気もするけど、とらねこさんは楽しめたのねー?
私はやっぱりテーマが身近すぎるのがちょっと物足りなく感じちゃった派かな。
そもそもミュージカルが苦手な人だったわ、私。
冒頭の戦場の歌のところがすごく良かったね☆
ノルウェーまだ〜むさんへ
こんばんは〜♪コメントありがとうございました。
イギリス映画特有のコンパクトさ、ハリウッド慣れした人にはキツいかもしれませんよね〜。
ミュージカル映画、この間まとめてご覧になっていたから、好きなのかなーと思いましたが、違ったんですね。
私はミュージカル映画に限らず、音楽関連の映画やダンス映画だとか、インド映画まで好きだったりするんですよね〜。
と言いつつ、思いきり貶した作品も時々あるんですけどね…。
『サンシャイン 歌声が響く街』 (2013) / イギリス
原題: Sunshine on Leith
監督: デクスター・フレッチャー
出演: ピーター・ミュラン 、ジェーン・ホロックス 、ジョージ・マッケイ 、アントニア・トーマス 、フレイア・メー…
そうそう。いきなり病気になるのはかなり使い古されたテだよね。
もしやスコットランド人にとっては “I’m Gonna Be (500 Miles)”はフラッグソングなのかもと。割と前の歌だしね。。
独立はしないでしょう。というかイングランドがさせないんじゃないですか。たぶん。
rose_chocolatさんへ
こんばんは〜♪コメントありがとうございました。
病気になって夫婦問題クリア、はちょっと安易過ぎる手でしたね。
I’m Gonna Beはカブっちゃいましたが、相手がケン・ローチでもあるので、ベタベタな選曲という訳ではないのでしょうけどネっ★
スコットランド独立の件、英国ポンドを使えるようになるかならないかで、大分情勢が変わってくるのかもしれませんね。
★スコットランド独立に「ノー」 英著名人が反対表明、住民投票まで1カ月余り – MSN産経ニュース http://sankei.jp.msn.com/world/news/140809/erp14080900380003-n1.htm