『WALKABOUT 美しき冒険旅行』『狩人の夜』@新橋文化センター
WALKABOUT 美しき冒険旅行
何とおっそろしいモンタージュ。素晴らしい!忘れられない映画になりそう。何故ここにこのショットが挟まれる!?と、全く目が離せませんでした。思わず二度見してしまった。切替制でない映画館の良さ!途中から入って途中で出るところ。それから、二度見たかったら二度見ることも出来るという。しかもフィルムでこんなに綺麗なんだ!いやあ〜素晴らしかったッス。
一家自殺しようとした父親の手を逃れた姉と弟が、兄弟二人で砂漠を彷徨う。野生動物達のショットが挟まれ、オーストラリアのワイルドな自然が手付かずのまま描かれる。制服を着たままの二人が、砂漠にいかにも似つかわしくなく、心に強烈に焼き付けられる。ジリジリと刺すような灼けつく日差し。
途中の少女の全裸での水泳シーンが何ともエロチックで眩しい。野生動物達をむやみやたらに殺す白人達の姿、重ねられた白骨の中に佇む、アボリジニの少年。そこからの彼女への求婚ダンス。エロスとタナトスがダイナミックに交差する。燃えさかる父親の死、果てしない砂漠、アボリジニの青年の死。文明と未開、強者と弱者。こういうのを処女作で撮ることが出来てしまう監督も居るんだ…。
’71年、イギリス
原題:Walkabout
監督・撮影:ニコラス・ローグ
原作:ジェームズ・バンス・マーシャル
製作:サイ・リトビノフ
音楽:ジョン・バリー
キャスト:ジェニー・アガター(Girl)、リュシアン・ジョン(Brother)、デビッド・ガルピリル(Aborigine)、ジョン・メイロン(Father)
狩人の夜
こちらもまた一風変わったサスペンス作品。シネフィルの友人が、「これが一番好き」などと教えてくれたので、それは行かなければ!と行ってきた。
まず展開が読めない。ありふれた修辞技法を裏切る展開の連続。ハラハラドキドキ、最後まで見ることが出来た。期待を裏切らない面白さではある。ただ、ストーリー自体はそれほど珍しいものでもなく、むしろよくあるサスペンス、と言ってしまえば確かにその通りではある。
殺人犯が自分の親を殺すまでの展開、そこから兄弟二人で逃げる展開。そう考えると、いやいやこんなのなかなか無いよなと。
で、こちらもまた少年と少女の兄弟のサバイバル冒険とも言える。何という二本立てなんだ!新橋文化センターさんてば!
こちらでも、野生動物のモンタージュが差し挟まれていた。「強者と弱者」を思わせるモンタージュとも言える。
そして、ロバート・ミッチャムの怪演怖い!
’55年、アメリカ
原題:the Night of the Hunter
監督:チャールズ・ロートン
脚本:ジェームズ・アギー
原作:デイビス・グラブ
製作:ポール・グレゴリー
撮影:スタンリー・コルテス
音楽:ウォルター・シューマン
キャスト:ロバート・ミッチャム(Preacher_Harry_Powell)、シェリー・ウィンタース(Willa_Harper)、リリアン・ギッシュ(Rachel_Cooper)、イブリン・バーデン(Icey_Spoon)、ピーター・グレイブス(Ben_Harper)、ビリー・チャピン(John)、サリー・ジェーン・ブルース他
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文化の2本、いいですね。とらねこさんに鑑賞いただけて嬉しいです。
私は6年前シネマヴェーラで観ましたが「美しき冒険旅行」はまさに忘れられない映画になってます。もう一度観たくなってきました。制服がだんだん汚れて行くサバイバル。
ボウイの「地球に落ちてきた男」の監督さんですよね。
2本ともゲイブルホーク配給。
ところで新橋文化も閉館だそうで・・・
普段、ロマンの方ばっかで未踏なので一度行っておかなければ・・・
良質な配給会社、フィルム上映館がどんどん減って行く。時代の流れとは言え寂しいもんです。
imaponさんへ
こんばんは〜♪コメントありがとうございました。
この2本立て、素晴らしく芳醇でした!
しかもフィルムで見れて良かった…。
ニコラス・ローグ、初めて見たんです。デビッド・ボウイの『地球に落ちてきた男』も面白そうですね。機会があればこちらも見たいなあ。
ロマンの方も、3本立てだと逆に時間が作れなくて、ついつい腰が重くなりがちでした。2本立てだったらもっと行っただろうなあ…なんて思ってしまったりします。
本当、ここの映画館が無くなるだなんて、ショックが物凄く大きかったです。あまりしょっちゅう行く映画館ではなかったのに、無くなることを惜しむのもなんだかなあ…とも思うのですが、いつもチョイスが素晴らしく、twitterでいつも楽しみにしていただけに、悲しくて…。
丸の内ルーブルも無くなっちゃいましたねえ。