アサイヤスの最高傑作 『感傷的な運命』@女優たちのフランス映画史特集
驚いた。DVD/VHS化がされていない、しかも未公開のこの作品が、こんなに傑作だなんて!
シネフィルの噂話で「この作品がアサイヤスの最高傑作」と耳に挟み、来てみた。確かに素晴らしい出来。これを見ているのと見ていないのとでは、アサイヤスに対する印象自体が違うものになるかもしれない。ハスミンが「ある監督について語るなら、その監督の作品全部を見ろ」と言ったけれど、あながち間違っていないのかも…などと思ってしまいそうになる。
内容はとてもシンプルなもの。とある一組の夫婦の人生を描いた作品。重厚な物語だ。長い時間軸をひたすらに追う。それだけである。しかし、映画好きには分かってもらえると思うのだが、その時間軸が長いものであればあるほど、ポイントを絞るのが難しくなる。彼らの人生のうちで何が大事なものであったか。そうでない繰り返しの日常感を漂わせながら、それと相反する、彼らの人生で何が残滓としてたゆたうか。これを描かねばならないのだ。うーん、どうも分かりづらい文ですみません。
長い人生、どこが浮き沈みで、幸せな時間は彼らのそれぞれにとってどこであったか。そして、どこから夫婦の気持ちがスレ違っていったのか…。その哀しさも喜びも、人生最後の思いも。
たとえば優れた文学を読むと、「人生にはこれしか要らない。」と思うことがある。この作品はまさにそうした、かけがえの無い映画だった。でも、年を取ってから見ることをお勧めします。若い内には分からない類の感情かもしれないので…。
P.S…イザベル・ユペールの演技が素晴らしい!
’00年、フランス
原題:Les Destinées sentimentales
監督:オリヴィエ・アサイヤス
脚本:オリヴィエ・アサイヤス、ジャック・フィエスキ
撮影:エリック・ゴーティエ
出演:シャルル・ベルリング、イザベル・ユペール、エマニュエル・ベアール、オリヴィエ・ペリエ、ドミニク・レイモン、ジュリー・ドパルデュー他
2014/07/23 | :文芸・歴史・時代物 フランス映画
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