『リオ・ダス・モルテス』『ホワイティ』『聖なるパン助に注意』@ファスビンダー映画祭
リオ・ダス・モルテス
ライナー・ヴェルナー・ファスビンダー映画祭がとうとう始まった。殺す気かっ!というようなスケジュールで、一度しか上映がないものも多く、どれもこれも見たいけれど、体力も金も追いつかないよ…というジレンマ。でも、会員料金1本800円という金額はとってもありがたい。たった2週間というところがいかにもオーディトリウムっぽいけれど、せめて1ヶ月、いや2ヶ月ぐらい、もっとゆっくり時間があればたくさん見たのになあ…。
初日だからということもあったかと思うけれど、『リオ・ダス・モルテス』と『ホワイティ』は、DVDでもなかなか手に入らない上に、めったに掛けらない作品だったそうだ。満員御礼の超・大混雑!満席立ち見&通路で座布団すら完売だったそうで、友人の一人などは見ることも出来ず帰った人が居た。
この作品は、「ファスビンダーにしてはこんな作品もあるんだ」と思った、若い男女の物語。ペルーに移住しようと奔走する男二人(ミヒャエル・ケーニヒとギュンター・カウフマン)。それに、その彼女(ハンナ・シグラ)が微妙な距離感で関わってくる。女は、男のワガママに振り回されて迷惑そうだが、男が好きなので彼の手前、あまり文句は言い過ぎないようにしている。行方をくらました彼氏と、その友人にも置いてけぼりにされる女。ラストショット、銃を構えるが撃たずに終わる。
ハンナ・シグラの登場シーンがなんかイイ。この1シーンを見て、今日ガーターベルトで来れば良かった!と後悔した。ファスビンダー映画っていつもガーターベルトが出てくるよね。ハンナ・シグラは、『マリア・ブラウンの結婚』でいい面構えの存在感ある彼女。ここではとっても若い。
’70年、ドイツ
原題:Rio das Mortes
監督・脚本:ライナー・ヴェルナー・ファスビンダー
撮影:ディートリッヒ・ローマン
出演:ハンナ・シグラ、ミヒャエル・ケーニヒ、ギュンター・カウフマン
ホワイティ
なんと、ファスビンダーの西部劇風ドラマで、アメリカ西部を舞台にしている。ホワイティ(ギュンター・カウフマン)はまるでタランティーノのジャンゴそのもの!タランティーノはこの作品から影響を受けていたのかも?!
18世紀アメリカ西部の小さな町で権威あるニコルソン家。家主の旦那(ロン・ランデル)に、その若き妻キャサリン(カトリン・シャーケ)。息子フランク(ウーリー・ロメル)はホモセクシャル、デイヴィッド(ハリー・ベア)は障がいを負っている。そこで働く召使のホワイティとその母(エレーヌ・ベイカー)。次第に一家の病理が、渦巻く醜い感情の一幕が浮かび上がってくる。狡猾な夫人の目論む犯罪すら。ファスビンダーの世界では、いつも娼婦(ハンナ・シグラ)は自由な存在。社会の外から物を考え、倫理や常識からも自由に生きる存在としてホワイティにも影響を与える。
ところで、『リオ・ダス・モルテス』にもここにも主演しているウーリー・ロメル、思わず「エッ、ウーリー・ロメルが出てるの!?」と驚いて友人に耳打ち。友人は「若い頃のウーリー・ロメル、イケメンですよね」いやいや、だってこの人ホラーの人でしょ、なんて思ってしまった恥ずかしいわたくし…。実は元々ファスビンダー・ファミリーで、こんなに何作も出ていたのか…。しかし、どれを見てもいつも一癖ありそうで、何となく不気味さのある面白い個性派俳優でした。ウン、しかも若い頃は意外にもイケメンでしたよね(…?)。
’70年、ドイツ
原題:Whity
監督・脚本:ライナー・ヴェルナー・ファスビンダー
撮影:ミヒャエル・バルハウス
出演:ギュンター・カウフマン、ハンナ・シグラ、ロン・ランデル、カトリン・シャーケ、ウーリー・ロメル、ハリー・ベア
聖なるパン助に注意
こんなものまで映画にしてしまうんだ!映画製作が一向に進まない、という物語。クルーもキャストも到着しているのに、監督も不在のままフィルムも届いていない。何とかそれでやりくりしようとする。だがどうも拉致があかず、そればかりか始まるのは人間関係の揉めごと、小競り合い…。とうとうフィルムが届くが、その頃にはもう彼らの間柄は嫌な雰囲気。で、これ実は『ホワイティ』の現場の状態そのものだったらしい。セットもホワイティのもの、とのこと。
にしても、ファスビンダーの時代はあんな感じの撮影風景だったんだろうか。絵コンテは書かず説明のみ。で、この説明がすごかった。ここはロングショットで撮る、誰がこう入って来て、これこれこういう会話をし、ここで引きの画になる、観客には「◯◯が◯◯であることを分からせる」。そんな説明だけでやるなら、カメラの人は大変そう。でも撮影面白そう!そしてすごく全ての画が自覚的で、やっぱり知的なのだなあ。…って当たり前か?たとえ物語の中とは言え、何となくファスビンダーの演出の破片を見れた気がして、なんだか面白かった。
’70年、ドイツ
原題:Warnung vor einer heiligen Nutte
監督・脚本:ライナー・ヴェルナー・ファスビンダー
撮影:ミヒャエル・バルハウス
出演:ルー・カステル、エディ・コンスタンティーヌ他
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