キム・ギドク史上一番の変態作!『メビウス』@カリテコレクション2014
キム・ギドク最新作かつ最大の問題作『メビウス』を、カリテコレクション2014にて、一足早く鑑賞してきました~!9時からの回1回だけの予定が、大人気につき(?)9:30の回も急遽増設。終電間際にも関わらずトークショーつきの上映。いやはや、圧巻の新作でした。2014年12月公開、是非とも見逃すな~!
げにこの世はチン棒様にて、男も女も振り回される。一生これ無しに生きられぬ生き物なのか…はぁ…。全部見終わった後は、思わずウンザリ&ため息の数々。“性欲”!!こんなつまんないものに人生振り回されるのが男であり、そして女でもある…。今回もまた、徹底してギドク節炸裂&ギドク式変態ワールド。アルモドバルにとっての『私が生きる肌』、ギドクではこの作品と言えるかも。変態映画はどうしてこうも自分の好みに合ってしまうのだろう。…
今回何が嬉しかったかって、キム・ギドクと何度もタッグを組んだ、チョ・ジェヒョンが出ているところ!彼の出てるギドク映画にはハズレが全然無いもの。台詞一切無しで進んで行くのは、ギドク映画には珍しいことではなく、『うつせみ』や『魚と寝る女』もそうだった。また、性器に刃物を突き立てるのは『魚と寝る女』、『弓』もそう。そして今回は、女性器ではなくいよいよ男性器。“全ての元凶”感が大きいこちらの方!我々が産まれて来たのもコイツのおかげ。もっと高尚なはずの、高い位置についている頭の中身も、そして我々の幸せですら、肉体の一部であるこの棒1つによって、いとも簡単に壊されてしまうのは、何故なのだろう。…この先、ネタバレで語ります。*****************
色と欲にまみれた現世。唯心論的に言うなら、“欲界(欲望に満ちた領域)”、もしくは“色界(欲望はなくなったが、まだ物質的な領域の残る領域)”に住む我々。ラスト、この色と欲のドロドロの果てを見た青年は、それらメビウスの輪の中から脱し、“無色界(むしきかい)” – 物質的な要素が無くなった純粋に精神的な領域)の向こう側からこちらを見る。カメラは青年の視線を真っ直ぐこちら向きに捉え、思わずハッとするショットで終わる。そうした彼の姿が、途中現実の世界と折り重なるよう、映されるショットもある。母親が家から離れ呆然と通りを歩く、其処で祈りを無心に捧げる後ろ姿の男と、ラストでの青年、仏の頭に無心に祈る青年の姿が重なるショット。不可思議な輪環構造になっている。
それから、妻と不倫相手の女が、一人の役者が演じているところが面白い。男性器切断という恐ろしい行為をする前に、一瞬阿修羅のように妻がユラっと見せる、この一瞬の顔が実に修羅のようで怖い(しかもこの一瞬の表情を、作品のチラシにまで使っている)!裏切られて絶望に駆られ、人として逸脱するかのような恐ろしい行為をする妻も、もう一人の罪深き女(彼女もまた壮絶!)も、一人の女優が演じている。このため、女のそれぞれのキャラクター性を超えて、より女という性そのものを一個のとして捉えやすい構造になっていたと思う。素晴らしいと思った。
面白い点を挙げ連ねたら、数限りなくある。全然退屈しないのです。むしろ、面白ポイント多すぎ。不具になってしまった息子を父親が心配し、肉体的快感を得るためのGoogle検索(by Mac)である(“全身が性感帯”!!)とか、タワシで痛みを与えイクとか…(試してみる人も居たりして…!?)。
相変わらずのキム・ギドク。壮絶すぎ。何度目かのギドク黄金期が、まさに来ているとしか思えない凄さでした。
いや…大好きです!
’13年、韓国
原題:Moebius
監督・脚本:キム・ギドク
キャスト:チョ・ジェヒョン、Eun-woo Lee、Young-ju Seo
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コメント(7件)
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とらねこさん、こんにちは!
見ましたよー(*´▽`*)
黄金期!まさに♪
ファンとしては、本当に嬉しい限りです!
とらねこさんが、随分前に、本作を見られていたのは覚えていたけれど、映画を見終わるまで・・と感想見るのは我慢していたのです。
いやー、ほんと凄かった。
さすがというか、こんな映画、よく作ったな?と、感心してしまいましたよ。
これからもギドク監督の作る映画、楽しみですね!!
TB出来なかったっぽいです。
http://latifa.blog10.fc2.com/blog-entry-1235.html
映画『メビウス』あらすじ&ネタバレ考察・ストーリー解説
2013年、『嘆きのピエタ』でヴェネチア国際映画祭金獅子賞を受賞した韓国の鬼才キム・ギドクの最新作。セリフは一切なく、登場人物の感情表現のみで物語が構成されている。 あらすじ …
昨日観てきたわこれ。確かに変態(笑)
警察署で、刑事に説明するときに父がいきなり息子にしたこと(ネタばれになるので語れん。。)、あれあんなことわざわざ人前でしないでしょ? ああいうところは作ってきたなーと思うんですよね。屈辱的なことを敢えて人に伝えるとか。あるいはそれも父から息子への恨み返しだったのかもなーなんて。
まあでも人間ここまで性欲に執着するもんなんだなと。そして女が男に恨み返ししてるのもなんか笑えましたよ。
この映画、好きか嫌いかと聞かれたら、どっちでもないけどね。
latifaさんへ
コメントありがとうございました〜!って、12月10日!
す、す、すいません!!今頃気づいてしまって。
何故かスパムに入ってしまったらしいのだけれど、そのおかげで拒否設定にさせられてしまいました。
本当〜っに申し訳ありません。
スパムに入るべきは、むしろこの記事の方なのに…。
うちのブログものすごく一時期重くなってしまったので、スパム対策を徹底的にやりすぎて、結構大勢を拒否っていたようです。
12月はちょっと忙しかったのと、スパムコメントをちゃんと読んでなかったのとが、いけなかったようです。本当にごめんなさい!
で、こちらの作品ですけど、見てくれて嬉しかった〜!
せっかく見てすぐにコメントをくださったのに、本当にごめんなさい!
こちらにも^^
いやいや、私が、せっかちなのが悪かったわー。
あれ?コメント反映されない?おかしいな・・・
他の記事にコメントしておこう・・っていうのを2回繰り返したのがイカンかった。
スパムのような、紛らわしい行動をしちゃって・・。
ところで、私のメルアド!!
今気がついたのですが、一部間違っていたことに今気がつきました(^^ゞ
直しましたー。すいません、戻って来ちゃったとのことで、色々ご迷惑おかけしました。
rose_chococlatさんへ
こんにちは〜!コメントありがとうございました。
私のベストの作品を見てくださり、ありがとうございました。
よく考えてみたらこの作品、人に薦めていい映画じゃないですね。
ベストのところの一言にも、「気軽にチ●コの冒険に出かけてみて!」なんて書いてあったのを、反省して書き変えました↓
「男根で観客の両頬を、ビシビシピタピタと往復ビンタするような映画なので、変態の方だけこの大冒険に出かけてください。マトモな人はダメよ〜ダメダメ。」
に変えました。
ご迷惑をおかけしました。以降、ギドク作品をお勧めするのは一部の人だけにします。
latifaさんへ
こちらにもありがとうございます♪
メールアドレスが間違っていたんですね。おそらく存在しないメールアドレスだったために、スパム扱いになってしまったと思われます^^;
何度も書き込んだことで、さらに閲覧拒否になってしまったようです。
でも、早めに誤解が解けて良かったです〜。ホッ。
仲の良い人のブログだったり、こちらが閲覧していても、2、3ヶ月はコメントしないことが続く私なので、1ヶ月でお話できて良かったですよ〜。