『戦争のない20日間』『灰色の狼』@ソヴィエト・フィルム・クラシックス
戦争のない20日間
最近、東京はアレクセイ・ゲルマンづいていて、『道中の点検』『神様はつらい』『フルスタリョフ、車を!』とこの作品の4つを鑑賞しようと思えば出来た。ところがフルスタリョフとこの作品だけという、半分しか見れなかったのは悔しいけど、まあ次の機会を狙うことにしよう。
『フルスタリョフ、車を!』は途方もなくパワフルな怪作で、作品の持つ驚くべき底知れ無さに圧倒されてしまった。それに比べるとこちらの『戦争のない20日間』は、割と普通に良く出来た映画。
大戦中の20日間の休暇という、心休まるはずの日々。ところがこの機に妻との離婚問題に立ち返らなければいけない。戦争中もまるで地続きのように日常は続いていて、その日常は勝手に時間が過ぎていく。今度は逆に、そこに戻っていかなければならないという訳か…。
一方、ある女性との出会いもあった。つかの間の安らぎを得る。
スターリングラードの後…。成し遂げた感はあるんだろうか?いずれにせよ、もう一度そこへ戻っていくのは辛そうだ。そう思ううちに、砲撃の出迎えが。こうした砲撃をまたかいくぐる日々。自分には想像もつかない。
’76年、ソ連
原題:ДВАДЦАТЬ ДНЕЙ БЕЗ ВОЙНЫ
監督:アレクセイ・ゲルマン
原作・脚本:コンスタンチン・シーモノフ
撮影:ワレーリー・フェドーソフ
音楽:V・ラヴロフ
キャスト:ユーリー・ニクーリン(ロパーチン)、リュドミーラ・グルチェンコ(ニーナ)、アレクセイ・ペトレンコ(空軍大佐)他
灰色の狼
カザフスタンが独立する前のソヴィエト連邦時代の映画。カザフスタンの人達はどこか日本人ぽいというか、アジア人に似てるよなあ…なんて思っていたけれど、やはりこの映画を見ていてもそう思う。チンギス・ハーンを祖とする遊牧民だからなのか。
狼の子を拾ってきて育てようとする遊牧民の子、クルマシ。叔父アハングルはそれに反対する。一方彼は村の領主から羊百頭を盗み、隠し持っていた。…
撮影がすごくいい。冒頭のシーンからして、鷹が狩りをする姿が映し出されたり、狼たちが羊の群れを実際に襲うシーンなど、今だったら動物愛護団体が反対して、絶対撮影出来ないようなシーンがたくさんある。カメラもよくこうしたシーンを大きく寄せで撮ることが出来るなあと思う。フィルムも褪色が進みほぼ白黒に見えたりする部分も一箇所あったり、右端の5分の1ぐらいが色が褪色していたりもしたけれど。でも映像自体がとても良く撮れていて驚いてしまった。ラスト、自然の厳しさを強調するところもカザフの遊牧民ならではの思想なのかもしれない。
’73年、ソ連
原題:ЛЮТЫЙ
監督:トロムシ・オケーエフ
原作:ムフタル・アウェーゾフ
脚本:アンドレイ・ミハルコフ=コンチャロフスキー、エドゥアルド・トロピーニン
撮影:カドィルジャン・クィドィラリエフ
音楽:ドゥンチェンバイ・ボドバーエフ
キャスト:カムバル・ワリエフ(クルマシ)、シュイメンクル・チョクモロフ(アハングル)、アリムジャン・ジヤンゴロゾワ(おばあさん)
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