誰も未だ見ぬ大作! 『ホドロフスキーのDUNE』
う~ん、これはヤバイ!何しろ、「1つのドキュメンタリーを見た」というよりも、「脳内に繰り広げられる1本の映画を楽しんだ」感がゴキゲン過ぎる。しかも、映画と同時に楽しめるメイキング付き。それが、完成された映画でなくても、いや、未完成の映画だからこそ、まだ見ぬ興奮が醒めやらないという。
作る前の構想からして、宇宙のように無限大に膨張していく制作費。“もし自分が制作費を出す側だったら”と考えると、聞いているだけでオッソろしい。でももし“自分が作る側だったら”と考えるなら…それはなんてワクワクする、素晴らしい夢なのだろう!きっと武者震いが止まらないだろうな。
そんな中、「もしこれが完成されていたら」と想像してみる…。うん、ホドロフスキー爺ちゃんは、いかにもカリスマ性のある好々爺。彼の映画への信念、それはホドロフスキーのDVDBoxを6万円も出して買った観客の自分としては、もちろんワクワクドキドキが止まらない。でも、ランニングタイムが「12時間は続く」なんて聞くと…。「それ、ハリウッドじゃどう考えても無理だよね…?」と思ってしまう、たかだか観客の癖に、夢だけで純粋になれない自分が居た。それが我ながら、ちょっと寂しかったりして。
それまでの全てのシーンで、笑顔で夢について滔々と語る、キラキラした目のホドロフスキー。彼が突如、「こんな金なんか!こんなものなんかのせいで!」と金を握りしめて、カメラ目線で怒りを露わにするシーンがある。あの怒りは、悲しいかな一番の本音だったんだな。それでも、生前のH.R.ギーガーや、レア・セドゥの大叔父であるミシェル・セドゥをはじめ、多くの人が一緒に夢を見、敗れた、作られる事のなかったホドロフスキー版『DUNE』…。本当はデビッド・リンチの『デューン 砂の惑星』が大好きな私も、ホドロフスキーの未完の大作を、やはり夢見てしまうのでした。それは、テリー・ギリアムの『ロスト・イン・ラ・マンチャ』なんかとはまるで違う地表に連れて行ってくれるものであった…。
P.S.…全然関係ないんだけど、『オンリー・ゴッド』をホドロフスキーに捧げているニコラス・ウィンディング・レフン。彼も脳内ホドロフスキーDUNEを楽しんだ一人だそうだ。…で、これは余計なお世話だけれど、ライアン・ゴズリング風のイケメン仕草、“斜め45度に顔を傾けたまま、カメラ目線で喋る”癖が沁みついていて、ちょっと笑ってしまった。
’13年、アメリカ
原題:Hodorowsky’s Dune
監督:フランク・パビッチ
製作:フランク・パビッチ、ステファン・スカーラータ他
製作総指揮:ドナルド・ローゼンフェルト
共同製作:ミシェル・セドゥー
撮影:デビッド・カバロ
音楽:カート・シュテンツェル
キャスト:アレハンドロ・ホドロフスキー、ミシェル・セドゥー、H・R・ギーガー、クリス・フォス、ブロンティス・ホドロフスキー、リチャード・スタンリー、デバン・ファラシ、ドリュー・マクウィーニー、ゲイリー・カーツ、ニコラス・ウィンディング・レフン、ダン・オバノン
2014/06/25 | :ドキュメンタリー・実在人物 アメリカ映画
関連記事
-
-
『ジャクソン・ハイツ』 ワイズマン流“街と人”社会学研究
去年の東京国際映画祭でも評判の高かった、フレデリック・ワイズマンの3時...
記事を読む
-
-
『AMY エイミー』 今世紀一番ロックだったひと
エイミー・ワインハウスの名前は正直言って聞いたことがある程度で、特にフ...
記事を読む
-
-
『極私的エロス 恋歌1974』 40年前の日本女性の逞しさに惚れる
『ゆきゆきて、神軍』を撮った原一男監督作品。シネマヴェーラの「フィクシ...
記事を読む
-
-
20年来の愛を超えた告白 ツァイ・ミンリャン最新作 『あの日の午後』
何なんだろう、この愛は。最新作がこんな愛剥き出しの告白とは。驚き呆れ果...
記事を読む
-
-
ジャファール・パナヒ 『タクシー』 現実か否か?
東京フィルメックス映画祭にて鑑賞。 『チャドルと生きる』、『オフサイド...
記事を読む
コメント(8件)
前の記事: 『300 帝国の進撃』闘いながらの☓☓にグッと来た…!
次の記事: 『マザー、サン』 @惜別の35mmフィルム特集
とらねこさん、BOX持ってんのね。
純粋に夢を追う爺ィ、ホドちゃんのかっこ良さに不覚にも感動してしまった。
それで「ホーリー・マウンテン」を見返してみたんですが、「監督にだけ、問題があった」という言葉があらためて実感しました。
未完でこそ意味がある作品のようでもあります。
あの分厚いストーリーボード集は欲しいでしょう。
imaponさんへ
こんばんは〜♪コメントありがとうございました。
ですです〜!私、DVDはほとんど持ってない人なんですけれど、これは清水の舞台から飛び降りてついつい買ってしまいました!
「監督だけ問題」…悲しい一言ですけれど、残念ながらこの作品を通して見ると、その台詞分かる気がしてしまう…。というのも、まっ、ハリウッド基準ですけれどね。
あのストーリーボードはかなりあれだけでお腹いっぱいな気持ちになれそうです…。ハリウッドのどこの制作会社にもあるという分厚いストーリーボード…。夢の破片ですね。
【TIFF_2013】『ホドロフスキーのDUNE』 (2013) / アメリカ
原題: Jodorowsky's Dune
監督: フランク・パヴィッチ
出演: アレハンドロ・ホドロフスキー 、ミシェル・セイドゥー 、ニコラス・ウィンディング・レフン 、クリス・フォス…
去年のTIFFに監督さんが見えてて、彼の話がほんとに面白かった。
ストーリーボードのこととかも話してくれました。何でも世界に3冊しかなく、どうやらその1冊が日本にあるんじゃないかという噂まで!
持ち主さんは大事に持ってるんだろうなと思います。
ホドさんは全く詳しくない私なんだけど、何だかすっかりこれは大好きだよ。
rose_chocolatさんへ
こんばんは〜♪コメントありがとうございました。
いいな〜。これ、TIFFの前売り始まってすぐに売り切れてましたよね〜。私は前売り開始日の2時間遅れでチケット取ろうとしたら、すでに売り切れてました…。ホドロフスキー人気を舐めてました。
文芸坐のトークショーイベントの時は来なかったし、貴重だったなあと思います。
ところでストーリーボードって、映画の中にあった、分厚い絵コンテやら何やら全てが書かれた本のことかと思いました。ハリウッドの制作会社のどこにも置いてあるという…。それとは別のことなんですね?
ヒュートラ有楽町の物販コーナーにも分厚い絵コンテ集が置いてあったけれど、あれとは違うんですね。
ハリウッド映画では監督自らウサギを殺したりしないからなあ、
『ホドロフスキーのDUNE』をHTC有楽町1で観て、ホドロフスキー親方おもしろだふじき★★★★
五つ星評価で【★★★★予告が誇大広告でないってのが凄い】
ホドロフスキー監督の作られなかった映画『DUNE』のスタッフやキャストとして名前が挙がってる面々が凄い。 …
ふじき78さんへ
おはようございます〜。コメントありがとうございました。
ホドロフスキーは『エル・トポ』で、空手でウサギを叩き殺していたらしいですよ。