『ポンペイ』 遺跡を思い出しながら見るといろいろ倍増!
ポンペイ遺跡には行ったことあるんだけれど、ここがまあ、もう感激の素晴らしい遺跡だった。数ある遺跡の中でも、ここほど火山が起こった直後そのままの姿で残されているのも珍しいらしい。火山灰がかかって、そのためまるでタイムスリップでもしたかのように、良い状態での保存を可能にしてしまったという。イタリア周遊旅行の中でも、私にはここが一番印象深い場所の1つだった。
もがき苦しむ人々の遺骨をそのままの姿で見れるばかりか、子供を庇う母、金銀を握りしめた人、首輪に繋がれた犬も居たりする。さらには当時使われていた絵が未だに綺麗に残っている。これがまた後で説明するけれど傑作。中でも一番私が感激してしまったのは、抱き合ったまま死んだ男女の姿で…なんてロマンチックなんだろうと思わず泣きそうになった。案外好きなのよね〜根がロマンチストなもんだから…(ポンペイが映画化されると聞いた時、ここがメインになるだろうことはすでに想像出来た)。
ただだだっ広い遺跡を見ているだけで、人の想像力を思いきり掻き立て、それだけでも燃える人は多いと思う。私もそのクチ。ここの遺跡はゆっくり時間をかけて、時々当時の人々や文化に思いを馳せながら見たかった。時々妄想にふけったりしながら…。本編でもオープンエアーの外の広間が、何度も映されていたけれど(人々が集う憩いの場みたいな場所。後にここで夜のお勤めの奴隷が売り買いされてもしていた)、あそこなんかは実際には綺麗さっぱり何も無いところ。ああこんなにも人が居る!なんて思ったりした。文字が発達していなかったため、当時の人々に関する文献が何一つ残っていなかったらしい。当時の人々はどんな暮らしをしていたんだろう。遺跡を見るたびついワクワクしてしまう人達は居るだろうけれど、人々のそんな思いを最も掻き立てる場所、それがこの遺跡かもしれない。
映画の足りない部分
ただ、ポンペイ遺跡に行った人ならきっと、この映画の足りない部分にどうしても気づいてしまうと思う。何故なら、ポンペイ遺跡にはとても印象深いものが2つあるのに、この2つを全く描かないまま、ないがしろにされてしまっているから。
1つは浴場。これは入り口から入って割とすぐのところにあり、遺跡の中でも状態もいいし、何より規模が大きい。何も無いダイニングルームや商品のトレード場より、風呂場はいかにも元ある形を想像しやすかった。ポンペイの人達は風呂が好きだったそうで、何度も入ったそうだ。『テルマエ・ロマエ』を見た時に真っ先に思い描いたのもここの遺跡の風呂場。ローマには実際残っていないためもあるかもしれない。
それからもう1つは娼館。ポンペイの人はかなり文明的に堕落していたらしい。娼館がとにかくすごい。先ほど文字が発明されていなかったと言ったけれど、代わりに絵が残っていて、まず、娼館の入り口のところに男根のマークがある。これが何を示すかは一目瞭然と言うわけだ。ちなみに、部屋の入口にも中で何をするか、絵で示している。1つは男女の絡み、それからもう一つの部屋の前には男同士の絡み。それからまた別の部屋には人間と動物の絡み、と言った具合。壮絶でしょ…。(ちなみにこの場、時と場合によっては案内されないこともあるらしい。お子さん連れの場合であれば教育に悪いし、中には怒り出す人も居るらしいし。)さらに、ここの娼館に辿り着くずっと手前に、道の上にも男根マークがある。これは娼館のある場所を、矢印で示しているらしい。男根の形の矢印で…。こっちの方角ですよと、その形で教えているという訳…。
ちなみに、娼館についてはもっともっと詳しくブログを書いている人が居たので、こちらの方を参照してみて。
といったわけなので、ポンペイ遺跡と来たら、エロ部分を抜きにして語られてしまうのは、私としては納得がいかないんですよネ。娼館はたとえやんわりとでも描写があって然るべきだし(奴隷は売られていたけれどそこだけ)、そうでないならせめてお風呂の描写ぐらいはあってもいいのに。「弱冠テルマエ・ロマエってた~」と日本人なら喜んだだろうな。ちなみに浴場は、「今建設中」とのことで映されなかったのでした。やっぱり裸を映さないで済ませるためかな。そんなにPG指定が怖いか!?
今回のこの物語では、メインの肉付け部分は“古代ローマに欠かせない”、『グラディエーター』、『スパルタカス』もかくやの剣闘士のパートと、ロマンチックな恋愛パート。仰向けにデーンと横たわったこの人の遺骨を思わせた。下の写真を見ると誰のことか分かりますよね。そう、アティカス!“背中を見せずに死んでいった剣闘士”、これから想像をたくましくしてあの物語があるのだろうな、と。「自由人として死ぬ!」という台詞がいいじゃないですか。ちなみに、この時代のポンペイは、市民と奴隷の比率が6:4だったらしい。
恋愛パートでは例の男女の抱き合う姿のクライマックスを予想させつつ、「おっ、身分の差を入れてきたな!」「とことん盛り上げる気だなッ!」という感じ。で、なるほど“童貞と処女”のまま抱き合って死ぬ二人、…うん、純愛だネッ!なるほど、ソイツぁロマンチックだぞ!
’14年、アメリカ
原題:Pompeii
監督:ポール・W・S・アンダーソン
製作:ジェレミー・ボルト、ポール・W・S・アンダーソン他
製作総指揮:マーティン・モスコウィック、ピーター・シュレッセル他
脚本:ジャネット・スコット・バチェラー、リー・バチェラー他
撮影:グレン・マクファーソン
音楽:クリントン・ショーター
キャスト:キット・ハリントン(マイロ)、キャリー=アン・モス(アウレリア)、エミリー・ブラウニング(カッシア)、アドウェール・アキノエ=アグバエ(アティカス)、ジェシカ・ルーカス(アリアドネ)、ジャレッド・ハリス(セヴェルス)、キーファー・サザーランド
2014/06/12 | :文芸・歴史・時代物 アメリカ映画
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お~、本物のポンペイ遺跡に旅行されたのですね。すごい!
火山灰は保存に著しくいいというのは聞いたことあります。
ポンペイの娼館行ってみたいわー(笑)
本作品でそこのエロ部分を一切カットしたのは監督の妻の目が光っていたからでしょうかね~^^;
とらねこさん☆
やっぱりそこですよねー?
我が家は思春期の娘と幼稚園の息子連れでしたので、当然パスでした。
うわー、気になる。
それでもポンペイは相当に印象に残る場所でしたね。
文字が無くて、どうやってパンやさんやワイン売りなど成立したのでしょう・・・??
そんなわけで私もポンペイを観に行きたいと思いつつ、映画としてどうかなー?と思案中なのでした。
itukaさんへ
こんばんは〜♪コメントありがとうございました。
もう全然映画そっちのけで遺跡のこと語っちゃいましたー。
昔はこういう記事ばっかりだったんですけど、最近はあんまりやってませんでした。
ポンペイの娼館、行ってみたいですよね〜w
現代文明もビックリの変態っぷり!
エロシーン全然無くて物足りなかったです〜。
本当、この作品は珍しく監督の奥さんが出て来ないものね。
ノルウェーまだ〜むさんへ
こんばんは〜♪コメントありがとうございました。
お!ノルさんも以前行かれたんですね!で、その時は娼館はパスかあ。ですよね!これは子供には刺激が強すぎるものw
外国で子供ほったらかしにするわけには行きませんもんね^^;
文字なくても、言葉が無かった訳じゃないですからね、物々交換なら出来るのでは?
ですよね!ポンペイ遺跡って本当、忘れられないものがありますよね。
私、元々遺跡好きなんですけど、それにしてもここは燃えました!
映画も結構良く出来てるし、内容的にも面白かったですよ〜。
エロ部分が物足りないんですが、それ以外はちゃんと面白いです!