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『マザー、サン』 @惜別の35mmフィルム特集

2014-05-31_0148一枚の絵画のような一作。

グニャリと歪んだ独特の映像に、感激したのは個人的な体験で言わせてもらえば、『ストーン クリミアの亡霊』が初めて。どうしてこの歪んだ映像にあそこまで心を奪われるのかは、自分でも良く分からない。ただただ、とても美しい。そこに集合的無意識を見るかのよう。

病的な一瞬という感じは無くて、ほんのりと霊的なものが舞い降りて来たという感じ。「絵のように止まっている」カメラ、と言うならそれは違う。時が止まったかのように自分の呼吸すら止めて見るといい。固定した画面で撮りながら、そよそよと風が動くその姿、微かに動く花のそよぎに、そして草や雲のたゆたう姿に、優しげな風を感じるはず。

そして、ほんの少しづつカメラを動かすその微細な動作に、静かに画の中に入り込んでいくような、吸い取られるような力を感じる。そして、異常に気持ちがいい…。来た来た、ソクーロフ・タイム!

もし母の死に様を見とる映画があるなら、これほど美しいものはない。ベッドの上に横たわる母を介護するでなく、恋人のように抱えて彼女を抱き、日の当たるベンチへ連れて行く。風がそよぎ草花の香る草原へと運び、自分の思い出を語る息子。

難しいものは何一つ無く、難解さよりも優しさに溢れている映画だった。母への愛と喪失の悲しみを描くなら、ここまでシンプルで力強いものになるのだと、改めてソクーロフに惚れ直した。必見!

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’97年、ドイツ、ロシア
原題:Mutter und Sohn
監督:アレクサンドル・ソクーロフ
脚本:ユーリイ・アラボフ
エグゼクティブプロデューサー:カトラン・スクルーサー、マーティン・ヘイグマン他
製作:トマス・クフス
撮影:アレクセイ・ヒョードロフ
音楽:ミシェル・グリンカ他
キャスト:ガドラン・ゲイヤー(Mother)、アレクセイ・アナニシノフ(Son)

 

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