『みつばちの大地』 考えもしなかった、みつばちの重要性
アインシュタインによれば、みつばちが滅びると4年後に人類も絶滅するらしい。何故なら、みつばちが花の受粉の8割を行っているから。彼らが居なくなったら世界は花も木も失ってしまう。つまりは食糧問題へと発展する。ところがみつばちはここ15年程の間に、世界中の各地で死に始めている。映画はこの問題の原因を探っていく。アメリカ、スイス、ドイツ、オーストラリア、中国など世界の養蜂家を4年の時間をかけて丁寧に追い、みつばちの生態を体系的に調べあげる。
みつばちのブンブンと唸る羽音が、そのまま金の鳴る音に聞こえるというアメリカの養蜂家。「10倍その規模を大きくした、今の自分の養蜂技術を見たら、自分の父親は怒りに震えここから立ち去るだろう。」と言う。「お前は、みつばちと人間との友好的な関係を失ってしまった、というだろう。」
問題は何処にあるのか。結論から先に言えば、それはラスト間際において提示されるのだが、単純に農薬散布ということでは無いらしい。種の交配を人工的に行ったり養蜂技術が進むに連れて、つまりは人の手が入ることにより、野生であったみつばちが弱体化し病気になりやすくなってしまう。全体の20%ものみつばちが減ってしまう。
最新のハイスピ-ド撮影を使った映像技術がとても素晴らしい。みつばちの姿を間近で見るかのよう。みつばち研究家の中村純教授曰く、交尾の映像などは普通に考えて、見ることが出来るとは思っていないものだったらしい。そう言えば、シロアリのドキュメンタリーで『バグズ・ワ-ルド』という映画があった。この作品ではアリの生態系を、蟻達の王国が目の前に現れたかと思えるほど、まるごと捉えていた。こちらの作品ではそうしたネイチャー・ドキュメンタリーとは違って、映像を堪能するタイプのものではなかった。
それと蛇足だが、監督の話やナレ-ション等の一部分において、吹替混じりになっていたこと。これ個人的に少々残念だった。まるでNHKのようで…。
’12年、ドイツ、オ−ストリア、スイス
原題:More Than Honey
監督・脚本:マークス・イムホーフ
製作:トーマス・クーフス、ヘルムート・グラッサー他
撮影:ヨーク・イェシェル、アッティラ・ボア
音楽:ペーター・シェーラー
ナレーター:ロベルト・フンガー・ビューラー
2014/06/08 | :ドキュメンタリー・実在人物 ドイツ映画
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