『ディス/コネクト』 ネットの闇と現代人の孤独
想像以上に面白くて大満足!まさかこんなに良く出来た作品とは思っていなかった。ヘンリー・アレックス・ル-ビン監督は、『マーダーボール』が処女作。実はこれは大好きなドキュメンタリ-だったけれど、今回は7年ぶりの2作目、しかも初の劇映画ということで、全く期待していなかった。にも関わらずこの出来!この監督さん、今後要注目かもしれない。
シネフィルの友人に、「この作品て『V/H/S〜』みたいな作品?」と聞かれて、「ハハハいやいやまさか、こちら全くホラーでは無いですし…」と答えて初めて気がついたのだけれど、確かにこのポスタ-イメ-ジでは、誤解する人が居るのも分かる気がした。要は、“ある一部のタイプの映画”を想起させるんですよネ。たとえホラーとは思わなくとも。実際開けてみれば、こんなにも完成度の高い素晴らしい映画なのになのに!これでは劇場にはお客さんはあまり入らないかもしれない。この手の作品て、DVD化されれば見る人がドッと増えるけれど、そうなって初めて「へえ、意外と面白いな、これ」となるパタ-ンになりそう。だとすれば残念でたまらない!
“現代のインタ-ネットと人間を取り巻く社会”を、これほどまでに鋭く、かつ面白く描いた作品て、ありそうでこれまで無かったかもしれない。古くはそれこそ『リリイ・シュシュのすべて』にまで遡るけれど。私はSNSを取り挙げた映画の中でも、これが一番の出来!だと思う。群像劇で数組の人物を描くが、それらの人物が繋がっていく姿もとても自然で素晴らしい。描かれているのは、Facebook、デ-トクラブ、オンラインチャット、動画チャット、ネット詐欺。さらには、アカウントのなりすましを使ったいじめ。明らかにネット犯罪に抵触しているものもあれば、ふとした瞬間に闇の色が濃くなるものもある。コンピューターやスマホを前に時間を使う人間がここまで増えた現在だからこそ、この作品で起こたそれぞれの事件に深く共感してしまう部分があった。目の前の人間とのディスコミュニケーション、にも関わらずコミュニケーションを欲する人間の孤独さ。これらにしみじみと打たれた。
この先、ネタバレ****************
正直、とあるラスト近くのショットの繋ぎ合わせは、あまりに上手に重なり過ぎていて、う~ん、個人的にはちょっと好きじゃなかったけれど。もう少し上手く外すか、外しながらも繋いで行くか、をしてくれた方が良かったかな。
P.S…『マ−ダ−ボ−ル』のマ−ク・ズパンが通行人で登場してたw。番組プロデュ−サ−とエロチャットサイトの少年の出会いのシ−ン。
’12年、アメリカ
原題:Disconnect
監督:ヘンリー・アレックス・ルビン
製作:ウィリアム・ホーバーグ、ミッキー・リデル他
製作総指揮:マーク・フォースター、ブラッド・シンプソン
脚本:アンドリュー・スターン
撮影:ケン・セング
音楽:マックス・リヒター
キャスト:ジェイソン・ベイトマン(リッチ・ボイド)、ホープ・デイビス(リディア・ボイド)、フランク・グリロ(マイク・ディクソン)、ミカエル・ニクビスト(シューマッカー)、ポーラ・パットン(シンディ・ハル)、アンドレア・ライズボロー(ニーナ・ダナン)、アレクサンダー・スカルスガルド(デレック・ハル)、マックス・シエリオット(カイル)他
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コメント(7件)
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ディス/コネクト
観たいものがなく、ジリジリの先週今週、そして
やっと久々の映画館。いつものスガイ。
ラストの締め方は、おらが家族大事の
いつものアメリカさんではございましたが
そこへ集 …
「どうしてあんなに繋がりたい?」
映画は切り取りだからこれは極端例ですけれど
パチパチ火花は少なからず可能性として有り。
現役の人びとは大変だなぁ、しがらみだらけで。
やることやってしたいことしてたっぷり老いた
私みたいなリタイア組はラクチンざんす。^^
だいたいが携帯もスマホも持ってないし
今の暮らしに用なし。ブログと映画情報のために
私設図書館だと思ってるPCは活用してますがね。
映画の勘どころ押さえている監督さんのようで
なかなかいい感じの出来具合でしたよね。
あの男子も助かりそうだし、死者がいないのも
最近じゃ珍しくて悲惨なのに安心感のラスト。
もしかしてリメイクなんぞ韓国さん達に
作らせたら死者だらけになるね。(笑)
前作「マーダーボール」ぜひ観てみましょう。
vivajijiさんへ
こんばんは〜♪コメントありがとうございました。
携帯もスマホも用なし、やることたっぷりやってリタイア組。うーん、なんだかvivajijiさんが羨ましいです。竹を割ったような明快さ…。
本当、群像劇としても十分面白く、またそれぞれの話が繋がる様が良かったですよね。
「悲惨なのに安心のラスト」。まさに!
はい、『マーダーボール』是非とも見てみて下さいませ。こちらもなかなか素晴らしかったです!
映画:ディス/コネクト Dissconect 本来の人間関係を捨てた結果 「成立」するネット上の関係の果ては…
パターン的には、よくある感じ。
「バラバラな人たちが、徐々に個々の作用・反作用を通じ、結果的に収束していく」
だが最新形なのは、タイトルにあるように、その原因は「ネッ…
『ディス/コネクト』 (2012) / アメリカ
原題: Disconnect
監督: ヘンリー・アレックス・ルビン
出演: ジェイソン・ベイトマン 、ホープ・デイビス 、フランク・グリロ 、ミカエル・ニクビスト 、ポーラ・パットン …
観たよぉ。やっと書きました。見てから10日くらい経ってるけど頑張って書かないと忘れるーー
人の感情を利用したネットの闇って、自分でもわからなくなるくらいたぶん魅力的に映るんでしょうね。私はここまでの経験はないけど、それでも本人たちは結果がどうなるかまるで分らない訳だから。自分の目で見ることができるリアルワールドを充実させたいなと思いますよ。。
rose_chocolatさんへ
こんばんは〜♪コメントありがとうございました。
おー、見てくれたんですね。
なかなか面白かったですよね!
ネットの闇ではあるんですけど、そこは顔の見えない世界でありながらも、一人ひとり向き合うと実はそれぞれの事情を抱えているんですよね。いじめられっ子ベンを、なりすましのFacebookアカウントでいじめてしまったジェイソン(コリン・フォード)も、実は父親との確執があって、ベンとのやり取りのうち心のどこかで彼の気持ちに共鳴する部分がある、なんて描写もありました。
roseさんのおっしゃる「自分の目で見ることが出来るリアルワールドを充実させたいなと思います」というのは、本当に健全な考え方だと思います。
私は、PCを一週間起動しない、スマホもメールも何も見ないで過ごせと言われたら、たぶん出来ないですわ。