カニバルホラーのシズル感! 『肉』
皆さん、肉食ですかぁ~!?
いやあ、なかなか満足のカニバルホラーでありました!シズル感がたまらないね。丁寧に見せる物語の筆致も良くて本当に上手い。楽しいね!現代人の空虚な都会を背景にしているのではなく、緑が鬱蒼と茂り誰も人が来ないような田舎の小屋。人知れず行われる身の毛もよだつ禁断の行為…どこか昔話風でもあり、本当にありそうでゾクゾク~!
「何か途方もない行為がこの家の中で行われているらしい」と観客にまず想像させる。家の中の年若い娘たちの、どこか狂気に慣らされた会話が、密やかな怖さをフツフツと膨らませられる。ヒソヒソ話をする彼女たちが何について語っているのか。“普通の家だったら良かったのに”というような冒頭の台詞。少しづつ明らかになる一家の隠された事実。母親の突然死、近所の娘の失踪事件など、それぞれのエピソ-ドを少しづつ繋げていく。正装をして夕食の祈りを捧げる厳格な一家、静かなシ-ンであるのに明らかな狂気を感じさせる画作り。
人間が日常的に行っている“食べ物を食らう”という行為は本来、本能に根付いた恐ろしい行為だったのだ。そう感じさせるところが、この作品の成功の秘密であったと思う。ドン貧で皆で分け合う鍋の中身は、何日間かは同じものなのだろう。足りるべきものが全く足りていない一家の飢餓感。もちろん、残虐行為はこだわりたっぷりで、ホラー好きには必ずや満足感を与えてもらえるものであったし。いいねいいね。
タイトルの「We are what we are」というタイトルは、なんだか格式ばった古語調だけれど、実はこの家の人間達の狂った宗教観を表したもの。途中で長女が父親に向かって「What if, we are not what we think we are?」という疑問を投げかける台詞がある。タイトルはこれに呼応したものになっているのだ。字幕では確か、「もし私達が選ばれた者ではなかったら?」という台詞になっていたシーン。明らかに彼らは選ばれし者達であると信じこみ、あのような行為を神の名の下に行っていたのですね~。怖いですね~。(ちょっぴり淀長さん風)
また彼らは、村に洪水が起こったことと時を同じくして、母親を失っている。このため、明らかに一家は自分たちに疑念を抱いているんですね。またラスト間際では洪水時の水の氾濫のせいで、大量の人骨が流れ出すシ-ンもある。こうした、あくまで神の目を意識している描写などは、観客から見て納得しやすくとても上手。だからこそラストの20分が好対照を成していて、ゾゾゾと怖いクライマックスなんですね~。素晴らしい。
’13年、アメリカ
原題:We are what we are
監督:ジム・マイクル
原作:ホルヘ・ミッチェル・グラウ
脚本:ニック・ダミチ、ジム・マイクル
撮影:ライアン・サマル
音楽:フィリップ・モスマン、ダーレン・モリス他
キャスト:ビル・セイジ(フランク・パーカー)、アンビル・チルダーズ(アイリス・パーカー)、ジュリア・ガーナー(ローズ・パーカー)、ジャック・ゴア(ロリー・パーカー)、ケリー・マクギリス(ミセス・マージ)他
2014/05/29 | :ホラー・スプラッタ アメリカ映画
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コメント(2件)
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とらねこさん☆
うはー
これ気になってるのだけど、すごく早い段階で夜の回しかないのですよね?
昼間だったら観に行ったかも・・・
それにしても何故いまカニバルなのかな?
ブームきてるの??
ノルウェーまだ〜むさんへ
おはようございます〜♪コメントありがとうございました。
そうなのそうなの。レイトしか無いとなると、行きづらい人も出来てますよねえ。
これ変な映画で結構面白かったんですが、レイトしか無いのと武蔵野館でしかやってないせいか、見ている人ほとんど見ません…。なかなか良作のホラーなんですが…。あれ?ノルさんはホラーお好きでしたっけ??
そうそう、『カニバル』なんていうのも今あるんですよね。何故カニバルブームなんだろう。