『斬る』、『可愛い悪魔』@岸田森特集
斬る
岡本喜八をもっと見なければ、との決意を胸に(笑)、即駆けつけたこの作品。いやぁ〜最高じゃないですか!
黒澤明の『椿三十郎』を思わせるような内容で、アチラ側とコチラ側とを行き来する自由人。ただ『椿三十郎』と違うのは侍ではなく、侍という肩書を捨てた一介のヤクザ。あるいはアウトサイダーの視点から、あるいは侍達の中に入り込んでいって、侍社会とその制度を描く。画面はひとつひとつが目を見張るほど恰好良くて、本当に舌なめずりをせんばかりだった。単純にカメラの動きも構成も、痺れるほど上手い!見ているだけで全く飽きない。脚本も本当に素晴らしい!
何が素晴らしいって、それぞれの役者キャラクターとして立ちまくってること。どの役者さんもこれまでで一番ぐらいに輝いて見える。仲代達矢は、誰も真似が出来ないほど素晴らしい!怪しげでありながら人情深そうな、それで居て一つひとつの台詞がビシっと決まっていて。こんなに素晴らしい役者だったなんて知らなかった。高橋悦史もキュ−トだった。彼の役はコメディタッチで面白い。決めるところは決めながらも、オトボケで決して憎めない。彼ももとは侍ではなく農民の出であるから、源太の役とは合わせ鏡の存在だから重要だった。
岸田森はここでも重要な役で登場。語りの多い役ではないのに、十分に伝わってくる個性がまた光る!『ダイナマイトどんどん』でも役者達が他で見るより何倍も恰好良く見えたのだけれど、こちらでもまた同じ。侍の格好良さを無反省に描く作品でないばかりか、大きなテ−マとガッツリ取り組んでいて、その苦さもそのままに捉えようとしている。それなのに、娯楽としてカラッと明るくて、文句なくカッコ良い。このバランスに痺れまくった!
’68、東宝
監督:岡本喜八
脚本:岡本喜八、村尾昭
原案:山本周五郎
製作:田中友幸
撮影:西垣六郎
音楽:佐藤勝
キャスト:仲代達矢(源太-兵頭弥源太)、高橋悦史(田畑半次郎-半次)、中村敦夫(笈川哲太郎)、久保明(竹井紋之助)、久野征四郎(正高大次郎)、中丸忠雄(庄田孫兵衛)、橋本功(藤井功之助)、浜田晃(西村伝蔵)、地井武男(吉田弥平次)、土屋嘉男(松尾新六)、星由里子(千乃)、岸田森(荒尾十郎太)、東野英治郎(森内兵庫)他
可愛い悪魔
こちらなんと、火曜サスペンス劇場!大林宣彦監督の2時間のTVドラマ。内容は奇天烈ホラー!いちいちCMが入る時に、「ババババッ、ババババッ、バ−バ−」というお決まりの音楽が流れる。これにまず脱力するのだけれど、いやいや内容も負けてない。’82年に放映されたものなのだけれど、TVだから適当に作っているのか、その時代のTVドラマはこの程度だったのか分からないけれど、ギャグともシリアスとも判断のつかない不思議なシ−ン満載で、大爆笑だ。
岸田新はほんの2分ぐらい、1、2シ−ンしか出演しないのに、明らかに可笑しい役。でも変テコぶりということで言うなら、後から登場のみなみらんぼうも負けず劣らずだ。あと、シ−ンが足りなかったのか、ラスト間際でまぶたの上に目を書いてたけど、あれは何のため?どうしても後から1シーン足したかったんでしょうか。いやいや、もうそれどころじゃないんです。いろいろツッコミありすぎて…私にはとても追い切れない。そうそう、上の階からのショットが何度も映るな〜と思ったら、花瓶をそんな使い方するんだ!と驚く。
大林映画見るの辛いわ〜。本当は今爆音映画祭でやってる『ハウス』も見たかったけど、大林宣彦監督に付き合うのは、『野のなななのか』だけにしとこう。と考え直した私が居ました。大林宣彦に付き合うのは、一年に二度でもう十分ですよ!
’82年、NTV
監督:大林宣彦
脚本:那須真知子
製作:山口剛、宍倉徳子
出演:秋吉久美子、渡辺裕之、ティナ・ジャクソン、赤座美代子、佐藤允、岸田森、みなみらんぼう、小林亜星(特別出演)他
2014/05/20 | :文芸・歴史・時代物, :映画特集 日本映画
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こんちは。
『斬る』面白いよねー。『椿三十郎』と似てるのはどっちも原作が山本周五郎だからでしょうね。
『可愛い悪魔』で一番、違和感を感じたのは渡辺裕之のポロシャツにネクタイ。いや、流石にそんなんはいなかったんじゃない?
ちなみに『ハウス』にも小林亜星が特別出演で出てます。
『斬る』『可愛い悪魔』をシネマヴェーラ渋谷で観て、岡本流石やなふじき★★★★,★★
特集上映「岸田森特集」の1プログラム。
◆『斬る』
五つ星評価で【★★★★主役じゃないけど岸田森は美味しい役】
多分、名画座で観てて2回目。
岡本喜八はおもろいねえ …
ふじき78さんへ
こんばんは〜♪コメントありがとうございました。
ね〜、『斬る』面白かったですね!そうそう、原作が同じだから似たような話なんだ〜と、私も思いました。
ポロシャツににネクタイ、ククク…確かに珍しい取り合わせでしたよね。
でも、そんなこツッコミ、この映画の中では超どうでもいいことなんじゃないかと…