『黒薔薇昇天』、『ダイナマイトどんどん』@岸田森特集
岸田森特集に初参戦〜。今回のこの2本は本当に中身の濃い、素晴らしき2本立てでした。大満足コ−ス!なんだか、“妄執・異形”特集に似通った雰囲気を持つチョイスと言えるかも?
黒薔薇昇天
これは大傑作!気迫に満ちた画力で、力技で面白く見せてしまう熱量が凄い。最初から最後までこのテンションに持って行かれてしまう、映像の圧倒的な力!何故か気持ちイイ!岸田森は誰にも真似出来ないような変テコリンな人物像を、情熱的演技で体当たり。そのくせユ−モアに満ちていて、思わず笑いたくなってしまう。ピンク映画の主演女優が映画から降板を願い出たため、あらゆる動物の声を集めて来て、回転数を変えて人間の喘ぎ声に似せるように作るとか。「何だこりゃ!スゲエ面白い!これは面白い!」ゲラゲラ笑いながら、しかし画作りの面白さについつい目が釘付けになってしまう。
谷ナオミは、和装が良く似あって、上品なセクシーさがプンプン。焦らすような、人が良いような、なんとも言えないセクシーさが滲み出ていてもう最高。ああ〜観覧車に乗りたくてたまらなくなっちゃった。
去年見て大好きになった、曽根中正の『天使のはらわた 赤い教室』に少し似ている部分があると言えるかも。一人のブル−フィルムを作る“エロ屋さん”が、情熱的にその対象を追う辺りとか。しかも2つとも大傑作で、熱量のある映画作りが印象的な作品なのでした。う〜ん、この頃の時代の日本映画って、本当にすごい。
’75年、日活
監督・脚本:神代辰巳
原作:藤本義一
製作:三浦朗
撮影:姫田真佐久
キャスト:岸田森(十三)、谷ナオミ(幾代)、芹明香(メイ子)、谷本一(一)、高橋明(安さん)、庄司三郎(石やん)、山谷初男(歯医者)
ダイナマイトどんどん
これまた面白かった〜!岡本喜八、最高じゃないかッッッ!
これまで岡本喜八監督の作品は、劇場で見た『助太刀屋助六』が最初で最後。初めて見たけれど、とにかくテンポが良くて面白くて、こんなに威勢のいい邦画があるなんて!と圧倒されたのを覚えている。それから、今後も見たいなあと思いつつ訃報が来てしまった。その後、見る機会があまり無く今まで来た。久しぶりに見た岡本喜八は、これで2本目。いやあ、なんて面白いんだろう!『助太刀屋助六』は時代劇だったので、現代劇(?笑)を見たのは初めてだった。
力いっぱいの爆笑コメディ映画。“ヤクザの野球コメディ映画”。思わず「はぁ〜!?」って聞き返したくなるような映画だけれど、これが岡本喜八風にやるとなると、全くもって真面目に面白い娯楽映画になっちゃうんだから凄い。日本映画って、やはりこういう変テコな映画ほど面白いんだなあ!ヤクザコメディというと三池崇史の『極道恐怖大劇場 牛頭』やら『土竜の唄』を思い出すけれど、三池さんはこうした邦画の流れの正当継承者なのかも!?
ヤクザが抗争の真っ只中に、突然野球で勝負することを決める。“ヤクザが本気の草野球”?!全く意味が分からないのだけれど、映画は真剣そのもの。菅原文太は、どのシ−ンを見ても狂犬みたいで男臭くて、目つきからしてイッちゃってる。いかにも小倉の九州男児そのもの。最高!北大路欣也は、物言わなくても危なげな雰囲気はビシバシ漂ってるし、男前ですごい。眼光鋭くて、悪役なのかそうでないのかすら良く分からない。そんな中、岸田森は可笑しなピンク色のス−ツで、特に特殊メイクなど無くても、彼らしく異彩を放ちまくりなのでした。劇場内では何度も笑いが起こって、すごくいい雰囲気だった!日本映画、本当に凄いぞ!
’78年、東映
監督:岡本喜八
脚本:井手雅人、古田求
製作総指揮:徳間康快、企画:佐藤正大、製作:俊藤浩滋他
撮影:村井博
キャスト:菅原文太(遠賀川の加助)、宮下順子(お仙)、北大路欣也(橘銀次)、嵐寛寿郎(岡谷源蔵)、金子信雄(橋本伝次郎)、岸田森(花巻修)、中谷一郎(香取祐一)、フランキー堺(五味徳右衛門)、小島秀哉(留吉)、石橋正次(吹原
)、丹古母鬼馬二(鬼熊)他
2014/05/13 | :ピンク・ロマンポルノ, :映画特集 日本映画
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コメント(5件)
前の記事: 『家族の灯り』 心のブラックボックスに出来る影
おー、おー!見てくれましたか。
そーでしょそーでしょ。
だからロマンポルノと岡本喜八は見とかなくっちゃいけないんです。
ガキの当時は谷ナオミの良さとか、ぜんぜん解りませんでしたけどね。蟹江敬三特集の「熟れた壷」もメチャ良かったですよ。和装の所作が・・・
「黒薔薇昇天」はラピュタの岸田森特集で観たけど、6年経ってるからローラースケート再鑑賞したいと思ったんですけど、やはりそこまで手が回りませんでした。
本特集、私は「斬る」を観ました。黒澤の事は良く知りませんが、邦画は岡本喜八かな思います。戦争描いてもヤクザ描いても時代劇やってもジャズやっても娯楽に徹して、しかめっ面勢を嘲笑うかのような痛快感が良いです。
「斬る」・・・これもお薦めです。レビューは書くタイミングを逃すとずっと後になる。そろそろお蔵入り発生しそう・・・
imaponさんへ
こんばんは〜♪コメントありがとうございました。
お〜!いまぽんさんは岡本喜八お好きでしたか!
ですよね〜。めっちゃ面白〜い!今後もっと岡本喜八は追いかけようと思います。
私も『斬る』見ました!ですよね、黒澤とついつい比べたくなっちゃう。んでもって、私もまさに「黒澤より断然岡本喜八の方が面白いじゃん」と思いながら見てしまったのでした。気が合うなあ〜。
「しかめっ面勢を嘲笑うかのような痛快感」て良いな良いな♪
蟹江敬三特集、行かれましたか。後2日しかないから、今回は暇が無いかも〜。
黒薔薇昇天、良いですよね〜♪
あそうそう、ぽんさんの『河口』のところに書いたコメントが反映されてないの…何故でしょう…。
また、遊びに行きま〜す。
こんちは。
せっかくだから「斬る」の話。
いやあ、面白かった。黒沢の「椿三十郎」と似てるんだけど、断然こっちの仲代の方がカッコイイ腰抜けぶりでええわあ。
「黒薔薇昇天」の岸田森もバイタリティあってよかったですね。そうか、「ダイナマイトどんどん」もバイタリティーの塊みたいな映画だ。最近の邦画でないんはバイタリティーだな。
『ダイナマイトどんどん』『黒薔薇昇天』をシネマヴェーラ渋谷で観て、文太も森も最高★★★★,★★★
特集上映「岸田森特集」の1プログラム。
◆『ダイナマイトどんどん』
五つ星評価で【★★★★文太かっけー】
昔、TVで観て、名画座で観て、多分3回目くらい。
中年越し …
ふじき78さんへ
こんばんは〜♪コメントありがとうございました。
ふじきさん、どちらかは必ず今までも見ていたりするのね。偉いなあ〜さすがだなあ。
それに、こんなに見てるのにサクサクこまめに更新していますね。
私は更新がどんどん遅くなっちゃって…。もうヘトヘトです〜
>最近の邦画でないんはバイタリティーだな。
そうなんですよ。最近の邦画本当にどうしてこうつまんないんでしょうね。昔の邦画は私あまり詳しくないのですが、今後もっとたくさん見るようにしま−す!