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『ミエーレ』、『サルヴォ』@イタリア映画祭

ミエーレ

miele-poster女優であるヴァレリア・ゴリアーノがメガホンを採った、初監督作。
そう言えばマルコ・ベロッキオの『眠れる美女』でも、尊厳死が扱われていた。眠れる美女は、17年間植物人間となっていた女性エリアーナの尊厳死について、2009年にイタリア全土で実際に人々の間で大きな議題となった事件だったと、ティーチインの時に聞いた。日本では『ブラックジャック』のドクターキリコの話で、特に今新しい問題というわけではないように思えたけれど、イタリアではまだまだホットな話題なのかもしれない。

主人公ミエーレは、人々に尊厳死を与える、裏稼業の死の天使。けれど彼女には自分なりの倫理コードがあって、死を待つしかない身の重篤な病人の苦しみを助ける仕事であると信じてやっている。しかし、ある日に遭遇した患者グリマルディは、ただ自殺をしたいだけの普通の健康体の老人だった。彼に出会ったことで揺れるミエーレ。彼との会話で揺るがされる。

こうした社会問題を扱いながら、見ている者に哲学的思考を促す自然な手腕が見事。主人公のジャスミン・トリンカの表情や佇まいも見どころ。ラスト、イスタンブールのブルーモスクで彼のイラストが風に舞い、微笑むミエーレ。尊厳死の是か非かを観客に訴えず考えさせるラスト。

’13年、イタリア、フランス
原題:Miele
監督:ヴァレリア・ゴリ−ノ
脚本:マウロ・コヴァチッチ、ヴァレリア・ゴリ−ノ他
撮影:ポハールノク・ゲルゲイ
出演:ジャスミン・トリンカ(イレ−ネ/ミエ−レ)、カルロ・チェッキ(グリマルディ)、リベロ・デ・リエンゾ(ロッコ)他

salvo_cannes

サルヴォ

Salvo
ア−トテイストなイタリアン・ノワ−ル。冷酷無比なマフィアの殺し屋・サルヴォが、目の見えない女性・リタに出会い、彼女を監禁しながらもやがて愛情を覚えていく。カンヌ批評家週間のグランプリ受賞作品。
台詞は極端に少なく、さらに光をギリギリまで抑えた暗めの映像が印象的。リタが光を嫌がり、暗闇の中で生きてきたことから、自然光を遮断するシ−ンもある。サルヴォが何故彼女を助けたかの説明は無いが、サルヴォ自身の生き方も、盲目の少女リタと同様に暗闇の世界で生きてきた。そのため彼女に同情を覚えたのかもしれない。リタ役のサラ・セライオッコの盲目の演技が迫真に迫っている冒頭が特にすごい。リタは途中、光に当たることで、ある程度視力が回復したような描写になっている。光も空気も遮断したかのような暗闇から、ラストの風の吹き抜ける窓辺の時間経過が美しい。昼に手をつなぎ、夕闇が来て、夜にサルヴォの手をそっと離す。100人以上殺したはずのサルヴォの罪深い魂にも、永遠の眠りにつくことが出来たか。

エンドロールの一番最後に、ジャンヌ・モローへ感謝の意が捧げられている。イタリア映画祭では、今回が初監督だという、ファビオ・グラッサドニアとアントニオ・ピアッツァの二人が登板していた。説明によると、ジャンヌ・モローは、普段から脚本家を養成したり、精力的に活動している壮年の女優さんだが、この作品に非常に肩入れしてくれたらしい。プロデュ−サ−を紹介してくれ、「この二人を助けなかったら、殺すわよ」などと煙草をプカプカ吸いながら言ったとか。面白いエピソ−ド。

’13年、イタリア、フランス
原題:Salvo
監督・脚本:ファビオ・グラッサドニア、アントニオ・ピアッツァ
撮影:ダニエレ・チブリ
出演:サ−レフ・バクリ(サルヴォ)、ルイジ・ロカ−ショ(エンゾ)、サラ・セライオッコ(リタ)他

 

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