愛さずにはいられない一作! 『チョコレートドーナツ』
アラン・カミングが、なんて魅力的なんだろう!彼とこの映画にあっという間に恋に落ちた。クルクル魅力的に表情を変える、愛情豊かな瞳。見ていて飽きない。
一人のゲイが運命の恋人に出会う場面と、彼の心の隙間を埋める少年との出会いを描いた作品。運命の恋人、と言ったけれど、むしろ未熟な恋人であるポール(ギャレット・ディラハント)の姿を通して、ルディ(アラン・カミング)の暖かさ、何事も恐れない勇敢さを、頼もしく思ってくる。ルディの歌は、技術がとても素晴らしいというよりは、味のある歌。物語のあちこちで聴けるので、それも映画を見る上でとても楽しみ。アラン・カミングのゲイ演技はとても上手で、怒りで声を荒げるシーンですら、男らしい荒々しさを一切感じさせない。何て自然なんだろう…と思いきや、後で調べてみたら、自身が男性と結婚しているバイセクシャルだとか。そ、そりゃ年季が入っている訳よね…。
これって事実を元にした映画だったのね。マルコ(アイザック・レイバ)を子供として引き取り、彼を育てる決意をするルディとポールは、とても優しいひとだなあと思う一方、何故彼が必要だったのか、特に強い理由が描かれていないように思った。でも、とても悲しいラストを含めて、事実の重みがのしかかってくる。マルコを引き取る裁判の中で、誰の利益であるかを問うポールの力強い反論が、結果に響かなかった事が、ただただ悔やまれる。
ツッコミどころはあるのだけれど、事実ベ−スですからね〜。何故か暖かさが染み渡って、心の奥にそっと残るような作品でした。
’12年、アメリカ
原題:Any Day Now
監督:トラビス・ファイン
製作:トラビス・ファイン、クリスティン・ホステッター・ミラー他
脚本:トラビス・ファイン、ジョージ・アーサー・ブルーム
撮影:レイチェル・モリソン
キャスト:アラン・カミング(ルディ)、ギャレット・ディラハント(ポール)、アイザック・レイバ(マルコ)、フランシス・フィッシャー、グレッグ・ヘンリー、クリス・マルケイ他
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とらねこさん☆
確かにそうですねー
短く仕上げた分、説明不足であっさりもしているのだけど、それが余計にラストの衝撃をいつまでもひっぱる形に心の奥に残っていくような気がします。
ノルウェーまだ〜むさんへ
こちらにもありがとうございます♪
本当、いらない部分が全然ない映画でしたよね!
あ、ところでノルさんどの辺に座っていらっしゃいました?
もしかして、ずっと泣いてて本当にノルさんに迷惑かけたのって私なのかなあ…
私は鼻もすすりませんけど^^;
ちなみに私は前から3列目の端から3番目ぐらいでした。
ノルさんのお顔は存じ上げてるはずなんですけど、最近あまりお会いしていないから、分からなかったのかなあ〜
>後で調べてみたら、自身が男性と結婚しているバイセクシャルだとか。
哀生龍はそんな部分も知っていたのですが、知っていて見るのと知らないで見るのとでは、色々な点で受ける印象がかなり違うのかもしれませんね。
>ツッコミどころはあるのだけれど、事実ベ−スですからね〜
そうそう、そうなんですよね。
全くのフィクションだったら、作品の印象も感想も違ったものになったと思います。
哀生龍さんへ
こんばんは〜♪コメントありがとうございました。
>知っていて見るのと知らないで見るのとでは、色々な点で受ける印象がかなり違うのかもしれませんね。
そうなんです!「なんて演技力のある人なんだろう〜、まるで本物のようだ!」と思いながら見ていました^^;
哀生龍さんがご自身の偽善と向き合ったという見方、何となく分かる気はします。深いところまで映画に真正面に向き合うからこその、ファンであるからこその向き合い方という気がしますね。
私は個人的に単に映画の完成度という点からしても、とてもいい作品だったんですが、ある種性急な終わり方になってしまっているところが残念でした。
そうした終わり方が余計、フィクションを楽しむファンの方に、現実を忘れさせることの出来ない何らかの圧力を与えたような気がします。
何にせよ、今回このようにブログを読んでお話させていただくことで、哀生龍さんのスタンスというものを感じる事が出来ました。
私としては、とてもおもしろかったです。
こういう反応こそ、話をさせていただいて面白い部分です。
『チョコレートドーナツ』 (2012) / アメリカ
原題: Any Day Now
監督: トラビス・ファイン
出演: アラン・カミング 、ギャレット・ディラハント 、アイザック・レイバ
鑑賞劇場: シネマジャック&ベティ
公式サイトはこ…
やっと書いた。観たの1か月以上前なんですがw
こないだスバーロでぐだぐだ話したことと大体一緒なんだけどね。
でもやっぱりこの映画を「泣ける」で片づけてはいけないと思うんですよ。。
rose_chocolatさんへ
こんばんは〜♪コメントありがとうございました。
泣いたとか、泣かなかったとか、私はどうだっていいです。
「泣けるで片付けてはいけない」というroseさんの趣旨が、どういう意味なのか分かりかねました。
映画の中で共感を求めるのが間違っているということでしょうか
それとも、何とかするために現実を変えていかないといけない?
「泣いた」で終わりにしてはいけない、人々の意識を変えていかないといけない、
そういう気持ちにさせたのであれば、十分映画がやるべきことをやった、と言えるのではないかと思いましたよ。