『地下水道』『ドイツ零年』@ナチス映画特集
地下水道
いつか見ておかなければ…と思っているうちに『ソハの地下水道』を先に見てしまった。1944年のドイツ軍侵攻により、退路を立たれたポーランド市街。ランニングタイムの7割以上、ずっと地下水道の中を、出口も分からず彷徨っている。光も無く、悪臭が立ち込められ、早くここから出たいという思いで行き詰まるほど。これほど閉塞的で絶望的な環境でもって、戦争の抑圧を見事に表現した作品は無いかもしれない。「光が見えた」と希望を抱きようやく辿り着いたそこが閉鎖されていた。この虚無感たるや。すっかり脱力して、ただ見ているだけなのにとてつもない疲弊感に襲われた。『世代』とこの作品、『灰とダイアモンド』の3作が抵抗三部作。
’56年、ポーランド
原題:Canal
監督:アンジェイ・ワイダ
原作・脚色:イェジー・ステファン・スタウィニュスキー
撮影:イェジー・リップマン
音楽:ヤン・クレンズ
キャスト:テレサ・イゼウスカ(デイジー)、タデウシュ・ヤンチャル(コラフ)、ヴィンチェスワフ・グリンスキー(Zadra Tadeusz Gwiazdowski/The Wise One)、スタニスラウ・ミクルスキー(Slim)、エミール・カレウィッチ(The Composer)、Wladyslaw SheybalKula、Teresa Berezowska
ドイツ零年
戦争に行った者を描くばかりが戦争映画ではないなと実感させられる二作だった。見てズド−ンと落ち込む一作。残された者にもまた戦争の歪みが生じる。貧しき者はより貧しく、奪う者は容赦なく奪う。
ある貧しい一家が、雑居アパートの一室を借りて住んでいる。父親は病床で動けず死を待つだけの人生。長男はナチス党員の生き残りだが、警察の目を逃れているために、配給を受けることが出来ず、単なる穀潰しになっている。長女は毎夜出掛け、売春的な行為をしている。エドモンドは子供で何も出来ない。だが一家を助けるために、自分も何かしたいと考える。
少年エドモンドを助けると言いつつ、彼や他の少年少女を都合良く利用しようとする“恩師”の存在には、心底ゾッとさせられた。エドモンドに盗みを教え、ヒトラーの演説のレコードとスピーカーを金持ちに売らせる。さらに、少年好きの大人に彼を売ろうとさえする。父親を助けたいと言うエドモンドに弱肉強食を説き、エドモンドは父親に毒を盛って殺してしまう。エドモンドは飛び降り自殺をする。何とも後味の悪いラスト。残酷な世界に容易く染まり、弱い者から奪う人間。人間性を少しづつ失っていくということで、少しづつ人間らしさを失っていく人も居る。ふぅ…疲れた。
’48年、イタリア
原題:Germania Anno Zero
監督・脚本・製作:ロベルト・ロッセリーニ
撮影:ロバート・ジュリアード
音楽:レンツォ・ロッセリーニ
キャスト:エドムンド・メシュケ(エドモンド)、エルンスト・ピットシャウ(父)、インゲトラウト・ヒンツ(エヴァ)、フランツ・クリューゲル(カール・ハインツ)、エーリッヒ・ギュネ(先生)
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とらねこさん☆
これはハードそうですねぇ。
基本、こういう作品好きですが、やはりどっと疲れそう。
でも今度機会があったらチャレンジしてみますっ☆
「地下水道」ポーランド映画祭で見逃してしまったのでヴェーラにかかる事を知ってそそくさと観に行ったんですが前半部で眠ってしまったよ。その上、鑑賞から日数が経ち記憶も薄れつつある。記事にするのがとても億劫な今日この頃・・・
ボチボチ行きましょ。あ、まだ「河口」も上げて無ぇや!
ノルウェーまだ〜むさんへ
こんにちは〜♪コメントありがとうございました。
見ておくべきリストに入ってたものを消化した気分です…。
あ、でも「ドイツ零年」なんかはすごいですよ。クレール・ドゥニ、ベルナルド・ベルトルッチ、ミヒャエル・ハネケ、ジャック・リヴェットがオールタイムベスト10に選んでる作品です。
ただ二つとも、DVDでは見れません。
imaponさんへ
こんばんは〜♪コメントありがとうございました。
あ〜『地下水道』、書くのが面倒な気持ち分かります…
私もこれ、正直書くの面倒でしたもん。
あ、ちなみに私は少しでも寝てしまった時は書かないことにしてます^^
『河口』は結構書きやすかったけど!?
[…] とらねこ @rezavoircats 『地下水道』『ドイツ零年』@ナチス映画特集 http://www.rezavoircats.com/2014/04/15933 […]